18:私、壁をぴっかぴかにしました!
外壁を錬成する……どうやって?
まず町の外に行きます。
正確には町をぐるっと囲んでいる壁沿い。
この壁沿いのどこかに『ロブス』さんという石博士が居る。
この人の所に行って、傷んだ壁石を再錬成するって事らしい。
で、ロブスさんの所にやってきたんだけど……。
「ふん。こんなヒヨッコを寄越すとは、アルケミスト協会はよっぽど人材不足のようだな」
「そう、ですね。私以外のアルケミストさんをまだ見てませんから」
「……それはそれで問題ありじゃの。まぁいい。そこのひび割れておる石を再錬成してくれ」
ひび……あ、本当だ。
町を囲む壁の一部に、一メートルぐらいのひびが入ってる。
えぇっと、壁を錬成陣用紙の上に……乗せられない……。
「何をやっとるんじゃ」
「ほえぇ、錬成陣用紙の上に壁を乗せられないんですぅ」
「そんなの当たり前じゃろう! 陣が描かれた方を外側にして半分に折れ。それから壁に押し当てるんじゃ」
半分に……え、そんな使い方も出来ちゃうの?
「いいからさっさと修理せんかい。他にもひび割れ箇所があるんじゃぞ」
「は、はいっ。じゃあ、レッツ錬成!」
よぉし、ピッカピカの新品みたいな壁にしちゃうぞぉ〜。
錬成陣用紙が光り、ひび割れた部分に溶け込むようにして消えていく。
そのまま周囲の壁に光が染みわたって――
「のぉ。別に壁を磨けとは言うておらんぞ」
「え、でもどうせなら綺麗なほうがいいかなぁと思って」
ひびはもちろん無くなってます。
そして壁はつるっつるのピッカピカです。
「まるで鏡じゃの……ま、まぁよいわ。次、行くぞい」
「はいっ」
合計十箇所のひび割れを修繕という名の再錬成を終え、ロブスさんが最後にお駄賃をくれました。
「わぁい。500Rだぁ〜」
「500Rなんぞ、はした金じゃろう」
「そんな事ありません! これだけあれば錬成陣用紙や空き瓶が買えるんですよっ。エンブリオだって!」
はっ!
エンブリオ代を作るためにポーション錬成を――の為に資金を――でクエストを受けたけど……。
そうです。このお金でエンブリオが買えるじゃありませんか!
よぉし、さっそく――。
「ロブスさん、またお仕事あったらぜひ呼んでくださいね」
「お前さんを呼んでおったら、いつかこの壁全部が鏡になってしまうわいっ」
ほえぇ、そんなにつるつるピッカピカがダメなのかなぁ。
町に入ってすぐ、ヴェルさん見つけちゃった!
赤茶色の長い髪と、そこから見える長い耳。
後ろからでも分かる、あれはきっとヴェルさんだ。
「ヴェルさぁ〜ん」
名前を呼ぶとヴェルさんも気づいて手を振ってくれる。
「ミントちゃん、ちょうどよかった〜」
「ほえ?」
「ポーションの錬成、お願いっ。さっきのはもう使いきっちゃったからさぁ〜」
「ほえぇぇっ」
ヴェルさんのお金で錬成陣用紙と空のポーション瓶を購入してもらい、それを私が錬成する――という流れに。
薬草はレベル上げをしながら時々採取してたけど、それでも残りはもう百二十枚ぐらいしかない。
アルケミスト協会に向かって歩いていると、突然建物の壁から人が出てきてラプトルさんとぶつかった!?
え、どういう事?。
「ぎゃあっ! 今度は恐竜!?」
「ほえぇっ。そ、その子は私のホムさんですっ」
壁から出てきたのは三人の男の人たち。
ホムンクルスと説明すると安心したのか、ほっと胸を撫でおろしてそのままどこかへと走り出した。
どういう事?
「雑貨屋、だね」
ヴェルさんがそう言って建物の中に、扉からちゃんと入っていく。
私もついていこうっと。
そしたら――。
「うわぁぁん、ヴェルさぁん」
「うん、怖くないから。うん、寧ろシュールで笑える」
そりゃあシュールですけど、やっぱり怖いよぉ。
だって、お店のカウンターの上に、生首があるんだもんっ。
しかもその生首さん「いらっしゃいませ」ってちゃんと言ってるんだよっ。
「あぁ、なるほど。ほら、ミントちゃん。このお店、床以外が全部、透過設定になってるようだよ」
「とうか?」
ヴェルさんがカウンターに手を付くと――すり抜けた!
え、床以外ってことは……。
私も壁を触ってみると、すり抜けた……。
じゃあさっきの人たちは、カウンターの店員さんを見て驚いて、そして自分たちも壁をすり抜けちゃったってこと?
「しかもこのNPC、セリフを言うだけで反応しないね」
「あ、そうなんですか?」
そういえば店員さん、さっきからずっと「いらっしゃいませ」しか言ってない。
首、だけなのかなぁ。
思い切って顔をカウンターに突っ込んで見ると、中は空洞になってて店員さんの胴体がちゃんと見えました。
よかったよかった。
「不具合報告だけでもしておくかね」
「報告、ですか?」
「そ。システムメニューから『システム』ってのを選んで、そこに問い合わせってのがあるからね。そこからGMコールや不具合報告、その他の問い合わせも出来るんだよ」
「そうなんですかぁ。じゃあ私も報告してみようっと」
二人で報告すれば、直ぐに修正して貰えるかもしれないしね♪
作業が終わった後、私とヴェルさんは壁から出ていきました。
それからアルケミスト協会に向かい、消耗品担当の協会員お姉さんの所まで行き――。
「五十本お願いっ」
「ほえぇぇ、五十本もですかっ」
「うん。早くレベルを上げて、なんとか最速クリアしたいんだよ」
「え、このゲームって、エンディングがあるんですか?」
という質問に、ヴェルさんはきょとんとした顔で私を見つめ返した。
それから笑いだして、ごめんごめんと言いながら詳しく説明してくれる。
「このゲームの舞台が浮遊大陸だってのは知ってるよね?」
「はい。ご飯食べる前にこの浮島から落ちましたから、他の島が空に浮かんでいるのも見えましたよ!」
「お、落ちたのか……まぁいいや。えぇっとね――」
浮島から浮島へと移動する為には、橋、もしくは階段で行くしかない。
それらには番人が居て、そいつを倒さなきゃ進めないらしい。
番人が倒されると三十分間は誰でも自由に行き来することが出来るんだって。
「三十分経過すると番人はまた復活する。そうすると、また倒すか、それとも誰かが倒すのを待たないと渡れないんだよ」
「ほえぇ〜」
「まぁ一度渡ってしまえば、町にある転送装置で行き来できるようになるんだけどね」
「て、転送!?」
「町の西側にあるけど、まだそっちには行ってなかったか」
便利なものがあるんだなぁ。
でも、それと最速クリアってのとどういう関係が?
「もちろん、番人を倒せばレアアイテムが手に入る。隣の浮島に一番乗りできれば、レアモンスターを倒せるチャンスだってあるしね」
「レア?」
「まぁ番人のレベルが18だから、もうちょっと上げなきゃ挑めないけどね」
ヴェルさん……凄い!
私も何かお手伝いできるといいなぁ。
「で、錬成終わるまで、ラプトルさん愛でさせて?」
〔あんぎ……「きゃう〜ん、ラプトルさぁん」あんぎゃあぁぁぁっ〕
私のお手伝いは、ヴェルさんの心を癒すことぐらいしか出来ませんでした。
ごめんね、ラプトルさん。
〔あんぎゃあぁっ〕
私はヴェルさんから頂いたポーション代でエンブリオを買っちゃおうっと。
「さぁて、どんな子を錬成しちゃおうかなぁ」
兎さんの毛皮。兎さんが持っていた人参。芋虫さんの糸。子犬さんの毛皮。子犬さんが持っていた骨。バッタさんの羽根。バッタさんの足……。
う、うぅんうぅん。
あの羊さんの毛があったら、もこもこホムンクルスさんが出来そうなんだけどなぁ。
それに、ラプトルさんみたいな強い子も錬成しなきゃ。
「うぅぅ、強そうな素材……強そうな素材、落ちてないかなぁ」
「いや、落ちてはないだろうけど……ね、ミントちゃん。ものは相談なんだけど――」
「え? 相談、ですか?」




