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3-1 旅の始まり

 イスメアルダ王女との夕食の後。取りあえずみんなであっきーの部屋に集まっていた。

 これからの方針について話し合おうと思ったが食堂では広すぎて落ち着かなかったのだ。

 全員で個室へとつらつら歩いているといつのまにかあっきーが先頭となっていて、そのままあっきーの部屋にみんなで入ったというわけである。


「自分は港湾都市に向かってみたいですね」


 最初に口火を切ったのはあっきーだった。


「俺は歌えればどこでもいいが、海は好きだぜ!

 海を前に歌うってのは最高にリズミカルなんだ! 波の音をベースに俺のギターを重ねる。 それに俺の歌を合わせればどんな奴でも海の世界が伝わるはずだ!

 この世界に俺の歌声を響かせてやるぜ!」


「私も港湾都市が良いと思うよ」


 意外にも最初に反応したのは貴音。それにエビスが乗ってきた。


[それについて行きます]


「キシャナやクロームも気になりますが、皆さんに従います」


 キリマンと風巻も同意し、港湾都市へと向かうことが決まった。

 次に問題となったのはイスメアルダ王女から提案のあったお供のことだった。


「誰がついてくるか? マネージャーみたいなもんか? マネージャーは大事だぜ! 重要なサポートメンバーだからな。俺の曲に口出ししなきゃ人選は任せるぜ!」


[お供は無くてもよいのでは?]


「あの三人から選ぶならば無難なところでオブルシュ騎士団長さんですかねぇ」


「僕もオブルシュさんに同意します」


 意見が分かれてくる。そこであっきーに視線が集まった。最終的にリーダーの意見を尊重するというスタイルが透けて見えた。

 いつの間にかリーダーにされていたあっきーだがその事には一切触れず結論を出す。


「移動はスマホのマップ機能があれば道に迷うこともないし、検索で調べる事も出来る。案内役はスマホで間に合うっすね」


 イスメアルダ王女、オブルシュ第三騎士団長、カパル治癒術士、全員スマホ以下認定されてしまう。

 とは言えなんとなく監視されているような気もするし、結局案内役はお断りすることにした。



 次の日。朝食を終えると出発することになる。準備を整えた皆の前にイスメアルダ王女が見送りに現れた。


「ここからケルナンデまでは南に一直線。道に迷うことも無いでしょう。普通に歩けば明るい内に到着出来るはずです。

 よろしければこちらをお持ち下さい。簡単ではありますがお弁当を用意しました。

 アカシュブレア王国の未来はあなた方にかかっております。それではご武運を」


 手提げに入ったお弁当をあっきーに手渡す。イスメアルダ王女はお城の入口で我々の姿が見えなくなるまでずっと頭を下げていた。




 お城を出ると貴族街が最初にある。大通りをそぞろ歩いていると、豪奢な馬車が行く手を塞いだ。中からきらびやかな衣装に身を包んだ貴族が数名降りてきた。が、どこか違和感がある。

 こちらへ近づいてくると、丁重な挨拶をしてくる。


「これはこれは貴音様。昨日は大変貴重な体験をさせていただきました。この後はどちらで音楽会を行われるのですか? それが気になってしまい、いても起ってもおられず参上した次第です」


 貴族令嬢達も貴音に近寄ると花束を手渡している。

 その時違和感に気がついた。腕や首に付けている装飾品。なんか無駄にごてごてしている。高価な宝飾品ではない。それは貴音のファッションを真似しているのだ。昨日の今日でそれを用意する、貴族の本気をそこに感じてしまった。

 対する貴音はそれが当たり前のように接していた。


「なるほどなるほど。この次はケルナンデにて音楽会をやられる予定なのですな。これはみなにも速く知らせてあげなくては。ああそうだ、大切なことを聞くのを忘れておりました。貴音様の音楽隊は何というお名前なのでしょうか?」


 そう言えばパーティ名称を決めていなかった。それを気にする人が居なかったというのが実情なのだが。


「ソロなら俺の名前でも良いがバンドでやるならバンド名が必要だな」


 貴音があっきーを見る。咄嗟に何も思いつかないようで、なにか良い案があるのか? と周りを見回した。


「そうだな、【アウスレンダー】ってのはどうだ? 【外から来た人達】って意味だ。

 他に案が無ければコイツに決まりだ!」


「アウスレンダーとな。それは良い名です。それではアウスレンダーのこれからを楽しみにしておりますぞ。では戻ってケルナンデへゆく準備をしなくては」


 豪奢な馬車は道を戻っていった。馬車の窓からは令嬢達が貴音に対して大きく手を振っていた。



 清掃の行き届いた貴族街を通過すると、商業地区となりここからは人通りも多く賑やかな町並みが続く。南へ抜ける大通りには所狭しと小さな露天が店を構えていた。

 朝食後のこの時間では開いたばかりの店も多かったが、この世界に来て始めてみる商店はもの珍しい品物が沢山ありつい目移りしてしまう。

 貴音はアクセサリー系の店を見つけては物色していたし、エビスは持ち歩きが可能な軽食類を購入。キリマンと風巻は魔導具の類いに興味があるようだった。

 その中であっきーだけが物欲しそうな目をするだけで何も買っていない。その様子に気づいたのは意外にも風巻だった。


「どうしたのですか。金額的にたいした物ではないし買えば良いじゃ無いですか」


「いや、実はもうあまり金が無くて・・・」


「イスメアルダ王女から貰った支度金はどうしたんです?」


「バーモンの強化を・・・。いやだって追加装備購入や能力値強化するのに20ゴールドとか、演習場に50ゴールドとか凄く金が掛かるんだよ。餌代だってかかるし。というか課金アイテム多すぎなんだよ。1日1回の無料ガチャじゃぁ全然強くならないんだよ。というかどこか簡単に金が貰える方法無いのか。モンスターをやっつけたら手に入るとかなっているんだよなっ。そうだよなっ!

 たのむ。ちょっとで良いから金貸してくれ。今日の餌代が…」


「もしかしてもう残額0とかですか? 因みにいくら欲しいんです?」


「50。いや10でいい」


「50貸しておきます。無駄遣いは駄目ですよ」


「すまない。ありがとう、助かる」


「でも実際魔物を倒すとお金になったりしなのでしょうか? こう言う世界だし冒険者ギルドとかありそうですけど」


「捜し物なら検索機能とマップ表示が役に立つはず。すぐ調べてみます」


 検索の結果、冒険者ギルドは無かったがそれに類する物でハンターギルドという施設があった。

 魔物それぞれがもっている魔力がこもっている部位のことを魔力片という。それは牙だったり爪だったり瞳だったりと魔物の種類によって違う。

 ハンターギルドでは魔力片の売買の他、魔物の情報や魔物退治に必要な道具類の販売などを行っている。

 ギルドに登録されていなくても売買は可能だが、登録しておくと様々なサービスを受ける事が出来、討伐数や貢献度に応じてランクが上がっていく。高ランクのハンターにはそれに応じた魔物情報や退治依頼が通達され、報奨金が貰えたりするのだ。

 こうなると当然登録する流れになる。どうせ魔物を退治することになるし、どのようなことにしても情報はあって損にはならない。

 登録はパーティ単位だったので、アウスレンダーの名前で登録した。

 ハンターの心得や注意事項など簡単な講習を受ける。この世界において魔物はごく一般的で魔力片や体の一部が素材として流用されており、生活用品や武具の作成に使われている。

 ある程度は自警団や騎士団が退治して廻っているが、当然それだけでは手が足りない。そこで退治及び素材集めに奔走する者達が現れた。彼らは魔物ハンターと呼ばれ、それを統括、管理する為にハンターギルドが作成されたのである。

 なお、王都周辺は比較的低レベルの魔物しかいないので初心者ハンター達の育成に最適であると言われた。今いける範囲で強さを段階で表すと、このようになる。

 難度1~。アカシュブレア王国、王都周辺。

 難度5~。港湾都市ケルナンデ。

 難度20~。森林都市キシャナ。

 難度30~。城塞都市クローム。


 ただしこの難度は半年前の設定で有り、最近の魔物活性化により難度は大きく変化しているので注意が必要である。




 そんなこんなで時間が経過してしまい、実際に王都を出発したのは昼近くになってしまっていた。

 王都を出て街道を南に向かう。そこで初めて判ったのだが、単純に全員の身体能力は向上していた。これが元いた世界と変わらない身体能力だったら途中で疲れ果ててしまっていたことだろう。

 移動速度で言うと時速8kmくらいで歩いてもそれほど苦では無い。ケルナンデまでは距離にして約20km。この速度で移動すれば日が暮れる前に余裕で到着出来る。


 王都と港湾都市を繋ぐ街道だけ合って往来も多い。複数台の馬車が固まって移動しているキャラバンもあれば、徒歩で移動する旅人もいた。

 道は見渡す限りの草原が続いていて緩やかな丘が連なっている。天気は晴れ渡り視界良好。丘の頂点付近に起つと街道上のどこかに誰かを発見することが出来た。

 事前に聞いていた話で、一般的に街道上で魔物に遭遇することは無いらしい。

 しかし今は魔王の影響で魔物が活性化しその数も増えている。視界の先で狼のような一群が馬車に迫っているのが見えた。


「あっ、あれ、魔物じゃないか? 前にいる馬車を襲おうとしている。すぐに行って魔物をやっつけよう」


 あっきーが走り出した。見えていると行っても距離にして2kmくらいある。魔物と馬車の距離も同じくらい。


「エノクサウルス。お前の出番だ。突っ走れ!」


「GUGYAOOOOO!!」


 叫び声と共にエノクサウルスが現れる。あっきーはすばやくその背中に跳び乗った。よく見れば背中には鞍がついていた。

 エノクサウルスは走り出すとドンドン加速していき、あっという間にトップスピードになる。この速度なら魔物が馬車につく前にたどり着けることだろう。

 他の面々もジッと見ているわけでは無い。それぞれが馬車に向かって走り出した。

 馬車までの距離が近づくとあっきーはエノクサウルスから飛び降りた。エノクサウルスは勢いを殺さず魔物の群れに突撃。魔物を吹き飛ばしながら群れを分断していく。


「援護します。このまま真っ直ぐ、魔物から遠ざかるように走らせて下さい」


 あっきーは馬車の荷台に飛び乗ると御者にそう叫ぶ。御者は驚きながらも指示に従う。

 次に追いついてきたのはエビスと風巻。と思ったらキリマンがちゃっかりエビスの触手に掴まりぶら下がっていた。


 エビスはキリマンを馬車に乗せると魔物に振り返る。一匹の強さはたいしたことがなさそうだが数が多い。近づいてきた魔物を掴むと別の魔物に投げてぶつける。戦闘支援システムをフルに使い対処する順番を間違えないよう防御に徹する。


「空からも来ます。鷹型、視認12。狼は残り8。他には敵影無しです」


 風巻は慌てず魔物の動きを観察していた。


「よし、全部覚えた」


 そう呟いたのを聞いていたのはいただろうか。

 空の敵に対応したのはキリマン。魔球を展開させ狙いを絞る。すべての鷹に目標を定める。属性は炎。体の一部でも燃え上がればそれに対処するために攻撃をやめるはずだ。

 12個の炎球が12の鷹に命中する。文字通り火の鳥となったそれは悲鳴を上げながら落ちていく。残りの狼も程なくして全滅した。


「客がいなくなっちまった。こう言う場面こそイカしたロックがあうんだがな」


 追いついた貴音が残念そうに呟いた。


 倒した魔物から魔力片を採取する。

 魔力片チェッカーを使い魔力片を確認し、それを回収していく。この手の丁重克つ緻密な作業はキリマンが得意だった。

 けっこうな数がいたのだが、死体を集めるのはエノクサウルスが手早くやってくれた。死体の臭いをかぎ分けて探してくれるので抜け落ちはない。

 馬車にいた商人達は我々に感謝し少なくない報酬も出してくれた。

 そのまま一緒にケルナンデへと向かう。




「こんにちは。僕はチェリュノ。あれだけの数の魔物を苦も無く倒すなんて、みなさんは高名なハンターなのですか?」


 身長150cmくらい童顔の彼は14才くらいに見える。彼は旅行中でたまたま馬車と一緒に移動していたとのこと。


「ハンターにはついさっきなったばかりです。自分たちが強いのは勇者だからですね」


 あっきーは隠すことも無くサラッと言った。


「そうですか。王都ではそう言う噂を聞きませんでした。あなた方は魔王退治の切り札って言うことですね」


「まだこっちに来たばかりなので噂が広まっていないだけだと思います。それに自分たち以外にも沢山いるので発表するのが大変なのかも知れません」


「念のため聞きますが、勇者というのは隠していたりするのですか?」


「特に隠していませんが。マズいですかね」


「・・・。なるほど、そういう感じかぁ。ねぇさんが心配するのも判る気がするな。

 改めて自己紹介するね。僕の名前はチェリュノ。一応アカシュブレア王国の第3王子って事になってる。本当はケルナンデで皆さんの行動を監視するつもりだったんだけど、まぁこれはこれでいいか。

 みなさんが隠し事の苦手なことは判ったし、そう言うことならこちらもオープンにした方が良いと思うしね。

 僕は皆さんみたいに強くないから、戦闘では役に立たないけれど細かいところで協力出来ることはあると思います。

 みなさん、改めてこれからよろしくお願いします。勇者様。あ、今はアウスレンダーと名乗っているのでしたっけ」


 こうして新たな仲間を加え。勇者パーティいやアウスレンダーは港湾都市へたどり着いた。



 この作品はPBM-RPGです。

 リプレイでも通常の小説でもありません。

 物語はプレイヤーの手にゆだねられており、

 プレイヤーの意思決定により変化し進められていきます。


 参加プレイヤーは「あっきー」「風巻豹」「キリマン」「エビストウスケ」「貴音大雅」以上5名となります。

 その他の人物はマスターである私が一元的に管理しています。


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