10:私、ポーション売りしました!
「錬成陣用紙は一枚5R。空のポーション瓶は10R。水はその辺の井戸からお好きなだけ汲み上げてください」
「ただなんですか!?」
アルケミスト協会に戻って来た私は、まず錬成材料を購入する事にした。
お水がタダなのかという質問に、販売NPCさんが頷く。
「川の水でも錬成が可能ですので。ただ濁った水ですと、失敗する可能性がぐんと上がりますよ」
なんと!?
じゃあ、お外で錬成するときは、川の近くでやればいいんだね。
お得情報♪
それからホムンクルスについて尋ねてみた。
ホムンクルスについてはまた別のNPCさんが答えてくれるというので、建物の二階に上がっていく。
それにしても、他のアルケミストさん見ないなぁ。
私が外に出てる間に来ちゃったのかなぁ。
階段を上がっても、そこに他のアルケミストさんの姿は無い。
見えるのは男女の違いしかない、同じ服の協会員NPCさんばかり。
一階で教えて貰った、ホムンクルス専門のNPCさんは……と、居た。
「ようこそ、ホムンクルスについてお聞きしたいとか?」
「あ、はい。その……錬成するには必要な素材を集めないといけないんですよね? 毛皮とか牙とか爪とか肉とか血……うぐぅ」
ちょっとグロテスクな物を想像してしまった。
両手を顔を覆い、想像を吹き飛ばそうと首を振るう。
そんな私を見てNPCさんが笑った。
「はっはっは。確かに素材は必要だけどね、肉とか血は必要ないんだよ。代わりにこれ――」
そう言って彼――NPCさんは懐から丸い物を取り出した。
なんだがぐねぐねした何かが入ってるみたい。
「これはエンブリオと言ってね、ホムンクルスの核となる素材だ。これとあとは、ホムンクルスに必要な物量までの素材とを錬成すれば――」
「すればぁ?」
「まぁ素材の相性や良しあしもあるからね、簡単には成功しないだろうが。何度か挑戦すれば君のイメージとぴったりの物が生まれる、かもしれない」
かも、かぁ。
で、このエンブリオも売り物で、一つ500Rもするの!?
ど、どうしよう。
一階で瓶と用紙を二十五個ずつ買っちゃったから、残り212Rしかないよぉ。
「お金が足りないのかい? だったら錬成したポーションを売り出せば、25Rぐらいで売れるだろう」
「え、そうなんですか?」
「雑貨屋での値段だからね、それと同じかもう少し安くすればすぐさ」
うわぁ〜い。
あ、でもお店、持ってないしなぁ。
マッチ売りみたいに、道端で売ってみるかなぁ。
町をあちこち歩きまわり、人がたくさん居る場所へとやってきました!
マップを見てみると、町の真ん中を上下に伸びてる広い道みたいだね。
ふむふむ。きっとメイン通りなんだろうな。
じゃあさっそく――。
「あ、あのぉ、ポーション買って頂けませんかぁ」
うぐぅ、やっぱりちょっと恥ずかしい。
声も全然小さいし、こんなんじゃ誰も買ってくれな――。
「ポーション、売ってくれるの?」
「はひっ」
と思ったら買ってくれそうな人来ちゃった!
声の方に振り向くと、皮の鎧を着た男の人が立っていた。
戦士っぽい人だなぁ。
うん、戦士さんはポーション必要だよね。
「は、はいっ。お金を素材に使いきっちゃって、他に欲しい物が買えなくなったので、それで」
「ははは、そうなんだ。じゃあ魔女っ娘さんの為にいっぱい買っちゃおうかな。といいたいけど、こっちも所持金が少ないからね、十五本くださいな」
「はいっ、ありがとうございます」
嬉しい。こんなにすぐに買い手が見つかるなんて。
アイテムボックスを開きポーションを……ポー、ション……。
「ふえぇっ、ポーションが無い!」
「ちょ、どうなってんの」
ど、どうしよう……。
あ、
「すみません。まだ錬成してないだけでした」
「錬成? 君、アルケミストなの?」
「あ、はい。すぐに錬成しますね」
その場に錬成陣用紙を敷き、空のポーション瓶一五本と薬草一五枚……あ、お水どうしよう。
あ、直ぐ近くに井戸発見っ。
「す、すみません。お水汲んできますっ。待っててください。お願いしますぅ〜」
そう言って井戸まで走っていき、備え付けのバケツを使って水を汲み上げた。
う、うぅ〜ん。重いぃ。
「手伝うよ。それにしてもアルケミストだったとはねぇ」
「ありがとうございます。アルケミストって、もしかして珍しいんですか?」
協会で他のアルケミストさんを見かけなかったから、もしかして……とは思ったんだけど。
「まぁね。しかもこのエリアは尚更だよ」
「この? あぁ、草原のファネスがですか?」
ポーションを買ってくれるというお兄さんは、わざわざ水汲みまで手伝ってくれて、その上お話までしてくれた。
「エリアによって獲得できる素材の種類や数が違うんだよ。森なら木材系や皮系。もちろん草も豊富さ。ここは薬草系。動物型モンスターもいるけど、森に比べると絶対数が少ない。山に囲まれたオアだと鉱石。皮はここと変わらないぐらいかな。砂漠は一攫千金を夢見るプレイヤー向けだね。ただし熟練者向けでもある」
「ほえぇ〜」
「アルケミストに限らず、生産組だとオアに向かう人が多いんだよ。次点で森のフォセーリア。その次がここ。ただねぇ」
そう言ってお兄さんは苦笑いを浮かべる。
「アルケミストって、ダントツで不人気職だから」
……え、そう、だったの?
「だってほら、戦闘も生産も出来るハイブリット職だと言ってもさ、武器の制限が厳しいからねぇ」
「はぁ」
「攻撃力の高い武器は戦士系職業限定ってのが多いし、何よりアルケミは職業スキルは……ねぇ」
ほえぇぇ。
じゃあ、弱い武器しか使えないってことなんだぁ。
「だからパーティーでも不遇職だし、誰も組みたがらな……あぁ、でも君みたいな可愛い魔女っ娘さんだったら――」
「よし、レッツ錬成!」
別にパーティーで不遇でもいいんです!
だって、他の人とパーティーを組まなくてもいいようにって、アルケミストを選んだんだから♪
でも確かに弱い武器での冒険は苦労しそうかも。
私が弱いなら、強いホムンクルスさんを錬成すればいい。
うん、解決ぅ。
「ポーション一五本、完成!」
「あ、あぁ、ありがとう。一本いくら?」
うぐ、値段の事、考えてなかった。
「相場は24Rだけど」
とお兄さん。
雑貨屋さんと比べて1R安いだけなのね。
お水汲みのお手伝いもしてもらったし、アルケミストさんが少ない理由も教えて貰ったし。
「じゃあ22Rでお願いします」
「オケ。良心的な値段だね。こっちも助かるよ」
お兄さんから取引要請というのが送られてきて私はポーションを一五本、取引画面に載せる。
向こうは330Rを入金して取引完了っと。
「ありがとうございました」
「こっちこそ。それで、パーティーを――」
「じゃあ私、欲しかったもの買いに行ってきます」
所持金667R!
これでエンブリオを買えるよぉ〜。
駆け出して暫くして、ナビ機能を使ってなかった事を思い出す。




