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35/50

35:私たち、番人を倒しました…でも

「レッツ『錬成』!」


 手持ちの材料で作れそうなリボンを錬成。

 正直、さっきまで使ってたのと比べると、あんまり頑丈そうではないけど……。


「30%、来るよ!」


 ヴェルさんの声が上がり、慌てて「えいやっ」ってリボンを投げる。

 まずは前足にリボンを絡めて、それから――えぇっと、棒ごと投げればいいんだよね?


〔ブッギャァアァァァッ〕


 どどどどっと走ってくる番人に向かってリボンをぽーんっと高く投げつける。

 そして見事にリボンが両前足に巻き付いた!?

 やったぁ♪


「でかした、ミントちゃん! はぁぁっ『紫電っ』」

〔おぉぉぉぉんっ〕


 ヴェルさんとワンワン王くんが攻撃を開始すると、ラプトルさんもなんとか必死に立ち上がろうと――。


「ちょっと、ラプトルさんダメだってぇ。エンブリオの中に戻りたくないのなら、せめてじっとしててっ。私が代わりに頑張るから」


 と言ったものの、武器が無い。

 せめてアルケミストにも攻撃スキルがあったらよかったのに。

 どうしてアルケミストには錬成スキルしか無いのぉ。

 錬成だけで何でも出来る訳じゃ……錬成……。


 ううん。錬成スキルしかないなら、錬成スキルで攻撃から防御まで、全部やっちゃえばいいのよ!


 出来るもん。


 だって、アルケミストなんだから!


 辺りを見渡し、手ごろな石を見つけたら錬成陣用紙の上に置く。


「レッツ『錬成』!」


 イメージしたのはラバークラブ――の石版!

 これなら使い慣れてるし、石なら投げて攻撃にも使えるもん。

 完成したラバークラブは物量1の、ほとんど実物と変わらない大きさ。

 ただし石。


 回転させ、弧を描くように投げると、狙った頭にヒット!

 ちゃんとダメージ出てる、よかったぁ。

 新体操辞めて暫く経ってるから、ほんと言うとちょっと自信なかったんだ。


「錬成を攻撃に!? アニメじゃないんだから、そんな使い方出来ないと思ってたけど」

「でもこれ、ゲームですよ。アニメと変わんないんじゃないですか?」

「ま、まぁ、そう言われるとそう……かも?」

「です♪」


 でも……。

 石一つでクラブ一本。

 もっと。もっと錬成しなきゃ!


 幸い石はたくさんからまとめて錬成して、どんどん投げちゃおう。

 あ、もしかしてこれ、応援しながら投げられるんじゃ?


『応援』ダンスの中には、何度も屈むシーンがある。そのタイミングでクラブを拾い、そして体勢を戻すときに投げる!


「ミントちゃん。器用な事するねぇ〜。よぉし、ワンころ、行くよ!」

〔おぉん!〕


 ヴェルさんとワンワン王くんが駆け出す。

 私はダンスしながらクラブを投げ続ける。

 一本もミスは許されない。一本も!


 あともう少し。

 番人のHPはほとんど黒くなって、残りほんの少しだけ赤いラインが残ってる。あれが全部黒くなれば――。

 手元のクラブが無くなっちゃったから、また錬成しなきゃ。

 まとめてやってる時間も無い。あともうちょっとなんだもん。

 錬成しては即投げ、また錬成しては即投げ――はぅっ残り錬成陣用紙が十枚に!

 お願い、なんとか足りて!


 残り九枚――八枚――七枚――六枚。

 ヴェルさんとワンワン王くん二人の攻撃もずっと続いてる。

 パーティー欄から分かる。ヴェルさんもスキルをずっと使い続けてて、MPが残り少なくなってるのが。


 残り五枚――四枚――お願い、早く倒れて!

 番人のHPバーは、私の目から見るともう真っ黒なのにっ。


 三枚――二枚――嘘、やだっ。

 これが最後!


「お願いっ『錬成』!」


 パンっと紙に添えられた両手に力を込め、今までの石の中じゃあ一番大きいやつをクラブに錬成。

 普通のラバークラブの五倍ぐらいの大きさになっちゃったけど、両手でえいやって投げれば!


「うぅぅぅぅえぇいやっ!」


 弧を描くことなく、真っすぐ番人に飛んで行ったストーンクラブ。

 番人の足に絡まっていたリボンを掠めて命中!

 その拍子にリボンが切れちゃったけど、大丈夫だよね?

 もう倒せてるよね?


 見上げた番人は未だに倒れないし、光になって消えようともしない。

 そればかりか、鼻息を荒げて私を見下ろしてるし。


「ミントちゃん、下がって!」


 ダメ。下がれない。

 下がればラプトルさんが居るんだもん。


「ミントちゃん!?」

「早く倒れてよぉっ。早く、早くっ!」


 両手で必死に番人を殴るけれど、非力な私だと1しかダメージを出せない。

 それでも殴り続けるんだもん。

 早く終わらせて、ラプトルさんには安心してエンブリオに戻って貰わなきゃ。


〔ブッゴオォォォォッ!〕


 前足がガシガシと地面に打ち付け、猪突猛進の動作に入った番人。

 早くっ、早く倒れてえぇっ!

 次の瞬間――

 拳を突き出す私の頭上を、小さな何かが飛び越えていった。


〔クァッ〕


 ダメ……行っちゃダメッ。

 見上げた私の視界に、番人の眉間に鋭い爪を立てるラプトルさんの姿が――。

 もがく番人。


「止めてっ。もう倒れてよぉっ」

〔あぎゃっ――〕


 短い悲鳴。

 宙を舞うラプトルさん。

 番人はその牙で宙を舞うラプトルさんを仕留めようとしている。


「止めてっ!」

「いい加減、死になっ!」


 私の拳が――ヴェルさんの蹴りが――。

 そのどちらが決定打になったのか分からないけれど、番人はようやく激しい音を立てて倒れた。


「ラプトルさんっ」


 地面に叩きつけられたラプトルさんの下に駆け付け抱き起こす。

 大丈夫だよね?


「ラプトルさん」


 どうして? 呼んだらすぐに返事してくれてたでしょ?


「ラプトルさん?」


 目を開けないの?


「ラプトルさん!?」


 どうして……どうして透明になっていくの!?


【『草原のファネス01』エリア番人が討伐されました】

【これより三十分間、『草原のファネス02』エリアへの道が解放されます】


「ねぇ、ほら。私たち頑張ったんだよ。頑張って番人倒せたんだよ。三十分以内に向こうのマップに行かなきゃ、また番人が出て来ちゃうんだよ。早く起きてよ、ラプトルさん。消えちゃダメだよ。ねぇ、ねぇっ」

「ミントちゃん……ごめん。私のせい。強引に誘った私のせいで……」

「ううん。そんな事ないです。だって、誘って貰えたの嬉しかったし。ラプトルさんだって嬉しかったはずだもん。ね、そうでしょ?」


 でも答えてくれない。

 薄くなって、光になって、そして空に舞い上がっていく。

 ダメ、行かないで。戻ってきて!


「ミントちゃん……行こう」


 嫌。


「今すぐ行かなきゃ!」

「嫌っ。ヴェルさん行ってください」

「私が行っても仕方ないんだよ。君が行かなきゃ!」


 どうして私が?


「ファネスの錬金術師協会に行って、ホムンクスル担当者の所に行くんだよ!」

「アルケミスト……協会?」

「そう。早く! 帰還押してっ」


 言うが早いか、ヴェルさんはすぅっと消えてしまった。

 アルケミスト協会でどうするの?

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