16:私、落ちました!
ヴェルさんは「今日中にレベル15まで上げるんだ」と言いながら、ラプトルさんと長い抱擁を交わして町を出て行った。
私も頑張るぞぉ〜。
モルさんは短い足でタタタタタっと、ラプトルさんは逞しい足でドスドスと町中を練り歩く。
「えぇっと、確かこっちに町の出口があったはず」
〔もきゅ……〕
〔がぁ……〕
そ、そうだよ。このメイン通りをまっすぐ南に歩けば――えぇっと、マップだと下だよね。
こっちに向かえば町の外に出るんだから。
私だって覚えたもん。
それにしても、やっぱりホムさんが目立っちゃうなぁ。
さっきからいろんな人が驚いた顔をして振り向いてるし。
ビックリして武器を構える人だっている。その度に私は、
「この子たちは良い子なんです! 攻撃しないでぇ〜」
と、両手を広げてモルさんとラプトルさんの前で仁王立ち。
魔物使いのテイマーさんと勘違いもされたりもしながら、ようやく町の外へと出ることに成功した。
「ふぅ。じゃあ二人とも、頑張ろっか」
〔もきゅ〜〕
〔くけけけ〕
最初だし、兎さんで様子を見よう。
まずラプトルさんが前。次に私。そしてモルさん。
「モルさんって何が出来るのかなぁ。支援タイプって、具体的に何するの?」
そう尋ねるとモルさんが〔もきゅ〕と言いながら軽くジャンプ。
頭の草が緑色に光り、キラキラした物が私やラプトルさんを包んだ。
「ほえぇぇ、綺麗。で、これって何?」
〔もっ!? きゅきゅ〕
うぅん。言葉が分からないから自分で調べるしかないかな。
ステータス画面とか見れば分かるのかなぁ。
ステータス画面には攻撃力や防御力なんかが書かれてるの。
他のゲームにあるような『STR』とか『VIT』とか、そういう物がないのがこのゲームの売りの一つ。難しい事考えなくていいから、私としては大助かりなんだよね。
でも攻撃力や防御力、各種属性に対する抵抗値なんかはあったりする。やっぱり難しい。
こういうのは装備によって数値が変わるし、それ以外にもアビリティが大きく影響する――っていうのを公式サイトを見て覚えた。
で、私のステータス画面だけど――あれ?
攻撃力の所に(+5)って書いてる。もしかしてこれがモルさんのスキル?
「モルさんってば、攻撃力を上げられる魔法が使えるの!?」
〔もっきゅぅ〜〕
そうだよと言ってるみたいに、ぴょんぴょんモルさんが跳ねる。
凄い!
モルさん優秀!
うん。アルケミスト一人だと錬成しか出来ないけど、こうやってホムさんにサポートされながら冒険すればいいんだね。
オッケー! 覚えたもん♪
〔っしゃー〕
「あ、モンスター来たの? ラプトルさん、お願いっ」
〔くけけけけけっ〕
ラプトルさんが兎のパンクラビットさん目掛けて猛ダッシュ。
あっという間に捕まえて、後ろ脚の大きな爪で――蹴るっ。
ほえぇぇっ。兎さんが七色に光って消えちゃったぁ。
ラ、ラプトルさん、強い!
「きゃぁぁぁ、ラプトルさんカッコいぃ」
〔もっきゅ〜〕
〔くぉけけ〕
よぉし、次は私だぞぉ。
進化したリボンの威力!
「とうっ」
近くにいたイモイモムーさんにリボンを投げ込むと、これまでに見たことが無いようなダメージが出た!?
す、凄いっ。
「見て見てぇ〜。ダメージ21も出たよぉ」
モルさんたちを振り返った私は、別のイモイモムーさんに82ダメージを出すラプトルさんを見た。
うん……私は弱くていいんだ。
だってその為のホムンクルスさんなんだから。
ラプトルさんとモルさんのおかげでレベルは6まで上がりました!
「モルさんも攻撃に参加できるんだねぇ〜」
〔もきゅぅ〕
モルさんは体当たり攻撃が出来ます。
時々、モルさんの体当たりを受けたモンスターさんがすってんころりんして痙攣する事がある。
失神、だと思うんだけど、この間は無防備になってて、私の攻撃でもいつもよりダメージが多く出る。
だいたい30ぐらいかな。
ラプトルさんなんか120ぐらい出てるし、失神中は1.5倍ダメージなのかも。
ヴェルさんが草原も奥に行けば敵が強くなって、効率も良いって言ってたのを思い出して今は奥を目指して移動中。
出てくるモンスターも兎さんから子犬さんやバッタさんに。
更に進むと、羊さんが出てきた!
いやぁん、ふわもこだぁ。
でもレベル7。強そう。
ゆっくり近づいて、リボンが届く距離まで――
〔メェェェッ〕
「はひっ。羊さんがこっちに来るぅ」
ダッシュで駆けてくる羊さんに思わず怖くなって逃げだす私。
ほえぇぇっ、来ないでぇ〜。
〔もきゅきゅっ!〕
〔くけけけけけっ!〕
モルさんとラプトルさんが凄く焦ったように何かを伝えようとしてるけど、私には二匹が何を言っているのか分からない。
逃げながら後ろを見ると、ラプトルさんが猛スピードで追いかけてきて、羊さんをがぶっ!
ほっ、よかっ――
「ほええぇぇぇっ」
走るのを止めた私の足元に地面は無く、真っ逆さまに落ちて行く。
あぁ、モルさんたちはきっと、そっちに行っちゃあダメって言ってたんだね。
ここは浮遊大陸であり、一つの浮島。
つまり、島の端っこは海ではなく――空。
「ふえぇぇぇぇぇん、どこまで落ちるのぉ〜」
叫びながら私は見た。
私が落ちた浮島のすぐ隣に、また別の浮島があるのを。
ううん。たくさんの浮島があるのが見えた。
横に並ぶように浮いている島もあれば、少し上で浮かんでいる物。更にずっと高い位置でぷかぷかしている島もある。
どのくらいの島が浮かんでいるんだろう。
その答えは――
【戦闘不能状態になりました。最寄りの教会へと移動しますか?】
今は知ることが出来なさそうです。




