25:私、お友達増えました!
「生産アビリティで作る装備って、型紙通りのデザインしか作れないのよ」
「そそ。だからね、染色して色違い程度でしか個性を出せないんだ」
「でも鍛冶で作る鎧とかだと、染色すら出来ないものねぇ〜」
「ねぇ〜」
ほぇぇ。そうだったんだぁ。
お姉さんとお兄さんは生産の方を重点的にやりたいっていうプレイヤーさん。
二人は同じデザインでしか作れない生産装備を嘆いているみたい。
「ねぇお兄さん、裁縫持ってる?」
「持ってるよ」
「じゃあレベル5装備、今持ってる?」
「持ってる持ってる。なるほど、おしゃれシャツでいいかい?」
二人は頷きあい、そして同時に服を手に持って広げた。
襟元にリボンが着いた白いシャツで、半そでにそこだけ色の違うカフスリープ仕様。
お姉さんとお兄さんの取り出した服はデザインはまったく同じで、襟やリボン、それからカフスの所だけが色違いになっている。
「このぐらいしか変化させられないのよぉ」
「だからさ、オリジナリティを出すためにも錬成、して欲しいんだよ!」
でもそれって、私が錬成しちゃったら、私がデザインした装備になっちゃうんじゃ……。
「う……確かに」
「くっ。俺だけのデザイン装備とか、そういうのは無理なのか!?」
「でもまぁまったく同じデザインしか作れない生産ってのは、別にこのゲームに始まった事じゃないんだけどな」
落ち込む二人を見て、なんとかしてあげたいなぁとは思うんだけど……。
完成した装備のデザインを変えるために錬成ってなると、何個も何個もしなきゃならなくなるし。
うん。考えただけで一日のプレイ時間のほとんどを、錬成で費やす未来しか見えませんね。
でも――
「型紙を自分で手作りって、出来ないんですか? もしくは今ある型紙をちょっとアレンジしたり」
と言うと、お姉さんが首を横に振る。
やったことあるのよ、と言うお姉さん。
切って貼って、その結果――アイテム名『型紙』は『ゴミ』になってしまったんだって。
ほえぇぇ、いろいろ難しいんだねぇ。
じゃあ――
「あの、その型紙、一枚頂けませんか?」
「型紙? うん、いいけど……一枚1000Rね」
ふ、ふえぇぇっ!
せ、せんっ。
え、えぇっと、どうしよう。
「あはは。冗談よ。お金は別に取ったりしないから」
ってことは、1000Rっていうのは本当なんですね。
うぐぅ、ちょっと緊張。
受け取った型紙は身ごろごとに作られてるんじゃなく、服の形そのままだったりする。
それを私の錬成陣用紙に乗せてイメージを固めます。
カフスリープの袖にボリュームを付けてパフスリープに。
丸襟は無くしてオフショルダーっぽく。
襟の面積分、服の裾をフリルに――よぉし。
「レッツ『錬成!』」
両手を錬成陣に乗せ、ピカっと光らせる。
出来上がったのは、イメージ通りの型紙!
「あれ? でもリボンが無いなぁ」
「うわぁお! 型紙から錬成して作り直せるの!? ちょっと見せてっ」
「おぉぉ。それ、ちゃんと型紙として使えるってんなら……あ、リボンね。この型紙を使う時に、追加アクセサリーから選ぶんだよ。リボンかボタンかを選ぶんだけどさ、ボタンっていうのがね……」
お兄さんはアイテムボックスからボタンを取り出して見せてくれた。
赤いのや青いの、白から黒まで、六色のボタン。大きさは十円玉ぐらいかな?
そしてお兄さんは「形はこれしかないんだ。色は豊富だけどね」と、なんだか切なそうな顔で話す。
「ボタンは型紙じゃないんですよね?」
「うん。これはNPCから買うんだよ。リボンもね」
「リボンなんて、ただの紐よ。色が充実してるってだけ。くぅ〜っ、この型紙、バッチリ使えるわよ!」
「え、ほんと?」
お姉さんとお兄さんは、錬成したばかりの型紙で興奮しているようです。
そして――
「「型紙、錬成して!」」
……と。
人気の少ない路地で、私とお姉さんお兄さんは怪しい儀式を取り行おうとしています。
嘘です。
「面積が広い型紙のほうが、いろいろ弄りやすいわよね」
「そうですね」
「袖はティアードにして〜……あ、これね」
デザインの参考画像をお兄さんが見せてくれる。
システムメニューは基本的には他のプレイヤーさんから見られることはない。
でも、共有ボタンを押してると見せれるようになるんだって。
でもおかげでイメージしやすくなるから大助かり。
お姉さんとお兄さんから大きな型紙を何枚も受け取り、それぞれのイメージする型紙に再構築していく。
ちょっと違っても、また錬成しなおせば済むって便利ぃ。
「同じものを何度も錬成できるのかな? 試しにこれでやって貰ってもいいかい?」
「はい。もし回数限定とかだったら私も気になるんで」
二回錬成しても大丈夫なのは今までので分かったけど……三回目、無事でした。
四回目……も無事でした。
五回目……これまた大丈夫。
六回目……あっ。
「ほえぇぇぇっ、紙くずになっちゃったぁ」
「あはははは。それ、私が型紙を切って貼った後のと同じだわぁ」
「ふぅん。五回までってことか。なかなかスキルとしてはいいんじゃないかな」
二人が用意した型紙を全部錬成し終えたのは、それから暫く経ってからでした。
でも、これで二人が喜んでくれるなら――。
「今度リボンの錬成お願いしたいわぁ〜。あとボタンも」
「フレ登録しようよっ」
そっちもあったんですね……。




