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8-1 セイントナイトへ贈る言葉

 エビスはみんなを連れて、あっきーの自室へと移動した。

 名目上は休憩のため、打ち合わせの中断をしたことになっているからだ。

 改めて、みんなの前で自分の意見を伝える。


「魔王城のダンジョン。あの話しはどう考えても怪しい。ダンジョンの構造。そこで発生するイベント。どれをとっても、元いた世界におけるダンジョンイメージに合致する。

 それらを総合するとそれを作ったのが転移者としか思えない。

 みんなも感じたと思うけど、セイントナイトは戦闘特化のパーティ構成。正面から戦えば、他の勇者パーティを圧倒するだろう。

 だから戦わないで無力化させる方法をとってきたと考える。

 これはダンジョンアタックをさせることで、目線を逸らし、魔王へ到達させない罠だ。

 あるいは、我々を分散させるのが目的かも知れない。

 そうやって分散させて、各個撃破するんだ。」


「エビスとしてはどうしたいんだ?」


 あっきーが聞き返してきた。


「魔王だか、スカルブラッドだかどちらかの力で迷宮が出来たか知らんけど、そこにリソースが使われてるならそれはそれで願ったりなのではー?

 でもそこにセイントナイト全員を突っ込むのはもったいない。

 なので、一応説得なりしてダンジョンアタックをやめさせられないか検討してみたい。

 みんなはどう思う?」


[リーダーが脳筋系では協力は難しい]


 キリマンが即座に答えた。続けてカンペが切り替わる。


[ミンウ(パーティの良心)もリーダーが手を出す前に止めない辺り、あまり良い気がしない…]


 いつになく饒舌なキリマン。相変わらず羊の顔は表情が読みづらい。しかし表情には出ていないが、仲間を殴られたことで怒りのオーラがキリマンから出ていた。かなりご立腹だ。


[残り二人の性格が分からないが、説得するのは難しい]


 貴音も少し思うところがあったらしく、意見が出てきた。


「ああいうタイプは音楽の世界にも良くいるぜ。テクニックをひけらかして一人悦に入ってメンバーや観客が引いていることに全く気がつかないタイプだ」


「ダンジョンについてはエビスさんの意見に賛成します。かなり怪しいです」


 風巻が言った。それを貴音が拾う。


「そもそも魔王城の中にある宝物を使って魔王を倒そうとかちょっと脳みそ湧いてんじゃねぇのか?

 ご丁重に相手が置いてくれものを使って、その相手を倒せるはずねぇだろ?

 用意されたダンジョンなんぞ出入口を塞がれれば一発で終わりだって気付かねぇのかよ?」


 キリマンがすかさずカンペを掲げた。


[ギャンブルでもそうですが、「人ってのは、物事が上手くいっている時は、操られてても気づけない」モノなんですよ]


「そうですね。勝っている時にやめれば良かったと何度思ったことか」


 しみじみとあっきーが呟いた。


「おめおめと敵の罠に乗っかって悦に入るとか滑稽だぜ」


[ミンウの観察力は鋭いが、エビスのような全体を見る目が無い]


 なかば見捨てるようにキリマンがカンペを掲げた。

 再びエビスが口を開く。


「100階層でおしまいという根拠は何かはっきりしてそうなのでそこに異論は挟まない。

 けどそもそも突入した場所が魔王城だと確信した理由ってなんなんだろう。

 その辺りを突き詰めたら少しは疑ってくれるだろうか」


[実質のリーダーはミンウのようなので、彼を説得すればダンジョン探索を中止に出来るかも知れないが、無理でしょう]


「スカルブラッドの搦め手にはめられないように、注意喚起だけしとくか。

 正面から対決したらセイントナイトの方が強い。と持ち上げつつ、だからこそ力押しとは違う卑劣な手を使ってくることを用心するようにと言えばちょっとは気にしてくれるだろう」


 風巻がそれに答える。


「セイントナイトから見てアウスレンダーはかなり低く見られていました。

 何を言っても聞く耳持たない気がしますね」


[砂塵の狐のリーダーからもアウスレンダーは軽く見られていたけど、ベースは理性的(戦略的)なので分かって貰えたけど、無理では?]


 キリマンも同意した。


「好き勝手にやらせれば良いのでは。エビスさんの指摘通り、魔王軍はダンジョンにリソースを取られるのは間違いありません。それで十分でしょう」


 風巻も彼らを止める気は無いようだ。

 さらにエビスは次の手を考えた。


「リョフを酔いつぶすのはどうだろうか。

 他の三人をいくら説得しようがリーダーの考え1つで意味が無くなるので祝宴で呑ませるとか。

 祝宴の理由が必要なら、クラーケン退治を理由にすれば良い」


「すぐにでもダンジョンアタックしたがっていたので、祝宴に付き合わないのでは? そもそも酔い覚ましの魔法とかありそうですよね」


 すぐに風巻にだめ出しされてしまった。

 その時、あっきーが異議を唱えた。


「どんな理由があるにしても同じ勇者の仲間です。なんとか共闘して魔王と戦うことは出来ないかなぁ」


[パラメーターを戦闘特化にしている時点で、共闘とか考えてないでしょう]


 キリマンがそれに対して突っ込みを入れた。


「そうですか。だとしても少しでもセイントナイトが有利になるよう助言をしておこうよ」


 エビスもそれには同意する。


「相手の出方が分からないが、ダンジョンには気をつけるように行っておくしかないな。

 それと、定期的に地上へ出てハンターギルドと連絡を取り合うように言っておこう。

 それだけでも何かあった場合に対処出来ることが増えるからな」


 一区切りついたところで、思いだしたように貴音が言った。


「そういやこのまえ、デーモンってやつにあったぜ。どうやら俺を引き抜きに来たらしい。

 メンバーの引き抜きなんて音楽の世界ではザラだからな。テキトーに断っといたぜ」


「それはいつのことですか? 渡しておいたウイルスアプリを送り込むことは出来ましたか」


 アプリの動作が気になる風巻が聞きただす。


「ああ、あれな。いや、会ったのはそれを貰う前だ。だから渡せてないぜ」


「そうですか。まぁ仕方が無いですね。次に会った時はお願いしますよ」


「アイツは恐怖と破壊を撒くとか言ってたな。魔王ってやつの力を使って、この世界を支配したいとか言ってたぜ。くだらないヤツだぜ」


「それだけ聞くとデーモンとはわかり合えない気がするな。

 まぁ、大悪魔って言っている時点で察するべきかも知れないけどね」


 あっきーが感想を答えた。


「ちなみに音楽の世界にもデスメタルって言うのがあるぜ」


[それはもしかして、大悪魔が貴音の歌に対抗出来る力を持っているってことでしょうか?]


「その可能性は考慮すべきだろう。貴音。デスメタルとはどういうものなんだ?」


 エビスが対抗策を考えるために、デスメタルについての考察を求めた。


「ぶっちゃけ、悪魔や堕天使を賛美して背徳や暴力を煽る歌だ。対象が神様じゃぁないだけで賛美歌みたいなもんだ。

 でもな、賛美歌ってのはなかなかに強力なんだぜ? なんせ人々の意識を1つにまとめて神様を崇拝するために作られた歌なんだからな」


「悪魔や堕天使。向こうには相当する対象が二人もいる。厳しい戦いになるかも知れないな」


「その二人が貴音の歌に対抗して歌うとしたら、その分他が手薄になります。

 そう考えれば良いのでは」


 エビスの分析に風巻が答えた。


「そうかも知れないが、落ち着いて今までのことを思いだしてみろ。

 貴音の歌を風巻がフォローして拡大している。そう考えたらこっちも二人使っているんだ。

 でも風巻は歌を歌ったり、曲を弾いたり出来ないだろ」


「それはちょっと…。出来ないですね」


「まだ出会っていないから分からないけど、向こうは二人ともそれが出来ると考えておいた方が良い。その場になってから対応していては手遅れになるかも知れないからな。

 貴音はどう思う?」


「もしデスメタル野郎と対バンするなら持久戦しか無いな。

 メタルの本質は音の爆発だ。特にデスメタルはデカい音を文字通り爆発させて観客をビビらせるんだ。それで客の心を掴むんだ」


「大きな音ですね。耳栓とかが有効なのかな」


 あっきーが真剣な表情で答えた。


「そうじゃない。

 それに対抗するには耐えるしかない。向こうの音が引くまでただ耐えるんだ。

 耐え切れれば俺達の勝ちだ。逆にそれに飲み込まれたら俺達の負けだな。

 お前らしっかり体力付けとけよ! ロックってのは体力が基本だぜ!」


 アウスレンダーの作戦会議は深夜まで続き、セイントナイトに対する助言の数々を検討していった。





 次の日。朝食を終えて会議室に来たのはミンウだけだった。セイントナイトの他のメンバーは既に旅立ったと言われる。

 ミンウ一人なら、パーティメンバーのいる場所への転移が出来る。そして、ボス他に対する説明ならミンウ一人で可能。そう結論づけて行動したらしい。

 まぁ、それを言ったらこちらも貴音がいないので、人のことは言えなかった。

 ミンウが前に立ち、説明を始める。


「ボスは10階層毎に現れました。現在攻略したのは70階層まで。つまり七つのボスと戦ったことになります」


 なんとなく聞いても無駄になりそうな予感がしつつ、それでも何か判るかも知れないと黙って聞くアウスレンダー。

 巨大オーク。ゴーレム。キメラ。アンデッドナイト。ヒドラ。ファイヤーエレメント。レッドドラゴン。総じて高い耐久力と、攻撃力。特殊能力による一部の攻撃への耐性。

 セイントナイトでも倒すに苦労したことが伝わってくる。


 ミンウの説明は分かりやすかったが、少し過剰に伝えているように感じる。要するにセイントナイトの強さをアピールしていた。


 また、ボスを倒した時手に入る特殊魔石は、魔王城最深部への鍵と予想している。

 当初60層と予想していたが、それを越えたことで切りよく100層であると考えているようだ。

 それについてあっきーがみんなの考えを伝える。


「聞いている話ですと、おかしな事を感じます。わざわざ魔王部屋の解除用特殊魔石を各ボスに持たせるなんて必要ないのでは?」


 ミンウが答える。


「そんなことはありませんよ。魔王が簡単に自分の部屋へ侵入されないよう鍵を掛けるのは当然のこと。そしてそれを取られないように強力なボスに渡しておくのも良くあることでしょう」


「話には聞いたかも知れませんが、勇者パーティの一つ、スカルブラッドが魔王の手伝いをしています」


「それが何か問題でも? これだけの人数が召喚されたのです。

 その中から裏切り者が出たとしても不思議ではありませんね。いや、むしろその方が自然だと私は考えます。

 それと安心して下さい。どんなパーティ構成かは知りませんが、私たちセイントナイトの敵ではありませんよ」


「自分もそう思います。セイントナイトの戦闘力はとても素晴らしい。

 でも、だからこそ正面からでは無く、裏をかくような卑怯な方法を使ってくることを頭に入れておくべきです」


「たとえどんな卑怯な手を使おうが、私たちは勝ちます。それが勇者というものでしょう」


「とにかく何が起きるか分かりませんから気をつけて下さい。

 それから、10階層毎に外へ出ることが出来るなら、面倒かも知れませんが、その度に一度外へ出てハンターギルドへ連絡して貰えませんか?

 今回のようにまた都市が襲われることがあるかも知れません。お互い連絡は密にした方が良いと思うのです」


「まぁ、それは仕方が無いか。都市防衛については任せたいところですが、確かにアウスレンダーの戦力では対処しきれないことがあるかも知れない。

 分かったそれは考慮しておきます」


「有り難うございます。最後に何か必要なものがあったら遠慮無く連絡して下さい。

 すぐにとは言えませんが、出来る限り対処したいと思います」


「必要なものなど無いと思うのですが、まあいいでしょう。その気持ちぐらいは受け取っておきます。

 ではそろそろ私も出発する。魔王討伐の吉報を待っていて下さい」


 そう言うと、ミンウは外へ出る。それから魔法を使って仲間の元へ転移していった。

 最後の方はそわそわしていたので、速くダンジョンアタックを再開したかったのだろう。


 それを不安そうに見送るあっきー。他の面々はもはや興味なしとばかりにそれぞれの行動を開始した。


 この作品はPBM-RPGです。

 リプレイでも通常の小説でもありません。

 物語はプレイヤーの手にゆだねられており、

 プレイヤーの意思決定により変化し進められていきます。


 参加プレイヤーは「あっきー」「風巻豹」「キリマン」「エビストウスケ」「貴音大雅」以上5名となります。

 その他の人物や事象はマスターである私が一元的に管理しています。


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