3:私、初めて錬成しました!
「錬金術師のスキル『錬成』を使う際には『錬成陣』というものが描かれた紙が必要となります」
「おぉ。それっぽい」
「錬成陣は消耗品となっておりまして、ゲーム内のアルケミスト協会という施設で販売されております」
「う、売り物……」
「今回は無償でご用意いたしますので、何度失敗しても大丈夫ですから」
何度も失敗する事前提なんですね。
で、賢者の石でどうすればいいのか……。
「錬成の法則をまずご説明します」
「よろしくお願いします」
「全ての物には『物量』というのが設定されております。これは生産や錬成にのみ関連した数値になっておりますが――」
物量1の物から錬成できるのは、同じく物量1の物のみ。
物量2の物から錬成できるのは、同じく物量2の物を一つか、物量1の物を二つのどちらか。
「つまり、元の物量より多い物も少ない物も錬成できないってことですか?」
「その通りでございます。アイテムの物量は『鑑定』のアビリティを使うことで確認できます」
おぉ、お勧めアビリティの鑑定って、アルケミストにとっては必須みたいなものだったのね。
じゃあさっそく賢者の石を――
「あの、アビリティってどうやって使えばいいんですか?」
「まだ慣れていらっしゃらないうちは、システムメニューを開いた状態で鑑定したいアイテムを視界中央に置き、『鑑定』と発音する方法をお勧めします」
「分かりました。じゃあ……」
システムメニューの出し方はバッチリです!
これが出来ないといろいろ不便だもんねぇ。ここだけは公式サイトでじっくり見て覚えたんだもん。
これでも結構勉強したんだから。
他にも偶数レベルに上がった時に、新しいスキルが貰えるとか、そのスキルはそれまでに戦闘データに基づいた候補から選択できるとか。
って事で右の耳元に手を添えて――まるでイヤホンを手で押さえるような感じで――
「システムメニュー」
と声に出せばメニューが見えるようになる!
おぉ、すっごい。
半透明で向こう側も透けて見えるんだぁ。
で、賢者の石を持って視界の真ん中辺りまで持ち上げたらぁ――
「『鑑定』――はわっ、出てきたっ」
【賢者の石・大】:錬成専用素材
あらゆる物を生み出せる石。
間違っても不老不死の材料ではない。
物量:9999
物量9999……いまいち比較対象が無いから分からないや。
「あの、物量を比較できる物ってありますか?」
「所持品に先ほど行った戦闘用チュートリアルで獲得したドロップアイテムがございます」
「あ、ドロップあったんですね」
さっきのシステムメニューからアイテムボックスを選んで見てみると、ボロ布や木の枝がいくつか入ってた。
どちらも物量は1かぁ。
「ちなみに、鞭の物量は下限が5。布装備は上下腕足、全て合わせて48から83といったところです」
「ほえぇ〜……約百二十セット分……」
うわぁお、凄い物貰っちゃった。
使うの勿体ないよぉ、どうしよう。
「あのぉ、賢者の石を使って錬成しなきゃダメですか?」
「いえ、チュートリアルでドロップしたアイテムを使っての錬成でもよろしいですが……あれで武器を錬成できますか?」
布と木の枝……うぅ〜ん、これで武器かぁ。
私の武器だから、鞭だよねぇ。
鞭……じゃないかもだけど、アレなら作れそうかも。
「やってみますっ」
「ではアイテムボックスに『錬成陣用紙』を十枚送らせて頂きました。錬成用の素材を陣の中央に置き、両手を付いてイメージしてください」
「イメージ、ですか?」
「はい。どのような仕上がりかをイメージするのです。イメージが固まりましたら『錬成』と発音してください」
ほえぇ。
錬金術って、想像力も必要なのかぁ。
よぉっし。
アイテムボックスから取り出した『錬成陣用紙』を床に置き広げる。
紙の大きさは五十センチ×五十センチぐらいで思ったよりも大きい。
黒いインクで魔法陣が書かれていて、その中央に枝とボロい布を置いていく。
「鞭の物量って最低でも5でしたよね?」
「左様でございます。物量5分のアイテムをお乗せください」
じゃあ枝二本、布三枚にしよう。
で、紙に両手を付いて――イメージはバッチリ。
「『錬成っ』」
私の言葉と同時に魔法陣がカっと光り、その光の中で枝と布が合わさっていく。
光が収束して現れたのは、イメージ通りの物。
「……それは、鞭、でございますか?」
「え……えぇっと、リボン型の鞭……ってことで」
私にとって馴染みのある、新体操で使うアレ。
右手に掴み、くるくるとしてみるとなかなかいい具合に回ってくれる。
これが私の――
浮遊大陸『フロート コンティネント オンライン』での初めての錬成であり、私だけのオリジナル武器!
【リボンウィップ】
軽い布製の鞭で、殺傷能力は壊滅的なまでに低い。
物量:5
耐久度:50/50
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2話を投稿してから数十分ほど、サブタイトルを間違えておりまして。
3話に付けるはずだったタイトルを2話に付けてましたorz
明日からは暫く毎日更新(い、一日一話なんだからねっ)致します。
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