48:キリルさんとの内緒話。
「あぁビックリした。一度見ているハズだけどさ、やっぱり突然迫ってこられたら怖いね……」
「すみませんすみませんすみません」
〔あぎゃぁぁ〕
ラプトルさんも長い首をもたげて謝罪中。
その頭をキリルさんはぽんぽんっと優しく叩いてくれた。
ラプトルさん、可愛いんだけど見た目はしっかりとした恐竜なんだよね。
それがドドドドドドって走ってきたら――うん、怖いかも。
でも――。
〔ぐぅくるるぅ〕
撫でられて嬉しそうに喉を鳴らしているラプトルさんは、やっぱり可愛い!
「むぎゅ〜」
〔あんぎゃぁ〕
「どうしたの、ミントちゃん?」
「ラプトルさんが可愛いんです〜」
「あー……そうなんだ」
可愛い可愛い。
ぎゅ〜っとして困ってるラプトルさんも可愛い♪
「主の病気故、お気になさらずに」
「あー、うん。君はミントちゃんの――」
「はっ。拙者、チョコ・ミント殿に仕える忍でござる」
「はぁー……」
無事にキリルさんを見つけることに成功した私たちは、楓ちゃんの武器作りの依頼をすることにした。
場所を変え、落ち着ける場所へと移動。
そこで楓ちゃんの希望をキリルさんに伝える。
「忍刀のようなものがあれば嬉しいでござる!」
「いや、剣系の武器のジャンルは短剣・片手剣・両手剣だから」
「やっぱり……そうでござるよね……」
「まぁ完成した武器を、ミントちゃんの錬成で形を変えて貰えば?」
「その手がござった!」
え? え?
に、にんとう?
楓ちゃんとキリルさんがお話している間に、私は急いでにんとうを検索。
あ、忍者が持ってる刀のことなんだね。
見た目は刀みたいだけど、ちょっと短い?
あと紐が付いてる?
「でも忍者刀っぽく錬成してもらうなら、武器は片手剣じゃないとダメじゃないかな?」
「え? そうなんでござるか?」
「うん。だってね、錬成って物量は変えられないから。えぇっと、つまりね――」
キリルさんが楓ちゃんに説明をする。
つまり、物の大きさそのものは変えられないとうこと。
ピンポン玉サイズの物を、バレーボールサイズの物に作り替えることは出来ないの。
もちろん、中を空洞にしてしまえば出来るけど。それを剣でやっちゃうと、ポキって折れそう。
わかりやすいキリルさんの説明で楓ちゃんも納得してくれたらしい。
「まぁ短剣の物量ギリギリ上限で作れば、忍者刀としてはちょっと小ぶり――ぐらいにはなるかも?」
「おぉ! それでいいでござる。まぁ拙者がそもそも小柄でござるから」
その楓ちゃんより小さい私って……うぅ。
こうして楓ちゃんの武器製造依頼が実現したわけだけども、問題はここからだったんです!
楓ちゃんは……ううん、私たちは、あんまりお金を持っていませんでした!
どーんっ!
「素材も無いのか〜」
「うぅ。そ、素材を教えて頂けたら、今からでも走って取りに行くでござるよ」
「うん、それでもいいんだけど。そうなると素材が集まる頃にはね、レベルか17か18になってると思うよ」
「がーんっ!!」
そうなると、16武器を作るより次の20武器を作って、今の武器をそれまで我慢して使っている方がいいとキリルさんは言う。
でも今現在の武器がレベル10の物だと話す楓ちゃん。
「店売りのヤツだね。確かにそれで20までは辛いなぁ。せめて12の製造武器ならよかったけど」
「でござるよね」
「じゃあ、12の製造武器ならいくらですか?」
「う〜ん……物は相談なんだけどさ」
そう言ってキリルさんは切り出す。
楓ちゃん用の16武器を、タダで作ってあげるって。
その代わり――。
「ここからは人に聞かれたくないからチャットで。あ、チャットの使い方は――」
「知ってますっ。え、人に聞かれるといけないことなんですか?」
「あ、主にいかがわしいチャットの申請でござるか!?」
〔あっぎゃーっ〕
「いやいやいやいや、待って。お願い逮捕しないで」
【キリル:という訳で、俺がデザインしたものをブログにアップするからさ】
【チョコ・ミント:はい。そのアドレスから画像を見て】
【チョコ・ミント:それを型紙錬成すればいいんですね?】
【キリル:そうそう。お願いできる?】
【キリル:これならもっとデザインにも個性が出せると思うんだ】
絵心もあるというキリルさんは、自分で装備デザインをして、その型紙となる絵も描き、その絵を自分のブログにアップロード。
もちろん非公開で。
そのアドレスをゲーム内で私が聞いて、それを見ながら型紙を錬成。
上手く出来ればキリルさんの思い描いた物が、ゲーム内で作れるようにもなるってこと。
【キリル:これはアルケミストとの協力があってこそだけど】
【キリル:出来ればまだ他の生産者に知られたくないんだ】
【キリル:俺だけのオリジナル手法としてね】
キリルさんブランドですね!
うん、とってもワクワクする方法だと思います。
【キリル:まぁいつかこの方法を見つける人が出るだろうけどね】
【チョコ・ミント:そうなったらアルケミストさんに依頼殺到ですね!】
【キリル:まぁ一応プレイヤーのセンスも問われるからねぇ】
イメージ力が大事なのはわかるけど、そんなに難しいのかなぁ。
「あのー……沈黙が長くて辛いでござる」
【チョコ・ミント:あぁぁぁごめんなさい楓ちゃん】
「うん。ミントちゃんがね、あぁぁぁごめんなさい楓ちゃんってチャットで言ってるよ」
「聞こえないでござる」
【チョコ・ミント:チャットオフにするの忘れてたーっ】
「うん。口で喋ればいいだけだからねミントちゃん」
「ほえぇぇ、ごめんなさい〜」
こ、 こうして無事、楓ちゃんのレベル16武器をタダで作って貰えることになりました!
工房に行って。出来上がった短剣は、短剣と呼ぶには少しごついかなぁ。
これを私がにんとうに錬成し直すんだけど……。
「物量が多くて紐が付けられな〜い」
「忍者刀だとさ、鍔が無いデザインもあるじゃん?」
「つば?」
「ここ」
キリルさんが指差したのは、短剣の握る所と刃の境目にある部分。
装飾が施されててちょっと綺麗。
ネットで検索すると、確かににんとうだと鍔っていうのがあるのと無いのとあるの。
それに西洋武器と比べると、刀って鍔が全体的に小さい。
「その分の鉄を取り除いて、代わりに紐を付けてみたら? ちょっとイメージ力必要だけど」
「はい! じゃあまずは紐から――楓ちゃん、何色の紐が良い?」
「え……く、紅で」
「赤ね」
物量1の赤い紐を工房の素材屋さんから購入。
錬成して網紐みたいに作り替えま〜っす。
「レッツ『錬成』♪――出来たぁ」
「おおぉぉぉぉ! あ、主殿、お見事でござる」
「うん。和風っぽくていいね〜」
で、これとキリルさんの短剣を錬成陣に乗せ――。
「レッツ『錬成』♪」
物量1分の鉄――でてこ〜い。
そして赤い紐と短剣を――刃は真っ直ぐ反りのない日本刀風に。
持ち手の所の編んだ紐がどうなってるのかわからないから、ここは無しで!
代わりにお尻のところに赤い紐を――。
短剣の鍔にあった赤い石と青い石は刃のところにお星さまみたいにちりばめて〜。
「完成〜っ!」
「お……おぉ。忍者刀にしては、ちょっと乙女チックな……」
「えへへ。楓ちゃん、ごめんね。持ち手の部分、どうなってるかわからないから普通にしちゃった。あとね、鍔にあった色付の石が可愛かったから、せっかくだし飾っちゃった」
楓ちゃんににんとうを差し出すと、彼女はぷるぷる震えながらそれを受け取る。
き、気に入ってくれるかなぁ?
「あ、主……殿」
「か、楓ちゃん? も、もしダメならもう一度頑張るっ。あと四回なら錬成できるから!」
がばっと顔を上げた楓ちゃんは、私の手を掴み――。
「楓、いっっっっっっしょう、主殿にお仕えいたしまする!!」
――と叫んだ。




