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3-3 海竜決戦

 沖に出たトゥヴァイク号は大海原の風を受けて進む。

 途中、飛び魚や海鳥の他、幾つかの小さな魔物に教われるもそれはあっさり撃破。これではウォーミングアップにもならない。

 沖に出て半日。波は穏やか、天気は晴れ。風は微風。しかし誰もが海竜の襲撃に備えて緊張している。

 見張り台に起つ船員が声を張り上げた。


「海竜発見。凄い早さです。真っ直ぐこっちへ向かってきています」


 さぁ、戦闘開始。それぞれが配置についた。


「いくぜ! 俺の力はステージを支配する!」


 あらかじめつくって置いた船上のステージで貴音がギターを響かせる。

 歌声はスピーカーで増幅され、船の帆に様々なエフェクトを紡いでいく。


「曲が始まったか」


 エビスはディスプレイを確認する。


 【MP自動回復】【戦意高揚】


 貴音の曲は様々な特殊効果を発生させる。本人は全く意識していないと思われるが、決して馬鹿には出来ない。特に今回のMP自動回復はMP消費の高いこのパーティにおいて非常に重要な役目を持つ。

 曲の支援が発動したのを見てあっきーもバーモンを呼び出した。


「エノクサウルス。水中戦仕様! これを使って戦うんだ」


 現れたエノクサウルスは、シュノーケルとゴーグル。そして足ひれを付けていた。そしてジャイアントスライドエントリーで海へと飛び込む。

 400kgを超える体重が飛び込めば上がる水しぶきもかなり高い。


「GYAOOO--GABGABGAB・・・」


 あっきー本人は船の舳先、海を見やすい位置を確保。しぶきで濡れた前髪を払いながら水面を見渡す。

 ドルフィンキックを行いながら、水中を器用に泳ぎ回るエノクサウルス。

 しかしよく見ると大きく開けた口から水を吸い込んで、背中のノズルから吹き出している。これが高速推進と消音化を両立した最新式の推進装置キャタピラードライブ。ゴーグルとか足ヒレはただの飾りでしか無い。

 これぞ課金の力。移動速度は地上を走るよりも速く、その怪力と攻撃力は変わらないのだ。



「サモン。ブレードフィッシュ×4。

 サモン。ダイブイーグル×4

 クリスタルモニター。

 コンビネート、アイサイト」


 風巻は魚型の中でも動きの速い魔物を複数召喚、さらに飛行型の魔物も追加した。そしてそれらの視覚をスクリーンに投影した。

 これで船上にいながら水中の様子と空から見た俯瞰図が同時に確認出来る。



 キリマンは相変わらず何も言わない。黙って魔球を作り出した。船の回りには大きな魔球を4個つくりプカプカと浮かばせる。船の上には比較的小さな魔球を2個こちらはフワフワと漂っていた。



「それでは私も行ってきます」


 そう言うと、エビスは船から飛び降りた。ブクブクと沈んでいくエビス。体が水中に没した姿を上から見ると、まんまクラゲだった。




 海竜の速度は速かったが、それよりもエノクサウルスの方が速い。接敵し爪を打ち付ける。海竜は体を捻ってそれを避けた。

 速度はともかく海竜の方が俊敏性が高いのと、堅い鱗が滑りやすく、致命傷にはならない。しかし確実にダメージを蓄積させていった。

 防御に専念する海竜は船に近づくことが出来ない。放って置いてもこのまま勝てることだろう。


「もう一匹来ました。逆方向です」


 見張りが焦りながら叫ぶ。なんてことだ。海竜が二匹もいたとは! 

 次の海竜は死角から滑り込むように船に近づいてきた。距離20mは水流ブレスの射程距離。すかさず帆を狙ってブレスを放った。

 水流ブレスはまるでレーザー。真っ直ぐにメインマストを狙って飛んでくる。

 しかしその姿は事前にモニターで察知されている。小さな魔球が射線を遮った。よく見ればそれは半球になっていて平面部分を斜めにしてブレスを受け止める。魔球の表面を水が流れ射角が変化。ブレスは大きく曲がり船に当たることは無い。

 海竜は何度もブレスを吐くがその度に魔球に防がれている。

 この正確な防御が出来るのは、風巻が作ったモニターによって海竜の位置が正確にわかるから。ブレスの発射位置とタイミングそして角度が判るのだから、落ち着いて対処すれば防ぐのはたやすい。


[ピンポイントガード。防御は任せて]


 キリマンがカンペを風巻に見せた。たぶんドヤ顔かと思うが羊の表情はよく判らない。

 海竜がいったん距離を取る。そこから加速しトップスピードで船へ体当たりを行った。

 矢のように迫る海竜だったが、今度は大きな魔球にそれを阻まれた。大きな魔球は大福のように柔らかい。海竜の体当たりを柔らかく受け止めた。船体は衝撃どころか揺れすらしなかった。

 動きが止まったところをエビスは見逃さない。海竜にクラゲの触手を多数突き刺した。触手の先にプラズマが発生し海竜を灼く。さらに体ごと触手を回転させ、細切れに切り裂く。

 大きなダメージを受けた海竜。もちろんエビスは容赦しない。触手によるプラズマ攻撃を何度も繰り出す。

 海竜はHPが高いのかその攻撃にかなり耐えた。しかし麻痺属性も持つ触手から逃げることも出来ない。そして最後には動きを止めた。


 その間、遠方ではエノクサウルスと海竜の海獣大決戦が続いていたのだが、もう一匹の海竜の敗色濃厚をさとると逃げに転じた。

 エノクサウルスも追いかけようとしたのだが、あっきーの制御範囲限界を超えられてしまい逃げられてしまう。

 もちろんそのまま逃がすわけにはいかない。エビスとエノクサウルス。二人が船を押して追いかけることにした。



 一度は引き離されたが、ジリジリとその差が詰まっていく。

 逃げる海竜は遠洋にある島の一つへと向かっているようだ。もしかしたら海竜のすみかがあるのかも知れない。

 島は無数のトゲが生えたような、特徴的な形をしていた。


「あの特徴的な形。あれはナジカカル島! 暗礁だらけの小さな島で地元の人でも近づかない危険な島です。

 もちろん上陸も無理。渦潮もありますし、急な流れに掴まらないよう気をつけて!」


 チェリュノが叫んだ。


「スクリーンの映像にノイズが。まるで黒い雪のように見える。これはいったい?」


 風巻が操るスクリーンにはチラチラ舞い落ちる雪のような黒いノイズが多数発生していた。その時風巻はある考えに至る。


「黒い雪! もしかして。みんな気をつけてクラーケンが来ます」


 その声が聞こえたのだろうか、切り立ったトゲのような暗礁から大きな影がユックリと姿を現した。

 クラーケンと呼ばれるそれは、タコと言うよりクラゲだった。昔の人が考えた宇宙人と言ってもよい。

 膨らみかけたお餅のような頭部(胴体?)は高さ5m、幅15mの円盤状。淀んだ深緑、くすんだ濃紺、腐った土の色が混ざり合っている。それは強大な脳みそをイメージさせた。半透明なのか、その中を光る何か、寄生虫にもシナプスの動きにも見える。そんな何かが行き来している。表面は粘液質のモノがドロドロと溶けながら爛れ落ちていた。

 下部からは複数の、少なくとも8本以上の触手(足)が伸びていた。

 見るだけで吐き気をもよおす外見である。


 近づいていった海竜がそのままクラーケンの胴体に突き刺さる。

 触手に見えていたのは全て海竜だったのだ。胴体部分をよく見ると、海竜の頭が僅かに透けて見える。複数の頭が胴体内をぐねぐね動いて胴体からヌポッと顔を出す。本体からの支援を受けて力を溜める。そして同時に9本の水流ブレスが放たれた。ブレスは重なり合いぐるぐるとねじれながら一つの巨大な水流になった。

 海竜のブレスをレーザーと称するなら、このブレスはメガ粒子砲だ。

 海竜単体のブレスとは威力も速度もまるで違う。現在の距離は50m。キリマンが大きい魔球を直列に並べて防御するが、四つの魔球が順番に弾けて霧散していく。

 それでも少しだけ時間を稼げた。その僅かな時間を無駄にせず、エビスがやってきて体で受け止めた。ブレスの威力で船にぶつかりさらに船ごと吹き飛ばされる。エビスは前面を堅くしてブレスを防ぎ、背面を柔らかくして緩衝材にして船へのダメージを減らす。

 船とエビスは海面に何度も叩き付けられ、船が軋んでいたが、なんとかバラバラになるのだけは防いだ。


「凄い威力だ。HPが7割以上減ってしまった」


 クラーケンは容赦なく次の攻撃を開始。タコ墨を吹いたように黒い霧が周辺に広がってきた。霧に触れた魔鳥と魔魚はあっという間に腐ってしまう。

 エノクサウルスも霧の攻撃を受けたが、流石に耐えた。しかし徐々にHPが減っていき、長時間戦うのは危険だ。表面の装甲板も少し溶けている。

 あっきーはこれ以上は危険と感じ、エノクサウルスをいったん下がらせる。


 クラーケンは大きく叫ぶ。黒板を引っ掻いたような深い軋み音。怨嗟の連続を思わせる乾いた声。心の奥底まで浸透し恐怖に被われる恐ろしい叫び声だ。

 船乗り達は全員恐怖で金縛りになってしまう。


「歌で張り合うつもりか。俺はまだまだ歌える。はじけろ俺のソウル!」


 魂の叫びが船乗り達を動かした。いまだ恐怖を感じているようだが、必死に勇気を絞り出している。

 今度の曲は、【精神抵抗力上昇(大)】の効果を発生したようだ。


 キリマンは最大威力の魔球を作り出して、クラーケンに放った。しかし怨嗟の叫びで速度が落ち、腐食の霧で大きさが小さくなる。本体に直撃するも表面が少し凹むだけ。まともなダメージを与えることは出来ない。

 お返しとばかりに九つの水流ブレスが飛んできて船に当たる。距離があったのでダメージは少なかったが、帆は破け、船体に穴が空き浸水が始まった。



 近づけば腐食の霧でやられる。遠距離攻撃も防がれてしまった。このまま戦うにも、決め手が無かった。


「しかたがない。いったん撤退して体勢を立て直すぞ」


 エビスが叫ぶ。


「逃げれるなら逃げましょう。でも見て下さい! 黒い霧が先回りして壁のようになっている。いまの状況であれに突っ込んだら船が持ちません」


 チェリュノがそれに答える。

 クラーケンは無駄にあがいているのを嘲笑するようにユラユラと漂っている。腐食の霧が壁となり、包囲するようにジワジワと迫ってきた。

 さらに九つの竜頭が同時に力を蓄え始めた。最初に放ったブレスよりもさらに高い威力があるのは間違いない。

 次にあれが放たれたら、防ぎきれずに船は破壊される。たとえ防げたとしても腐食の霧まで押し込まれて、やはり船が破壊されるだろう。

 クラーケンはわざとユックリ力を溜めているように見えた。


「皆さん船に掴まって下さい! いきます。サモン。ミラージュ・ホエール。

 スキル。リターン・トゥ・ポート。

 港湾都市ケルナンデへ!」


 風巻が呪文を唱えると、海から巨大な白鯨が現れた。大きな口を開くとそのまま船を飲み込む。白鯨は捻れ歪みそして姿を消した。




 トゥヴァイク号とその船員。そしてアウスレンダーのメンバーはケルナンデの沖、数百メートルのところに再出現した。

 後は船員に任せておけば港へ戻ることが出来るだろう。


「さっきのは凄かった。いつの間に使えるようになったんだ」


 あっきーの問いかけに風巻は答える。


「判りませんか? 課金ですよ」


 爽やかな潮風がながれ、疲れ果てた体を優しく包んでくれた。

 港へ着いたら取りあえず少し休もう。この後のことはそれから考えればいいだろう。



 この作品はPBM-RPGです。

 リプレイでも通常の小説でもありません。

 物語はプレイヤーの手にゆだねられており、

 プレイヤーの意思決定により変化し進められていきます。

 参加プレイヤーは「あっきー」「風巻豹」「キリマン」「エビストウスケ」「貴音大雅」以上5名となります。

 その他の人物はマスターである私が一元的に管理しています。



 各プレイヤーの行動基準。


 折角なのでプレイヤーから頂いた行動指針を追加することにしました。

 全部を書くと量が多いので、指針のみ記載します。



あっきー

 港湾都市ケルナンデへ向かう。


キリマン 

 案内役は継承権の少ない王子とかが居るならそれが良いな。行き先は他の人に任せます。


貴音 

 海に行こう。波の音をバックに歌を歌う。パーティ名は【アウスレンダー】がいいな。マネージャーは誰でもいい。


 エビス 

 行く先は港湾>森林>城塞。案内役はオブルシュ希望。


 風巻 

 行く先は森林>港湾>城塞。案内役はオブルシュが良いかな。 

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