32:私、横っ飛び!
〔くぁっくぁ〕
ラプトルさんがどどどどっと駆け出し、頭を低くしてイノシシさんに突進していく。
イノシシの太い足にバッチリ決まったんだけど、残念ながら失神はしてくれなかったみたい。
でもそのダメージはさっきの私の『1』と比べると雲泥の差があった。
「すごぉいラプトルさん。ダメージ125も出てる!」
「うん。これなら行ける! はぁぁっ」
ヴェルさんも鉄扇でイノシシの足を猛攻撃してる。
あ、この鉄扇、錬成したヤツと違う物だ。
フリルは無いけど、蝶々柄で黒っぽい。
可愛いという印象ではなく、凄く綺麗でヴェルさんには似合ってる。
〔もるもるぅーっ〕
モルさんも頑張って突撃アタックです。
はい。失神してくれません。
そのモルさんの攻撃はダメージ35。
わ、私より強い……。
大人しく舞踏による応援に専念しよう。
そう思った時でした――。
「来るぞっ」
そう叫ぶヴェルさんの声が聞こえたかと思うと、イノシシさんが地面をドスドスと蹴り始めて……。
目が光ったっ!?
走ったぁーっ!?
〔もっ、ももるぅぅっ〕
「モルさあぁぁぁんっ」
モルさんに向かって一直線に走り出したイノシシさん。
小さい体で横っ飛びしたモルさんは、危機一髪で回避した。
っほ。よかった。
「まだ来るよ! 二往復するから、よく見てっ」
「ほえっ!?」
〔もるっ!?〕
急停止し振り向いたイノシシさんは、次にラプトルさんに向かって走り出した。
これをラプトルさんは余裕で回避。
うぅん、カッコいい。
更に急停止しくるりと振り返る。モルさんの方に向かって。
〔もるぁぁ!?〕
〔ブフォーッ〕
イノシシさんが走り出した瞬間、モルさんは必至に真横に向かって走り出します。
ヴェルさんが言った通りまっすぐ一直線にしか走らないので、横に逃げればなんとかなるみたい。
急停止したイノシシさん。
次に振り向いたのは――。
「ほえぇぇっ、こ、こっち来るうぅぅっ」
〔ブモォォーッ!〕
分かっててもやっぱり怖いいぃ。
逃げなきゃっ――。
「奴の進行方向に逃げるなぁぁぁっ」
「ほえぇぇぇっ」
追いかけられたら逃げる。それが人の心理ってものですからぁ。
でもヴェルさんの声ではっとなった私は慌てて横に――が間に合わず、ほんの少しだけイノシシさんとぶつかってしまう。
そのダメージときたら、今の私のHP700に対してまさかの500ダメージ!?
ど、どうしようっ。
「ポーション飲んで。次の突進に備えるんだっ」
「は、はいっ」
え、えぇっと。ポーション一本で回復量は50。じゃあ十本飲まなきゃ。
アイテムボックスからポーションを取り出し蓋を開くと、消えちゃった。
ほぇっ。
このゲームじゃ、蓋を開くだけで使った事になるのね。
ふぅビックリした。
すぐに二本目を――と思ったら【クールタイムで使用できません】というメッセージが。
ふえぇん。アイテムにまでそんなものがあるんですかぁぁっ。
ちょっと待ってから二本目を。またちょっと待ってから三本目。そして四本目――
はっ。次の突進攻撃まで――あとどのくらい?
「『鑑定』――えぇっと」
【ファネスの草原の番人:LV18】
HP:???? (92%)
HPはクエスチョンマークでいくつなのか分からない。でも後ろに括弧でパーセントは出てる。
って、あと2%減ったら猪突猛進だぁ!
七本目まで飲んだところで遂に番人のHPが90%になっちゃった。
「く――「来ますっ」」
私は慌ててみんなに聞こえるように声を張り上げた。
その瞬間。全員が番人の動きをじっと見つめる。
今度はちゃんと避けるんだ。じゃないとまたポーション飲むだけになって、みんなを応援できないもん!
最初の突進はヴェルさんに向かって走っていた。
ヴェルさんってば突進が来るタイミングで番人から離れて、逃げるための距離をちゃんと取ってるんだ。
凄い。
復路はラプトルさん。
足の速いラプトルさんは余裕で躱してる。
次の往路は――私!
横よ。横に躱すのっ。
ドドドドっと番人が駆け出したタイミングで横に走る!
どう?
「って、ついてきてるしぃーっ」
慌てて横っ飛びして地面に転がり、服がどろどろ。
でもギリギリで避けれました!
「逃げるタイミングが早かったんだよ。ほらモルさん、次、君の番だぞ」
〔もるうぅぅっ〕
復路はモルさんでしたか。続けて来られると死にそう。
なんとか被害者が出ることなく90%の突進は終わり。
よし、ポーション一本飲んで応援するぞ!




