サクヤを強くさせる
「──申し訳ございませんぅ。冒険者試験は一ヶ月後ですぅ」
ミーヤから言い放たれた衝撃的事実に、俺はやっぱりかぁと項垂れた。
「そう言えば、俺たちが冒険者になった時のスパンって一年ぐらいだったっけ?」
「そうですねぇ。冒険者試験の間隔は試験者の数によって決まりますぅ。規定の人数に達していれば一年の内に何回か受けれるんですぅ。でも、今回の一ヶ月は短い方ですぅ。これはルーロ様のお陰であるとも言えますぅ」
俺のお陰·····?
「はいですぅ。決勝戦のルーロ様の戦いを見た者が続々と再入試験を受けたいと。加えて、新たな冒険者候補たちがいるので、この一ヶ月はどちらかと言うと、私たちの準備期間ですぅ。何とか一ヶ月の内に準備を終わらせて、冒険者試験を行えるように全力で頑張っておりますぅ」
最初からA級で始まった冒険者生活。何度か、白い目で見られる事もあったが、認めてくれている人も居るってことに嬉しさを覚える。
「そうか。わかった、じゃあ、サクヤが受けるからよろしく頼むよ」
「了解しましたぁ。エントリーしておきますぅ」
よし、じゃあ、これで一ヶ月間ダラダラ過ごしていても大丈夫かな?
「···············あれ? アイツ、戦えるの?」
一応お姫様だった訳だし、護身術的なものを習ってたのか? 剣術とかもサラテは出来るって言ってたからなサクヤも多分··········
「──魔法一択ですっ!」
「攻撃系の魔法は·····?」
「相手の頭を覗けるのと、木属性で創造する事が出来ますっ!」
「魔物と戦ったこと、ある?」
「ふん、私を誰と心得る。かの、第一王女の妹にして、『二属性適性者』ですよ?」
あっ、やっぱ、流石にね──
「ない、ですっ!」
「あっ、そうですかぁ〜」
思わず放心状態になってしまった。
「何故に?」
「理由は一つ。私にとって牢屋が一生であり、外に出れたのはルーロ様たちと出会ったあの日だけ、それ以外は引きこもっていたからです」
そう言えば、そうだった。
あれ·····でもこれ、結構ヤバいんじゃね?
「なぁ、二人とも。一ヶ月でB級以上の実力って付けれる?」
「「無理」」
「ですよねぇ」
だって、俺でも無理だもん。
もうどうすることも出来ねぇやん。
「ルーロ、貴方の知り合いに強そうなオーラ纏っている人いないの?」
「えっ!? 師匠は何処にいるか分からないし、エルサとサクヤの戦闘スタイルは合わなそうだし、クリクソンは論外だし·····」
俺、王都に来て、これ以上の人たちになんて·····
「あっ、居たわ。強いか分からないけど、オーラだけだったらめっちゃある人居たわ」
「もう、その人にかけるしかないわ。行きましょうっ!」
「ん、時間がない」
そして向かったのは『魔魂』と呼ばれる店だ。前にも訪れた事があり、めっちゃ強キャラ感を漂わせていたあの人がいる店。
「久しぶり、婆さん」
「何時ぞやの小僧じゃないかい。今回はどう言ったご要件だい?」
「一ヶ月で人を強くする方法ってある?」
「··········小僧、入る店間違ってるよ」
「いやだって、婆さんぐらいしか強い人いないぜ?」
「年老いた婆さんをもう少し労わってくれや」
まぁ、それはごもっともで。
「でも、魔力は元気そうだ。現役じゃないか?」
「──ッ! そう言えば、小僧は魔力に関してはピカイチだったねぇ」
「そうだから、お願い。サクヤに魔法を教えてやってくれないか? 俺には無理な話でさ」
「そうさねぇ、まぁ、儂に面白い経験をさせてくれた礼だ。一ヶ月程度なら見てやらんでもない」
「太っ腹だね、やっぱ」
婆さんに頼んで良かった。
この人、出生や身分、正体については謎だけどアドバイスはしっかりとしている。相手をよく見ている証だ。
「ちなみに婆さんの属性は?」
「全部だねぇ」
「そうだよなぁ。全部だよな。でも、聞いて驚くなよ? このサクヤは、え?」
「全部って聞こえなかったのかい?」
世の中、理不尽、不公平、不平等と幾度となく思ってきたが、ここまで来ると俺も悲しさを通り越して嫉妬しか湧かない。
「なんで『二属性適性者』といい『全属性適性者』といい、俺の周りには珍しい人ばっか集まんのかな?」
クナイも魔属性だしよ。
「ほぉ、ということはサクヤっていう小娘は『二属性適性者』なのかい?」
「そうだよ」
「珍しいねぇ」
全属性使えるアンタの方が珍しいわ。
「じゃ、今日から早速やって貰っていいか?」
「せっかちだねぇ」
「そりゃ、試験まではそんなに期間がないからな。俺が教えるには限度がある。よろしく頼むよ」
「ヒヒッ、任せておきなぁ」
じゃあ俺たちは帰るとするか。
「クナイ、レーデ、俺たちは行こう──」
「私もいい?」
レーデが婆さんのところに行く。
「私にも教えて下さい」
「何故」
「弱いから」
「··········」
暫く、婆さんはレーデを見続けた。
「分かったよ、サクヤって奴もついてきなぁ。奥でやるよ」
「「はい」」
なんかいつの間にかレーデが修行に加わっているのですが。
「じゃ、俺たちは行くか」
「ん」
そして俺たちは『魔魂』から出た。
二人が強くなることを信じて。
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