45:私、前転!?
受けたクエストはモンスター討伐物。
草原ウルフっていう、どこからどう見ても狼さんにしか見えないモンスターを二十匹倒してねっていう。
「さぁ、主どの、行くでござるよ!」
「う、うん」
草原ウルフを前にして、楓ちゃんは細いナイフみたいなのを数本手にして構える。
構えて――動かない?
「あ、主どの、行くでござるよ?」
「う、うん。……えぇ!? わ、私が行くの??」
こくこくと頷く楓ちゃんは、私が――ううん、アルケミストの戦い方がわからないから、お先にどうぞという意味だったらしい。
あと、投げナイフスタイルだからとも。
ほえぇ。ナイフ投げるのかぁ。
「本当は手裏剣を投げたいのでござるが、どこにも売ってないでござるから」
「な、なるほど。それで代わりにナイフなんだね」
「でござる。このナイフは投げ専門の武器でござって、まぁ矢と同じような扱いなのでござるよ」
接近用としても使えるけど、その場合の攻撃力と、投げとして使った場合の攻撃力とが別々に用意されてるってこと。
うぅん、扱うのが難しそう。
「でもちゃんと、接近戦用の武器もあるでござるよ」
と言って短剣を見せてくれた。
こっちは普通の短剣みたい。
で――。
「苦無がよかったのでござるが、やっぱり売ってなくって」
「あ、あははは。に、忍者ってまだ作られてない職業なんでしょ? じゃあ仕方ないのかなぁ」
「ぐぬぬぅ。無念でござる」
手裏剣に苦無かぁ……あ。
作れるじゃない!
私が投げ専用ナイフを手裏剣の形に錬成してあげればいいんだ!
同じように短剣も――。
「楓ちゃんの武器、貸して!」
「え? 装備するでござるか?」
「ううん。錬成してあげる♪」
まずはナイフを受け取り……えぇっと、手裏剣のイメージを固めなきゃ。
ネットを開いて手裏剣を検索っと。
「ね、楓ちゃん。どんな手裏剣が良い?」
「え……えぇっと、四方のこれでござるかなぁ。一番オーソドックスなタイプでござる」
「折り紙で作る手裏剣に似た形のだね。よぉし!」
これは一度に錬成せずに、ひとつずつ確実にやっていこう。
ナイフの数は十本。
多いなぁ。
「投げ専用って、こんなにたくさんナイフがいるの?」
「投げるってことは消耗品でござる。ただ矢と違って、回収は可能でござるよ。その代わり、投げれる回数に上限が設定されているでござるが」
「ほえぇぇっ。拾いに行かなきゃいけないの〜っ。うぅん、大変そう」
話をしつつ、錬成陣用紙を地面に敷き、その上にナイフを置く。
イメージして〜――。
「レッツ『錬成』!」
パァっと錬成陣が光り、ナイフから手裏剣に造形が変わった!
手裏剣は黒いイメージだけど、ナイフは全面シルバーだったせいで、錬成した手裏剣もシルバー。
錬成だと色の変更はできないから、こうなっちゃうのは仕方ないよね。
「楓ちゃん、出来――」
「しゅーりーけーんーでー……ござるううぅぅぅっ!」
「ほえぇぇっ!?」
完成した手裏剣と私の手をガシっと掴み、楓ちゃんが涙目で叫ぶ。
そ、そんなに喜んで貰えて、錬成した甲斐がある……よ。うん。
残りのナイフも全部手裏剣に。
そして次は苦無。
またネットで検索して、それから錬成。
完成したのは、持ち手の部分が青く、刃の部分がシルバーの苦無。
「検索した苦無は真っ黒だったけど、元の短剣がこんな色だったから……ごめんね」
「全っ然問題ないよ! ステキ、可愛い♪」
あ、素の楓ちゃんが出てる。
自分でも気づいたのか、慌てて「ござる」と付け足した。
ふふふ。おっちょこちょいだな〜。
装いも新たに、いざ戦闘開始!
「ニンニン」
そう言いながら楓ちゃんが手裏剣を投げる。
手裏剣が刺さった草原ウルフが怒って走って来た。
「えぇ〜い!」
楓ちゃんと所にウルフが到着する前に、私がリボンでぐるぐる巻きぃ。
そこに――今はレベル上げを優先させてあげるワンワン王くんとクミさんが攻撃を開始。
あっという間に討伐成功♪
「おぉ、主どのの武器はそうやって使うのでござるか。拙者、てっきり鞭のように敵をしばきあげて攻撃するのかとばかり思ってたでござる」
「あ、うん。それも出来るんだけどね。武器の攻撃力が弱すぎて、ダメージが……」
だったら、モンスターが反撃できないようにぐるぐる巻きにして、みんなが安心して攻撃できる状況にしたほうがいいかなぁと思って。
と話すと楓ちゃん、
「主どのは、なんて優しいお方でござるか〜」
と、妙に感動していた。
優しいっていうか、私にはこれぐらいしか出来ないんだもん。
あ、他にも出来る事あった。
「こんなのも出来るんだよぉ〜。レッツ『錬成』!」
落ちてる小石を錬成して、ラバークラブに!
それをウルフに投げてダメージを与える。
「ね?」
「おぉぉ、錬金術にそういう使い方があったとは」
「そうかなぁ。錬金術って、そもそもこういう使い方なんじゃないかなぁ」
錬金術師を題材にした、昔のアニメのリメイク作品を見たことあるんだけど、まさにそんな使い方だったんだけど。
そう思った瞬間――どんっという衝撃と共に、私は地面をごろごろ転がった。
「ほえぇぇぇっ。草原ウルフのこと、忘れてたぁ〜」




