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第十四 年の差婚?

「なんだ? グランジョフの奴結婚でもしたのか? 随分年の差婚だなぁ」


「あの、勘違いしている所申し訳ないんですが注文を⋯⋯」


 グランジョフさんと同じ位の年齢だと思われる、毛のないおじ様の元へ注文を取りに行くと、意味わからない言葉を発している。何やら頭のおかしい人なのかもしれない。


「しかしお嬢ちゃん可愛いなぁ。グランジョフには勿体ない位だぜ。グランジョフなんて捨てて俺んのとこに来ないか?」


「いや、グランジョフさんとはただの雇用主と雇われの関係なので。それより注文⋯⋯」


「お嬢ちゃん、お名前は?」


「いい加減にしろリーフリット、俺が新しく妻を娶る訳ないだろ。とっとと金落として帰りな」


「なんだ、本当に違うのか。俺ァてっきりグランジョフがそっちに走ったのかと⋯⋯」


 グランジョフさんとリーフリットさん? は仲が良いのか、「馬鹿野郎」等と小突き合い、談笑を始めた。


 なんか⋯⋯男同士って感じ。汗臭そう。


 私がぽかーんと二人のやり取りを見ていると、奥の席から「ちょっと」、と呼ばれた。


「今行きます」


 駆け寄ると、これまたグランジョフさんと同年代の様に見える半分毛がないおじ様がいた。


 悲惨な頭ですね⋯⋯。


「いやぁ⋯⋯まさかグランジョフが人を雇うなんてな。お嬢ちゃん、グランジョフに変な事されてないか?」


「着替えを覗かれそうになりました」


「え」


「待て待てガキの裸なんて減るもんじゃねえだろ。見て何が悪い」


 半分毛がないおじ様に素直にあった事を申告したら、少し慌てたようにグランジョフさんがやってきた。


 慌てるくらいなら覗こうとしなければいいのでは、宜しくない事という自覚はあったのでは?という視線を送る。



「グランジョフ、年頃の女の子にそれはやっちゃ行けねえぞ⋯⋯。お前はどうでも良くてもこの子は傷付いたかもしれねえ」


「そーだそーだ。傷付きました。金輪際覗くな、変態」


「誰が変態だ。ちっ⋯⋯ガキがませやがって。分かったよ」


 半分毛がないおじ様が良い事言うので、便乗する形でグランジョフさんに抗議する。

 グランジョフさんは渋々了解してくれた様子た。生意気な、頭下げろ。



「あの、ちょっと」


「えと⋯⋯只今!」


 今度は半分毛がないおじ様とグランジョフさんが談笑し始めた。そして私はまた別のお客に呼ばれる。


 ちなみちなんだかんだでまだ注文を一回もとっていない。


「お嬢ちゃん、今歳いくつ?」


「え、あの⋯⋯注文を⋯⋯」


「何時からここで働いてるの?」


「いや⋯⋯その⋯⋯」


「ていうか彼氏いる?」


「店員への個人的な質問はよしてもらおうか。ソルビーネ」


 厄介な客に絡まれたと思ったら、直ぐにグランジョフさんが来た。

 そしてまた、グランジョフさんは客と談笑をし始めた。


 多分、ここに居る客はみんな常連でグランジョフさんと親しいんだろう。

 たからきっと私が物珍しいんだ。


 何となく店の雰囲気を掴み、それからはそつなく仕事をこなした。

 そしてもうすぐ閉店という所で、気になる客同士の話を小耳に挟んだ。


「なあ、今やってる戦争結構危ないらしいぜ」


「聞いたよ。確か魔法使いの数が足りないんだっけ?」


「そうそう。今魔法使いの居場所を国にチクったら報奨金二倍だとよ」


「マジかよ。二倍って言ったら人ひとり買える額だぜ。あーあ、どっかに魔法使いいないかな」


 話の内容は、国が総力を上げて魔法使いを探しているということ。

 グランジョフさんの言っていた通り、客にもうっかり口を滑らせたら、たちまち私は捕まってしまうかもしれない。


「なあお嬢ちゃん」


「ひっ⋯⋯! な、なんですか?」


「ん? あ、いや⋯⋯お会計をと思って」


「ああ、そうですか⋯⋯」


 変に警戒しているせいか、怪しまれる様な反応を取ってしまった。客は明らかに不審なものを見る目で私を見ている。

 平常心を保たないと⋯⋯平常心⋯⋯。


 ダメだ。いつもの私ってどんなだったっけ?



「エルノア、お前初仕事で疲れただろう。後は俺がやるから部屋で休んでろ」


「ありがとうございます⋯⋯ではお言葉に甘えて」


「おう。お疲れさん」


 私の様子を察したのか、それとも只の偶然かは分からないけど、グランジョフさんが助け舟を出してくれた。有難く店奥の自分の部屋へ逃げ込む。


「危なかった⋯⋯いや危なくないんだけど怖かった⋯⋯」


 部屋に着いて、私は力の抜けたようにへたりこんだ。

 自分に関心がないと思っていたが、追われる立場になるとこんなに怖くなるものなのか。


「怖い⋯⋯見つかったら戦争行きです⋯⋯」


 恐怖に脅え、部屋の隅で丸まっていると不意に部屋の扉が空いた。

 一瞬、背筋がビクついたが入ってきたのがグランジョフさんと分かって安心する。


「もう⋯⋯ノックくらいして下さいよ」


「ふんっ、一丁前に何言ってやがる。あと聞きたいことがあるんだが」


「何でしょうか?」


「エルノアは本当に魔法が使えるのか? さっきのアイツらの話は聞いただろう」


「国が血眼になって魔法使いを探してるやつですよね。まあ⋯⋯見つかったらヤバいかなって」


「そうか。誰にも見つかるなよ」


 それだけ言って、グランジョフさんは部屋から出ていった。

 私を匿ってくれる気なのか、気にかけて貰えた事が有難かった。


「眠くなってきました⋯⋯寝よ」


 一日働いた疲れが出たのか、唐突に眠くなってきた。グランジョフさんが入れば安全だし、今日はこのまま寝ちゃおう⋯⋯。


 私は置いてあった簡素なベッドに横になり、目を瞑った。直ぐに夢世界へと誘われる。




 翌朝、私が目覚めた時には既に国からの遣いが店を包囲していた。最悪な状況に絶句する。



「自国の状況は分かっているな。この店の魔法使いを連れていく」


「え⋯⋯?」





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