4:私、お着換えしました!
浮遊大陸ファンタジウム――
大小さまざまな浮島から成るここは、元は一つの大陸であった。
大昔、この地では人間同士による争いが絶えず行われていた。
嘆き悲しんだ神は、争いを止めるために大地を割り、そして何十もの浮島を造り上げた。
争うべき相手との間には空が広がり、一時は戦を止めた人間たちであったが――。
やがてそれぞれの浮島を結ぶ橋や階段を築き上げると、人間は浮島を一つの領土と捉えて自身の領地を広げるために再び争いが始まった。
再び嘆いた神は次に――。
薄暗いロビーからゲームへと移動が始まると、こんな字幕が視界に浮かび上がった。
これって公式サイトにもあった、世界観ページのアレだよね。
浮島は町とフィールドを兼ねたものから、町は無く、代わりにダンジョンのある島なんかもあって、一つ一つに適正レベルっていうのがあるんだったかな。
確か最初に飛ばされる浮島は、四カ所から自分で選ぶんじゃなかったかな。
あ、ほら選択肢が出た。
【1:緑豊かな森林フォセーリア】
【2:草原が広がるファネス】
【3:切り立った山々に囲まれたオア】
【4:荒れた大地、古代遺跡の眠るレアトア】
ここはやっぱり2のファネスでしょ。
TVゲームのRPGだって、森や山、荒れ地はモンスターが多いってのが普通だもん。
きっと難易度が低いはず!
だから【2:草原が広がるファネス】に触れてみる。
すると視界が広がり、何もなかったロビーとは打って変わってカラフルな色に包まれる。
草の緑。
赤、白、黄色の色とりどりのお花。
そして、空の青。
風を頬に感じると、草もお花も揺れ始める。
一年前に感じたあのワクワクが蘇る――と同時に「地雷かよ」と言われたあと、その意味を知った時の不安も……。
「はうぅ。思い出すのは止めよう。今回は他の人とパーティーを組まなくてもいい職業選んだんだし。っと、ひとまず町を目指せばいいんだよね」
町はすぐ目の前にあるから迷う事は無い。うん、大丈夫。
予想通り、モンスターの姿も見えないし、安全安全っと。
町まで二百メートルぐらい。
私以外にも町へ向かう人たちの姿が見えた。
他にも人が居て当たり前なんだけど、急に緊張してきちゃった。
私、変じゃないよね?
CGキャラっぽいグラフィックだからって、やっぱり美化され過ぎてないかなぁ。
そう思ってステータス画面を開いて自分の姿を再チェックする。
ううぅん、なんとも微妙な格好だなぁ。
今の私は半そでシャツにベストを羽織り、下はハーフパンツ。それに手袋とハーフブーツというスタイルだ。
腰には自家製リボンをぶら下げてるけど……こういうの、初心者用の装備っていうんだよね?
色もデザインも全然可愛くない。
これ、どうにかならないかなぁ。
「あ、そうだ。せっかくアルケミストになったんだし、自分で錬成しちゃったり出来るかも?」
ではさっそく行ってみよう♪
まず『錬成陣用紙』を取り出します。
あ、用紙は購入しなきゃダメなのか……と思ったら九枚持ってた。
さっきの試練で余った分なのね。
ありがとうナビゲーターさん!
で、次に素材を陣の中央に――。
「え、えぇっと、これ脱がなきゃダメなやつだよね……」
辺りはログインしてきたばかりの人たちがわらわら。
ど、どこか隠れられるところ――はうぅ、草原選んじゃったから、隠れられそうな場所がほとんど無いよぉ。
あ、あの辺の草むらにしゃがんでれば見えない、かも?
急いで走って行ってしゃがみ込み、シャツとベスト、それからハーフパンツを脱ぐ。
それからどんなデザインにするか想像してぇ〜。
うぅん、どうせなら可愛いのがいいよね。
現実では着れないような、ふわっふわなのとか♪
「うん、よし決まった!」
布地が足り無さそうなので、ゴブリンさんからゲットした布も追加しちゃおう。
ではまいりますっ。
「レッツ『錬成!』」
両手をダンっと突けば錬成陣が輝き、そして――
「出来たぁ〜。可愛いぃ〜♪」
紺色のハーフパンツを、紺色のふわっふわのフレアスカートにして、内側にはメッシュのペチコートも忘れていません!
ハーフパンツと同色だったシャツの袖をパフ仕様に。リボンも付けちゃった♪
で、白いベストは丈を長くして、裾を花びらのように。
うぅ〜、可愛いぃ。
よぉし、さっそく着るぞぉ♪
んっとこしょ……こう、しゃがんだまま服着るのって、難しい……。
あ、装備なんだから、メニュー画面から着れるんじゃ!
メニュー画面からアイテムボックスを開いて、錬成した服をぐいっと突っ込んでぇ〜。
アイテムボックスに表示された服をタップしてぇ〜。
「やったっ。着れたぁ〜♪」
ふふふぅ〜♪
ゲームってこういうの簡単に出来るからいいよ……ね……あれ?
思わず立ち上がった私と視線がバッチリ合ってる人が居る。
ま、まさか服を脱いでたの見られちゃった!?
「マジ魔女っ娘天使」
「ほえぇ〜っ。み、見られたぁ」
恥ずかしくて顔から火が出そうっ。
「ごめんなさぁ〜いっ」
とにかく私はその場から逃げ出したくて、走ったのでした。




