アニメ産業の競争に見る、危機に対しての向き合い方の考察
『日本のアニメが「中国で負ける日」が来る。「天才に頼らない」戦略が、圧倒的な差を覆そうとしている』
https://news.yahoo.co.jp/articles/0b4981a9ba94e6f1d871f98dcb1bc3319475d54b より
こんな見出しでハフポストが記事を出し、一部ショックを受けている人たちがいるみたいですが、これって当たり前のことではないでしょうか。
べつに日本を貶めるとかではないですよ。あらゆる産業は発展したところから発展途上の地域に進出し、そこで技術の下地が作られて、途上地域が発展します。
まずはアニメから離れて、工業の発展から見ていきます。
現在発展途上にある国々は欧米や日本などから資本を受け入れ、そこで少しずつ技術を学び、下地を作って自国の工業化を進展させています。中国やブラジル、ASEAN諸国はいい例ですね。
昭和の日本もそうです。戦後、高度経済成長を遂げましたが、メイド・イン・ジャパンは朝鮮戦争の頃は粗悪品の代名詞でした。技術の日本、なんて本当にごく最近のものです。
まあ日本はそこまで外国の資本が入って工業化に成功したとかじゃないんですが。アメリカの方針が幸運でしたね。
では先進国はなぜ海外に進出するか。小学生でもわかります。安い土地と労働力を求めてですね。中国やブラジルはそれに加えて資源も豊富なのが大当たり。
資本主義社会なら当たり前のことですよね。企業は自己利益の最大化を第一に考えます。国内の産業の空洞化なんて知ったことじゃありません。
そうやって、発展途上地域が発達するのは誰の目にも明らかでしょう。
話をアニメに戻します。一緒ではないでしょうか。日本のアニメ、漫画はアジアでは間違いなく覇権を取っていました。
サブカルチャーに向ける余裕なんて、独裁政権が乱立していて工業化には程遠かったアジアにはありませんでしたから。こういった国では表現も厳しく規制されますからね。また、心が荒めば大衆受けする娯楽を生み出すのも難しいでしょう。
そんな中、日本からアニメや特撮が流入してくれば、新しい娯楽に魅了されるのは無理もないことです。それらを見て育った世代が、ある程度自由化が進んだ社会で日本のアニメの下請けをやり、次第に独自の作品を作り上げていく。
何もおかしくないですよね。実に自然で健全なことですよ。これがおかしいと思うのなら、それは資本主義の否定か、歪んだナショナリズムか、産業の発達を知らない無知です。
百歩譲って、日本がいつまでもアニメで覇権を握り続ける必要があるとしましょう。そのために何が求められるかについて考察します。
まず国内のクリエイターの充実ですね。しかしアニメ産業は市場が狭く、投入される資本はたかがしれています。薄給でアニメーターを雇うしかありませんが、日本ではとてもじゃないですが生活なんてできません。
この矛盾をどうにかできなければ(低賃金でも暮らしていけるってするのは無理なのでつまりは資本の投入を増やす)、クリエイターは海外の人材に依存するしかないでしょう。
Netflixなんかは徹底的に資本を投入してますよね。韓流ドラマや日本のアニメにもどんどん金を入れて、独占配信という形で回収してます。日本の企業でそれができるとしたら、現状はヒットが約束された『鬼滅の刃』くらいですかね。
次に、日本以外のアジア発の原作つきアニメなら、原作の権利を買い叩いて日本でアニメ化します。そうすれば原作以外で現地の入る余地はなく、現地のアニメ産業は発達しません。
……この二例だけでももう無理ですね。現実的じゃないですし、そんなことをしても誰のためにもなりませんよ。独占は、長期的に市場の停滞を招き、産業そのものが衰退します。
悲観的になるより、アジアのアニメが独自の発展を遂げるのはいいことだと受け入れた方がいいです。今中国でアニメを作っているのは日本のアニメに影響された、感性豊かな若者です。
それを誇らしいと思うと共に、よきライバルが増えたと思って、負けないように努力していく。悲観的になる人はこの気概がないから負けていくのではないでしょうか。
なんだったらアジアで連合を組んで欧米のサブカルチャー市場を荒らす野望を持ったっていいです。その盟主に立てる地位にまだ日本はいますから。
色々と書きましたが、危機意識を持つことは否定しません。自分より下に見ていた存在が急に成長していくのに恐怖を覚えるのは人として当然です。
かつては日本も欧米からそう思われていたことでしょう。
とくにヨーロッパは、二度の大戦で疲弊し、覇権をアメリカに奪われました。今はその反省からEUで纏まって動き、次世代の覇権をどうやって握るか、画策してます。その点でアジア・アフリカ地域の発展には危機感を持っています。
アメリカも同様ですね。覇権を手放すまいと必死です。
アメリカの知識人層に浸透している反中国は民主主義を守るためというよりは、自分たちの地位を守るためです。
また、最近投資家たちの間でブームになっている環境保護は、アジア・アフリカ地域の急速な発展に対する対抗です。環境保護を大義名分に電気自動車の普及と開発に勤しんでトヨタとかから市場を奪おうというわけです。
だからまだまだ実用レベルじゃないテスラに異様な期待がされていますよね。
実際にはエコじゃないことまで、環境保護の名の下にオレ流を押しつけて途上国の足を引っ張る。この側面はかなり強いです。崇高な理念は飾り(べつに環境保護を否定はしてませんよ! 一部汚えなって思うのがあるだけで、きちんと向き合うべき問題です)。
実に変なことやってますねー。べつに発展する側はそんな侵略的意図はないのに。寝ているウサギの横を亀が追い抜いこうとしているだけですよ。
まんま独裁者の思考です。
独裁者がなんで部下を粛清するかっていうと、自分が人殺してのし上がったから同じようにやられるって思うからですよね。端から見ればなにやってんだこいつ、ですから結局独裁者は孤独になってしまいます。
追う側と追われる側の気持ちってお互いにわからないものなんでしょう。
日本だけでなく、世界的にこれですから、足の引っ張り合いが人間としてごく自然なことのようです。
ただ、やっぱり足の引っ張り合いって誰の得にもならないんですよ。
利があるとすれば、第三勢力がいて漁夫の利を得るくらいですかね。
足引っ張ったって自国産業が回復した例ってないです。戦争だって、全体的な視野で見れば人類の発展を阻害してますし、経済的にも合理性がないのは証明されています。
この非合理的な本能をどうにか制御して、追う側を尊重しつつも、負けないように自国を強くする。最近になって、追う側から追われる側になった日本人ならできるはずです。
そうすれば自ずと覇権は近付いてくると思いますよ。
あ、量子コンピュータと宇宙はほとんど新大陸ですよね。
それ故にこれらは大きな足の引っ張り合いもない、純粋な覇権争いなので急速に開発は進展していくでしょうね。見ていて清々しいです。
まあ発展途上国にはこれらの開発に向かう力がないという不条理はあるのですが。ある程度開発が進んだら凄絶な足の引っ張り合いが始まるでしょうしね。
私としては、日本はこの新大陸の開発において、アメリカか中国かではなく、どちら側にも食い込む姿勢を見せてほしいですね。正直日本国内の研究環境じゃ単独では無理なので、せめて。
曲がりなりにも経済大国であり、技術もあるのですから中国もアメリカも、日本の動向を無視はできないはずです。
視野を広げるって難しいですよね。
広げることに気を向けるあまりにミクロ視点で見ることを忘れ、一人一人の生活・感情に寄り添えない人とか見ます。
最終的に人を動かすのって人の感情ですから、数字やデータばかりで分析・説明するのは不可能です。
自分は広い視点で物事を見られていると思っている人ほど、傲慢になっていないか確認した方がいいでしょう。私も中学の頃はそういうところあったので、たぶん嫌われてましたね(笑)。
中二病最高。あの頃ってプライドが謎に高いから聞く耳持たないけど、自分よりも重症だった奴見てその恥ずかしさに気づくという。
もちろん衆愚政治に陥るリスクが民主主義にはありますから、よく考えて、調べて、本当に大衆が間違っていると思うなら声を上げましょう。