41:私、踊ります!
ダチョウさんに乗って急いで橋のある場所までやってきた私たち。
はい。一人じゃ絶対迷子になるから、協会の二階に居た人たちに案内して貰いました。
「お、やってるやってる」
「頑張れ〜。君たちの活躍が、俺たちの未来に掛かってるぞ〜」
騎乗用ペットで一緒に来たのは二十人ぐらいの人たち。
近くまでやってくるとペットから降りて、観戦モードに。
ヴェルさんが急いで来てって言ってたけど、なんだろう?
「ヴェルさぁ〜ん」
あまり近づくと、番人の範囲攻撃に巻き込まれるってことなので、少し離れた位置で声を掛けた。
範囲攻撃って……猪突猛進なのかな……。
「ミントちゃん! ポーションお願いっ」
「錬成のため!?」
呼び出されたのはポーションが足りなくなったから――と。
うん。だって番人戦のあとすぐ協会に行って、そのままログアウトしちゃったんだもんね。
正式サービスが始まって、そのままの流れてここに戻ってきたって事なら、ポーションが足りなくなってても仕方ないか。
幸い私の手持ちポーションが残っているので、それを――。
「ポ、ポーションどうすればいいですか?」
「その辺に置いてっ。こっちから取りに行くから。あ、お金は後払いでお願い。ほんっと、ごめんねぇ」
「いえ、いいんです。私のせいでヴェルさん、向こうに渡れなかったんだし」
少しだけ近づいて、ポーションをニ十本ぐらい地面に置く。
「あの、MPの回復ポーションはありますか?」
「ほえ? え、えむぴー……えぇっと……材料が分からない……です」
ヴェルさんとパーティーを組んでいるらしい、杖を持ったお姉さんはMP回復ポーションが欲しいみたい。
でもポーションといえばHPポーションしか錬成したことないし。
「あぁ、材料はね『魔草』っていう草だよ。一枚あればMPを30回復するポーションが作れる」
「俺、三枚なら持ってるぜ。使うかい? ミントちゃん」
「ほえぇっ。い、いいんですか?」
観戦モードの人たちが魔草を提供してくれて、あれよあれよという間に二十五枚集まりました〜。
「草を二枚使えば、回復量65になってお得なんだけど。使用するにはレベル16以上ないとダメなんだよな」
「わ、私16ですっ」
「俺15だから無理だ」
うぅん。
じゃあ草二枚のポーションを七本、一枚ポーションを十一本錬成しよう。
「ってことで、レッツ『錬成』!」
草の枚数が違うのでそれぞれ別々に錬成し、完成品はさっきと同じように地面に分けて置いておく。
杖を持ったお姉さんとお兄さんがそれぞれポーションを拾って、一本ずつ蓋を開けてMPを回復する。
「はぁ、これでなんとか倒せるかも」
「ギリギリだったねぇ。ありがとうケミ子ちゃん」
ケミ子ちゃん? って、誰だろう。
辺りを見渡しても、ケミ子ちゃんは居ないみたい。
すると、近くにいた観戦中のお姉さんがにっこり笑って教えてくれた。
「アルケミストの事を略してケミっていう人もいるのよ。相手が女の子だったら、ケミ子ってね」
「ほえぇ、そうだったんですか〜」
アルケミっていうのは聞いた事あったけど、ケミってのは初めてだぁ。
観客席には段々と人が増えてきて、みんなで番人討伐パーティーの応援が始まった。
私も応援しようっと――そうだ!
「私、応援します!」
スキルで応援したら、きっとお手伝いできるよね。
ついでだし、モルさんにも出てきて貰って――。
「モルさん、行くよ!」
〔もる?〕
ワンツー、ターン。
くるっと回ってパンっと手を叩く。
応援ダンスの一連の動作は、だいたい三十秒ぐらいしかない。
踊って踊って……さすがに目が回って来たその時――。
【『草原のファネス01』エリア番人が討伐されました】
【これより三十分間、『草原のファネス02』エリアへの道が解放されます】
遂に番人が倒れた!
「やったぁ〜。ヴェルさん、みなさん、おめでとうございます〜」
「ありがとう、ミントちゃん」
「ポーションさんきゅー。おかげでMPもギリギリもった」
ヴェルさんたちを祝福する声はあちこりから聞こえる。
と同時に、急いで橋を渡る人たちも。
「討伐メンバーより先に渡ろうとするとは……ったく、私たちも行こう」
ヴェルさんの掛け声でみんなが移動を開始。
私も一緒について行く。
それにしても……この橋、凄く高い――っていうのかな。
だって橋の下は空なんだもん。高いってレベルじゃないよね。
これ、高所恐怖症の人だったらどうするんだろう?
渡れるのかなぁ。
ほんの少し風に揺れる橋は、先が見えなくて次の浮島もやっぱり見えない。
どのくらいの長さがあるんだろう。
そんな事を思っていたら、突然景色が一変した。
見えなかった対岸が突然見えるようになったの!?
え、え、えぇぇっ。
「は、橋って、十メートルぐらいしかまだ渡ってませんよね?」
「うん。二十メートルぐらいだと思うよ」
前を歩くヴェルさんが、特に驚いた様子もなくサラっと言う。
「対岸が見えないのは、たんなる演出なんだよ」
「そ、そうなんですかぁ」
遂に新しい浮島へと到着した私たち。
ヴェルさんたち番人討伐パーティーもここで解散するらしい。
「じゃ、私は急いで町に行って、先に上陸した連中に先を越されないよう、レベリングしに行くよ」
「はい、いってらっしゃいヴェルさん」
「ミントちゃん、あの町に行くんだよ。町に入らないと、セーブされないからね」
「はい!」
その事はさっきアルケミスト協会で聞いたので大丈夫。
橋を渡った場所からも町は見えるし、さすがに見えてる場所にたどり着けないほど、重度の方向音痴じゃないもん。
ダチョウさんでダッシュすればすぐだね。
「じゃあ――あぁ、ミントちゃん」
ホワイトタイガーさんに跨って走ろうとしたヴェルさんは、手綱を引いて振り返った。
にっこりと笑うヴェルさんは、やっぱりイケメンお姉さんだなぁ。
「応援、ありがとう」
「い、いえ。あれぐらいしか私には出来ないし。少しでもお役に立てたら――」
「うん、残念だけどあのスキルね。パーティーメンバーにしか効果がないんだよ」
「ほえ?」
「だから、同じパーティーに入ってる人にしか、応援の効果が付かないの。だから……うん、まぁ可愛かったし、観客の受けも良かったからいいんじゃないかな。うん」
ほえ……。
「ほえぇぇぇぇぇぇぇっ!?」




