許されない思い
見慣れた監禁部屋。鉄格子から陽の光が差し込む中、重々しい扉が開く。
「ほら、クナイちゃん。そろそろだ」
「·····ん」
あの日から、クナイのテンションは低飛行。それも当たり前か、目の前で彼を拒絶してしまったのだから。
「まだ彼のことを。少し妬けちゃうなぁ」
「そんなんじゃない。大丈夫、お兄ちゃんと結婚するから」
「当たり前でしょ。さぁ、行こう」
そして優しく手を引いてくれるイッセイは、確かに昔の様、そのものであるが、クナイには不自然さを感じさせる。
(暖かかった手が、こんなにも冷たい)
もしかしたら気のせいかもしれない。だけど、かつてのイッセイの暖かみは一切なかった。
だが、その原因を作ったのは紛れもない自分だという事実がクナイの判断を鈍らせる。
あの日、放った魔法は暴発した。
魔力の制御が効かなくなり、それは拘束の用途から攻撃にへと変貌を遂げ、確かにイッセイに直撃し、殺してしまった。
それがなんだ。数週間前、突然と目の前に現れ、過去のことを言及し、強制的に連れ去った。
最初こそは喜んだことも、だんだんと恐れしか抱かなくなった。
(お兄ちゃん·····)
昔、唯一自分に接してくれた心優しい兄貴分の青年は居なく。目の前に写る青年は、それに似たなにか。
それは、分かってる。理解している。だが、あの日の一撃が、あの時の暴発が、自分の頭から離れない。離してはいけない。
(ずっと一人にしてた。だから、ずっといなくちゃいけない)
そしてクナイは結婚式場にへと足を進めた。
振袖をまとい、式場を跨ぐ。
扉の先には見慣れた面々が居た。
「·····お父様」
連れ去られてから、今までイッセイしかあの部屋に訪れていない。実質、一年ぶりの再会となるが、感動はなく、淡々としていた。
「クナイか」
「·····はい」
「イッセイと末永くな」
短い言葉を祝福の言葉として受け取り、進む。
そして、結婚式が始まる。
かつて自分を追放した家族が並ぶ中、挙式は順調に進み、遂にそれが訪れる。
「さぁ、そこに永遠の愛を·····」
クナイはチラッと辺りを見渡す。
イッセイ曰く、ルーロを招待したといっていた。もしかしたら、来ているのか。という淡い気持ちを込めるが──
(·····居ない)
自分が拒絶したのだ。別に悲しくも何ともない。でも、サクヤの時みたく助けに来てくれるかもしれないという自分勝手な願いだ。
(ごめん、皆·····)
そして瞳を閉じ、今までの世界を閉ざすようにクナイはその唇をイッセイに捧げ、それにイッセイが応えようとしたその時、扉が開かれる。
「ちょっと、待ったぁぁぁああッ!!!」
「──ッ!」
望月家一同が、全員して扉の方を向く。
「その結婚に異議あり、そいつは俺のだ」
その男、真っ黒のマントを羽織り、この場に相応しくない服装でズカズカと式場に入っていく。
「こ、このっ! 止まりやがれっ!!」
望月家に連なる忍者の二人が、席から立ち上がり、立ちはばかる。
「邪魔だ」
男は、巨漢を目の前にしても臆せず、右手を振るった。すると、巨漢たちの意識は一瞬にして刈り取られ、倒れる。
「であえ、であえっ! 曲者だっ!」
「それは俺のセリフだ。俺のクナイを取りやがって怪しい忍者軍団がっ!」
一瞬にして集まった忍者軍団を目の前に、男は自身の名を堂々と告げる。
「俺の名前はルーロ。そこのクナイの男の名前だ。よく覚えとけよ、陰湿野郎ども」
その言葉を挑発として受け取った忍者は、ルーロに詰め寄るが──
「グハッ!」
「そんなもんかよ」
顎に一発、鋭い拳を打ち込み、脳を揺らせる。
「ほら、来いよ。俺は今日を持って望月家を潰しに来た」
そんなルーロに、クナイは涙を浮かべて言ってしまった。
「助けて·····」
囁きほどの小さな声は、確かにルーロの耳に届き、そして応える。
「任せろ」
ニッと不敵に笑うルーロは忍者軍団に言った。
「一瞬で終わらせてやる」
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