13着目 ガンマンの衣装の力! そして新たな出会い……?
「観念して、さっさと有り金と金目のもんを寄こせ」
オレ達が向かっているバウシュフェルトは、一日がかりで旅をするとはいえリリエンシュタットに近い町だ。しかもそれなりに栄えている。
そのため、リリエンタール大公軍がよく見回りを行っており、比較的治安がいい街道であると聞いていた。
なのに盗賊団が出るとか……。でもまあ、奴らは十人程度の小規模な盗賊団っぽいし、上手いこと官憲の目から逃れていたんだろう。
「レオナ、どうするの?」
「どうもこうも、戦うしかないだろ。それがオレ達の仕事なんだし」
「それは同感」
そしてオレ達は幌馬車を降り、盗賊団と対峙した。
「あんたら、盗賊か? 一応警告するけど、さっさと道を開けることをおすすめする」
「なんだぁ、このガキ? 見たところ、デビューしたての冒険者ってとこか。そっちこそ、ケガしたくなかったら金と荷物をおとなしく――いや、お前達も俺達と来い。ガキには興味ねぇが、そういうのが好みな金持ちに高く売れるからな」
「そうか。そっちの意思は理解した」
――パァン。
刹那、乾いた音が鳴り響くと、盗賊団の頭の脳天に風穴が開いた。
「お、お頭あああぁぁぁ!?」
「頭部を一撃……即死だと!?」
「あのガキ、何しやがった!? まさか、銃か!?」
なぜこうなったかというと、今のオレの格好を説明する必要がある。
革のジャケットとブーツ、デニムのショートパンツ、頭にはウエスタンハット、両腰にはピストルホルダー。つまり、西部のガンマンみたいな格好になっている。
これは『ガンマンの衣装』。二丁のリボルバーとショットガンを使える、遠距離攻撃スタイルの衣装だ。価格は280枚。
この衣装を買った理由は、『護衛、用心棒と言えばこれ』という安直なイメージがあったからだ。
それを聞いたエルマからは『そんなノリで決めて大丈夫なの?』と言われてしまったが、案外戦いやすい。
盗賊団の頭領が死んだ理由は単純で、オレが早抜きでリボルバーを手に取り発砲したからだ。
「エルマ、右を頼む。オレは左を!」
「わかった!」
混乱している盗賊団に向け、さらに畳みかける。
オレはリボルバーを両手に持ち、乱射した。
ちなみに、その射程は明らかに拳銃の射程より長い。もちろん、これはインナーの効果だ。
インナーカタログに『チェック』というカテゴリーがある。その名の通りチェック柄のインナーがこのカテゴリーに属しており、価格は1枚当たりドレスメダル十枚。
今回は『チェック・ブラウン・パンツ』を購入した。ブラウンのチェック柄のパンツだ。
このパンツには『射程距離延長』の効果を付与しておいた。銃の他に弓、魔法といった遠距離攻撃の射程を伸ばす効果がある。
この効果により、多少遠くとも有効的な一撃を与えることが出来る。
「お前さえ……お前さえ殺せば!!」
盗賊がバタバタと倒れる中、一人の盗賊が短剣を持ちオレに向かって走ってきた。
しかも素早い。オレのリボルバーが当たらない。
どうやら、素早さが高いジョブの持ち主のようだ。
「死ねえええぇぇぇ!!」
「お前がな」
オレは冷静にショットガンを呼び出し、発砲した。
ショットガンは、射程が短い代わりに弾が広く飛び散る銃だ。日本語で『散弾』とも呼ばれる所以でもある。
近づきすぎたせいもあり、敵は避けることも出来ず銃弾をもろに何発も喰らってしまい、絶命した。
ところで、オレが散弾を呼び出したのは敵が攻撃に移る正にその時で、普通であればまず間に合わず敵の攻撃を受けていた所だ。
なのになぜオレの方が早く発砲出来たかというと、ブラに付けた効果による物だ。
今着ているチェック・ブラウン・ブラには『早撃ち』の能力を付与している。弓や魔法といった遠距離攻撃の出を早くする効果がある。
もちろん銃にも効果があり、この効果によって敵よりも遅く反応したのにも関わらず敵より早く撃てた秘密だ。
「さて、エルマの方は……?」
見ると、エルマは最後の一人を倒す所だった。
驚くべき事に、エルマが投げたブーメランは蛇行しながら敵を惑わせ、急所にぶつかるというあり得ない動きをしていた。
そんなあり得ないブーメランの動きにさせるも、ブーメランガーのジョブの能力なのだろうか。
「お見事です、二人とも。短時間で盗賊団を倒すとは」
「そんなこと言って、オレ達なら余裕で倒せるのを知ってたでしょ? 心配だったら、オレ達が馬車から飛び出すときに止めるはずだし」
レングナー商会の特性上、冒険者の力量について熟知していないはずがない。しかもレングナーさん自身も人を見る目があるはずだ。特に冒険者とよく仕事をしているから、相手が冒険者であれば特にだ。
「それより、レオナさんのファッションも興味深いですが銃もすごいですね。連発できるなんて」
「参考にしたいんですか? 開発するにしても数十年単位の時間が必要だと思いますが」
この世界の銃と言えば、先込式のフリントロック銃のことだ。連発なんて出来ないし、命中精度もまだまだだ。
そんな状況で撃鉄とか薬莢とかリボルバーの機構を開発しようとすると、越えなければならないハードルは多すぎる。
銃や兵器への知識が乏しいオレですらそうぼんやりと思うのだから、実際にやろうとすればオレの想像の何十倍も苦労することだろう。
「確かに、開発するのならばどっしりと腰を据えてやらなければなりませんね。そしてエルマさん。その武器は魔法の武器ですか!? 投げると手元に帰ってくる鉄の棒が存在するなんて!?」
「え……えっと……魔法の武器ではなく全て力学的な法則に則っていて……」
エルマのブーメランは、以前魔物の生息域での不審な男との戦闘で焦がされてしまったので、鉄製のブーメランを鍛冶工房に作ってもらって利用している。
重量としては重く扱いにくくなっているはずだが、エルマは完璧に使いこなし、それどころかどんどん腕前が成長している。
さて、困っているエルマも可愛いとは思うが、これ以上はかわいそうなので助けてあげよう。
「レングナーさん。盛り上がっているところ申し訳ありませんが、早いところ出発しませんか? こう死体が散乱している状態では、危険な野生動物が寄ってくる可能性もありますし」
「そうだね。では、すぐに出発するとしようか」
盗賊団との戦闘が終わってから数時間後、オレ達は目的地のバウシュフェルトに到着した。
リリエンシュタットよりも小規模な城門で、生き残っていた盗賊団の連中を引き渡すと同時に町に入る手続きをした。
さて、町に入ろうかと思ったとき、エルマが何かに気付いた。
「レオナ、あれ……」
エルマの指の先には、オレと同じくらいの女の子が倒れていた。




