29:私、パワーストーンゲットです!
装備……だという花冠に防御力も攻撃力補正もない。
じゃあ、錬成でくっつけちゃったらいいのかな。
そこでアドバイスを貰うべく、さっきフレンド登録したお姉さんかお兄さんを探します。
えぇっと……アルケミスト協会に向かう途中で声を掛けられたんだから同じ道を歩いていけば――。
でも道はまだ覚えてないので、いつものようにナビ機能をONに。
あっ、見つけたぁ。
お兄さんの方――キリルお兄さんだけ居たぁ。
「あれ、チョコ・ミントちゃん。どうした?」
「あの、キリルお兄さん、お願いがあるんです」
「キ、キリル、お兄さん!?」
お兄さん、後ずさってビックリしています。
私、何か変な事言った? それとも……あ、錬成した新しい装備のデザインが変とか?
「チョコ・ミントちゃん。お兄さんってもう一回言って!」
そこ!?
そこなの!?
「……キリル……さん」
あ、落ち込んだ。
うぅ……これじゃあ進まないよぉ。
「あぁ、ゴメンゴメン。で、お願いって?」
「ほっ。あのですね、実はホムンクルスさんの装備を作ってあげたいんです」
「え? ホムの装備?」
首を傾げるキリルお兄さんに事情を説明すると、またまたビックリされてしまう。
そしてすぐに人気の少ない路地に連れていかれ、小声でこっそりと話すように言われてしまった。
「GMがうっかりリークしちゃったんだろうけど、今現在、ホム用装備なんてどこにも売ってないんだよ」
「ほえぇ」
鍛冶でも裁縫でも皮細工でも、装備関係の生産全てにおいて存在していない――とキリルさんは話す。
「いや待てよ。ホムンクルス用だから、アルケミストにしか作れないっていうオチもあるかもしれない」
「そうだとして、私が作った花冠に効果はなんにもなかったんです」
「うぅん……装備、と言っても服とかじゃないしなぁ。だとするとアクセサリーか」
「アクセサリー?」
アクセサリーはその名の通り、イヤリングやネックレス、リングといった物。
それを作るアビリティは『彫金』。
キリルさんもそのアビリティは持っているらしい。
「頭装備もあるけど、物量は平均して7あるんだ。チョコ・ミントちゃんが作ったのは?」
「3です。少ない、のかなぁ」
「少ないねぇ。生産で作るときには素材と、効果を付与させるためのパワーストーンを合成するんだけど……パワーストーンと錬成できるかもね」
彫金で使うメインとなる素材はやっぱり鉄だったり銀だったりの鉱石類。
その他にいろいろな効果を付与できるパワーストーンと合わせて、生産アビリティを発動させるんだって。
アクセサリーは必要な鉱石類が少ないとはいえ、だいたい5ぐらいは使ってしまうみたい。
なのでパワーストーンを二つぐらい使って製造する――と。
「でも花冠の時点で防御力が無いんだろ?」
「はい」
「アクセサリーはね、パワーストーン無しで製造しても、最低限の防御力はあるんだ。まぁレベル12のアクセで+5しかないけどね」
ゼロよりいいです!
でも、物量3で本当にパワーストーンと錬成再構築できるなら……。
「パワーストーンを四つ、錬成できるってことですかね?」
「わずかな防御力よりも、パワーストーンが増える方が断然いいと思うよ」
ごくりと喉を鳴らす私。
「店売りのパワーストーンもあるけど、やっぱりドロップ産のほうが補正が大きいね。でも試すぐらいなら店売りで十分だと思う」
「そうですね。花冠はいくらでも作れますし」
と言う事で、パワーストーンが売っているお店まで連れて行ってくれる事に。
キリルさんも気になるんだとか。
「ここが製造で使う消耗品を取り扱っているお店だよ。工房も兼ねていて、一階は鍛冶、二階が裁縫と皮細工。三階は彫金になってるよ」
「ほえぇぇぇぇっ」
アルケミスト協会が小さく見えてしまうぐらい大きな建物。
三階建ての体育館ぐらいかな。
消耗品関係は各種各階で売られているとキリルさんが教えてくれた。
パワーストーンはどの階にも売ってるけど、装備の種類によって使える使えないがあるから――と、三階のお店で購入する事を勧められた。
「ただねぇ、エレベーターもエスカレーターも無いから、三階まで上がるのが辛いんだよね」
「はわぁ。現代人故の弊害ですかねぇ」
「ははは。そうだね。日ごろからそういう便利なものに慣れ過ぎてるからね」
笑いながら三階への階段を上っていく。
うん、確かに……辛いです。
上りきったところで大きな溜息を吐き捨て、そして辺りを見渡す。
アルケミスト協会と違って、ここにはたくさんの人が居ますねぇ。
「少ないよねぇ。オアだと百人規模で、押し合い圧し合い製造しているっていうんだよ」
「ほえぇぇっ。ひゃ、ひゃくにん!? 私、ここも多いなぁって思ってたんですけど……。アルケミスト協会なんて、今まで見た同職の方は片手で数えられる程度しか見た事ないですし」
「あ……うん、そうだね。アルケミストは全体的に少ないからね……あ、ほらあそこだよ。あそこで買うんだ」
キリルさんが慌てたように三階の一角を指差す。
アルケミストが少ないって事、気にしてるのかなぁ。
教えて貰ったところにはカウンターがあり、屋台のような屋根もあってお店っぽくなってる。
建物の中にお店……ってのもちょっと変わってるけど、周りには数人のプレイヤーさんが集まっているのも見えた。
「カウンターに手をつければ売り物の一覧が出てくるからね」
「はい」
言われた通りカウンターに手をつけると、販売物の一覧が出てきた。
「これって雑貨屋さんでもそうなんですか?」
「ん? そうだよ。たまに初心者なんかは、NPCに直接声を掛けたりしてる人もいるけ……声、掛けてたんだ?」
「……ほえぇぇぇっ、恥ずかしいよぉ。誰かに見られてたら、どうしようっ」
「っぷ、ははははは。い、いいじゃん。大丈夫、可愛いなぁって生暖かく見守ってくれるさ」
うぐぅ。生暖かくなんて、余計に恥ずかしいんですけどぉ。
もう、サクっとお買い物済ませて、錬成するんだい。
ホムンクルスさん用だから――
『アタックストーン』『ディフェンスストーン』『ライフストーン』『マナストーン』というのを、それぞれ四個ずつ買ってみた。
一つ500Rと、エンブリオと同じ価格なんだねぇ。
「同じ種類のパワーストーンは使えないよ」
「え!? そ、そうなんですかっ」
「あちゃ。同じの買っちゃったか。まぁ何はともあれ、試してごらん」
うん。やってみるっきゃないよね。
じゃあ――。
「『コールホムンクルス』ラプトルさん、モルさんっ」
〔あぎゃぁ〕
〔もるるぅ〕
二匹を呼び出すと、近くで悲鳴が上がった。
直ぐにキリルさんが「ホムホム」と、周りの人に説明してくれて事なきを得る。
ううん。町中でホムさんを呼ぶのは控えたほうがよさそう。
まずはラプトルさんの花冠を借りて、錬成陣用紙に――。
「『アタックストーン』四つ、いってみます」
「うん」
レッツ錬成!
……。
……せっかく作った花冠が……枯れちゃった。
「錬成も製造と同じみたいだねぇ……あ……そ、そんな顔しないで、ね? つ、次は各種ちゃんと一個ずつで試そう。ね?」
「は〜いっ。ラプトルさんのはまた後で作り直すね♪」
〔あぎゃ〕
「……案外ポジティブだね」
正月三が日、更新予約しております。




