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40/50

40:私、勘違いしたみたいです!

 正式サービス開始時刻の午後三時。

 パソコンデスク前に置いた、VR専用リクライニングチェアに座ってゴーグルみたいなのを被る。


「うぅん。ゴーグルと椅子がセットだけど、もう少しコンパクトだったらいいのになぁ。少し前まではベッドに寝ながら遊べたらしいんだけど」


 最近は椅子に座って、人差し指にはキャップみたいなのを被せてプレイするようになってるんだよね。

 このキャップで脈拍とか計ってるみたい。

 プレイする人の健康状態をチェックしつつ、安全に遊べるようにって。

 でも、その為にマッサージチェアみたいな大きさの椅子を部屋に置かなきゃいけないんだもん。

 大きいよぉ。


「あ、この脈拍測るキャップがあったから、昨日はGMさんが飛んできたのかなぁ」


 感情がどうのって言ってたし。

 試しにキャップを外してログインしようとしても、電源すら入らない仕組み。

 ほえぇぇ、良く出来てるなぁ。


 リクライニングチェアにゆったりと座り、ゴーグルを付けて電源をポチっと。

 あ、あれ?


【ただいまサーバーが混雑しております。暫くしてから再度ログインしてください】


 ――だって。


 一分ぐらいしてログインしてもまた同じ。

 もう一分後に……もう一分後……。


 結局、ログインできたのはサーバーオープンして三十分以上経ってから。


「うわぁぁっ。ど、どうしてこんなに人がたくさん!?」


 昨日、ログアウトをしたのはアルケミスト協会の二階。

 だからログインも同じ場所になるんだけど……。

 オープンベータテスト中はいつ来ても閑散としていた協会に、今は何人いるんだろう? 中学でのクラスメイトは三十二人ぐらいなんだけど、それよりずっと多い。

 ここ、広さはコンビニぐらいの大きさしかないし、こんなに人がいたらすっごく狭く感じるんだけどぉ。


「お、ミントちゃんご登場だぞ!」

「おぉ。ミントちゃんだ」

「ミントちゃん、こんー」

「ほ、ほぇぇっ。こ、こんにちは」


 し、知らない人たちが、私の名前を知ってる!?


「ミントちゃん。ヴェルって人から言伝」

「え、ヴェルさんから?」


 ほえぇっ。この人、ヴェルさんの事も知ってる!?


「即席で番人討伐パーティー結成したから、倒してくる。だってさ」

「さっき出発したばかりだし、追いかければ間に合うかも?」


 そっかぁ。ヴェルさん、パーティー見つけて再チャレンジしに行ったんだ。

 私のせいで、昨日は橋を渡れなかったし……はぁ、やっぱり私がパーティーに参加すると、迷惑かけちゃうなぁ。


「どうする? 追いかけるかい?」

「あ、いえ。私はまだレベルも低いですし、こっちの浮島で頑張ります」

「そっか。でも番人が倒されたら、向こうの浮島に移動して町に入ってセーブだけするのをお勧めするよ」

「セーブ?」


 集まった何人かのお兄さんお姉さんたち。

 中にはクローズドベータっていう、ヴェルさんもやってたテスト期間をプレイしていた人もいて、いろいろ教えてくれた。


 浮島には町のあるタイプと無いタイプとがある。これは公式サイトにも、ゲームの特徴ページに書いてあった。

 大きな浮島になると、町や村が同時に存在する事もあるって。


「逆に町や村の無い浮島もあるみたいだけどね。プレイヤーの活動拠点となる町や村だけど、そのうち町の方はセーブ地点にもなってるんだ」

「戦闘不能になった時の死に戻り地点って意味でもあるけど、セーブされた町だと転送装置が使えるようになるから」

「ほ、ほえ……」

「うん、えぇっとね……」


 町には転送装置という物があって、お金を払うと自由に町と町を行き来できるんだって。

 でも装置を使って行くことが出来るのは、一度でも行った事のある町という条件付き。


「次の浮島にも小さいけど町があるんだ。橋を渡ると目視できる距離だからね。とりあえず行って、セーブだけしてこっちに戻って来るってプレイヤーも多いよ」

「初期浮島で活動するにしても、セーブだけしておけば面倒な移動も短縮できるぜ」

「かくいう私たちも、まだレベル的に向こうで活動できるほどじゃないけど――」

「番人討伐アナウンスが流れれば、騎乗ペット走らせて行くつもりだ」

「ほえぇぇ。なるほどぉ」


 確かに。

 隣の浮島に移動するためには橋を渡るしかないけど、その前に番人が待ち構えている。

 私一人じゃあ倒せないし、そうなると誰かが倒してくれた後の、次に番人が出てくる前に渡ってしわまないといけないのかぁ。

 うん。私もダチョウさんで向かおう。


「そんな事よりさ。よかったね、ミントちゃん」

「ほえ?」

「そうそう。よかったわねぇ。ホムさん、不死になって」

「ほ、ほえぇ!?」


 ホ、ホムさんが不死?

 不死って、ゾンビや骨さんみたいなモンスターの事でしょ?

 ネットでそういうの見て、覚えてるんだもん。


 え、じゃあホムさんって……死んでる事になるの!?


「ん? なんかミントちゃんの表情が暗いね」

「どうしたの? 嬉しくないの?」


 だって……だってラプトルさんの再錬成に成功したのに、死んじゃってるなんてぇ。

 うぅ、うぅ……。


「え、ちょ? な、泣く? 泣くの?」

「もしかしてミントちゃん、不死の意味間違えてるんじゃ?」

「あ、あぁぁっ。もしかしてアンデットの不死と同じ意味だと思ってる? ち、違うからね。その不死じゃないからね!」

「ふぇ、え? ち、違うんですか?」

「「やっぱりっ」」


 ほえぇっ。

 お兄さんお姉さんたちが大合唱し、何故かみなさん、大きな溜息をついたりしている。

 わ、私、何かやらかしちゃったの?


「ごめんねミントちゃん。私が言葉足らずだったわ。不死っていうのはね、うぅん、そうね。私たちプレイヤーもある意味不死なのよ」

「ほえぇっ! ゾ、ゾンビだったんですか?」

「っぷ。ち、違うから。最後まで聞いてね」


 はぅ。笑われてしまった。しかも他の人たちも笑ってるし。

 お姉さんが言う不死っていうのは、HPがゼロになっても戦闘不能であって、セーブポイントに戻るだけで現実の「死」とは別物。

 ゲームだから当たり前なんだけど、その当たり前がホムさんにも適用されたと。

 適用……え?


「じゃ、じゃあ、ホムさんもHPがゼロになったら、セーブポイントに戻っちゃうんですか!?」

「……面白い解釈する子ね」

「ほんと。そう来るとは思わなかったな」

「いやいや、ホム単独でセーブポイントには戻らないから。HPがゼロになったら、エンブリオだっけ? それに戻るようになるんだってさ」

「ほ、ほえぇっ。じゃあ、死なないって事ですか!?」


 みんなが頷く。

 死なない……ホムさんが死なない!!


「ただしね、戦闘不能にさせてしまったペナルティはあるから」

「ペナルティですか? 死なないってことなら、何でも甘んじて受けます!」

「リアルタイム二十四時間の間、再召喚不可だよ」


 ……二十四時間ホムさんを出せなくなる……うぅん。それは厳しい。

 私の経験値が減らされるとか、私のお金が――ううん、お金はダメ。お店屋さんが出来なくなるから。

 経験値! 経験値だったらよかったのに!


 でも、死ななくなったっていうのが本当なら、凄く嬉しい。

 あのゲームマスターさんの言った言葉――貴女が泣かなくて済むよう――って、この事だったのかな。

 だとしたら、お礼を言わなきゃ。

 でもどうやって?


「あ、あの。ゲームマスターさんにお礼を言いたい時って、どうすればいいですか?」

「え、ゲームマスターに? う、うぅん。そういうのした事ないから分からないわねぇ」

「お礼を言いたいからって呼び出すわけにもいかないし……」

「まぁ普通はお礼とかしないもんなぁ」


 そ、そうなのかぁ。

 でも、いつかまた出会える事があったら、その時しっかり伝えよう。

 ありがとうございますって。


 その時、ヴェルさんから急を要する知らせが入った。


【ヴェル:急いで橋まで来てぇー】

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