44:私、冒険者ギルドに行きました!
「なんだぁ。服部さんは忍者志望だったんだねぇ」
「ござる」
忍者かぁ……ん?
職業選択の中に、忍者ってあったかなぁ。
うぅーん……戦士、でしょ? 盗賊、でしょ?
弓使いに神官、魔法使い、魔物使い、武闘家、錬金術師……ぐらいじゃなかったかなぁ。
「主殿、もしかして拙者の職業で悩んでいるでござるか?」
「え、あ……うん。忍者ってあったかなぁって」
「ふふふ。今は未実装でござるよ。いや実装済みかもしれないでござるが」
???
ほえぇぇ、未実装だけど実装?
ほえぇぇっ。
「あわわわ。よ、余計に混乱させたでござるな。こ、このゲームはある程度レベルが上がると、上位職に転職出来るというシステムがあるでござる」
「ほ、ほえぇ」
「公式サイトの職業紹介ページを見たでござるか?」
「う、うん」
そのページには私が知ってる職業の紹介がちょっとずつされてて、錬金術師と魔物使いのどちらを選ぶか、ずっと眺めながら悩んだもん。
もう少し詳しく書いてて欲しかったなぁ。ホムさんの事とか。
「で、ページの一番下に、今後実装される上位職であろうキャライラストのシルエットだけがあったでござる。覚えてるでござるか?」
うぅん、あったような?
でも黒塗りされたシルエットだったから、私にはどんな職業なのか見当もつかなかったし。
「ふふふ。そこにあったのでござるよ」
「忍者?」
「そうでござる!! 背負った刀を今まさに引き抜こうとするポーズ。更にもう片方の手は印を! あれは絶対に忍者でござるっ!!」
「おぉぉ。忍者っぽ〜い」
「でしょでしょ〜。だから私、この――っこほん。だから拙者、このゲームを始めたでござるよ」
今一瞬、素の服部さんが出たみたい。
服部さんっていうより、楓ちゃんって感じ?
「え、えっと、服部さん。楓ちゃんって、呼んでもいいかな?」
「か、楓ちゃんでござるか……」
「私の事もミントかチョコ……チョコは呼びにくいか、うん。ミントって呼んで」
「お断りするでござる」
「ほえぇぇっ!?」
名前で呼んで貰えない……うぅ、仕方ないか。だって私たち、出会ってまだ数十分だし。
「主君の名を呼び捨てになど、拙者には出来ぬでござるよ!」
「ほええぇぇぇぇっ。そこっ。そこなのぉーっ!?」
「主殿、足元に気を付けるでござるよ」
「あ、あぃ」
「ぬ! 主殿を見つめる、不審人物どもの視線が――成敗っ」
「ふえぇぇっ」
短剣を逆手に持って、どこかの誰かに飛びかかろうとする楓ちゃんを抑えるの大変……。
足元に石が落ちていれば「罠でござる!」と言って辺りをキョロキョロ。
たまたま私と視線が合った男の人が居れば、不審者変質者と言って武器を構える。
その度に私は楓ちゃんにしがみ付いて止める私。
で、道行く人の注目の的に。
ファーネの町からファネスに移動した私たちは、とりあえず何をするわけでもなく町をうろうろ。
「か、楓ちゃん。あの、その……主殿っていうのは、恥ずかしいんだけど」
「気にしないでござるよ。ささ、主殿。何をするでござるか? レベル上げ? クエスト?」
「え、えっと。じ、じゃあ……クエスト?」
「承知!」
元気よく返事すると、楓ちゃんはすたすたと歩き出す。
どこに行くんだろう?
ついていくと、大きな建物の前にやってきた。
ほえぇ、人がたくさん。
「ここって、なに?」
「え!? あ、主殿は冒険者ギルドを知らないでござるか?」
「ほえ?」
「冒険者ギルドというのは、職業限定ではない、誰でも受けられるクエストが受けられる場所でござる」
「そ、そうなんだ」
「そうでござる。他にも仲間を探したり見つけたりすることも出来るそうでござるよ」
そういいながら楓ちゃんは建物の中に入っていく。
中に入ると壁にかかった掲示板の前に行くと、そこに張り出された紙を凝視。
「何か探してるの?」
「拙者たちで受けられるクエストを探しているでござるよ。あ、主殿、レベルはいくつでござるか?」
「え? 私は……13」
「拙者は15でござるから、そんなに差が無いでござるね。ならこれを受けるでござる」
紙を一枚剥ぎ取った楓ちゃんから、パーティー要請が飛んでくる。
「さぁ、行くでござるよ主どの」
「う、うん」




