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タラントゥリバヤ、メイトギアを襲撃する

「タラントゥリバヤ!?。彼女がどうかしたのか!?」


アリシアが思わず発したその名前に、千堂も驚きを隠せないでいた。


「武装集団の中に、タラントゥリバヤさんがいました。彼女がロボットを破壊しています。今も」


戦闘モード起動中の為に感情は込められていないが、アリシアの戸惑いが見える言葉だった。しかしそんな彼女を嘲笑うかのように、ロボットが次々とダウンしていく。殆どカメラに捉えることも出来ないが、一瞬見える体の一部や影だけでも戦闘服を着た何者かだということが分かった。


そうしているうちにも、三十数機いたメイトギアがすべて機能停止に追い込まれたのだった。主人を喪い満足に自立行動も出来ない状態のメイトギア達だったから訳もないと言えばそうなのだが、それにしても鮮やかすぎる手並みだった。思い付きで出来るようなことではない。


その一方で、乗客達を逃がす為にバリケードを築いていたメイトギア達の方も、テロリストの攻撃に膠着状態に陥っていた。テロリストが新しい装備を出してきたのだ。それは、非常停止信号を発するリモコンだった。ロボットが暴走した時などに非常停止させる為の信号である。しかし現在ではそれ以外の安全対策が充実している為、その存在を知る者さえ珍しい忘れられた機能だった。


しかしそんなものを持っているならもっと早くに使えばよかっただろうに、なぜ彼らはわざわざ一機ずつ停止させていったのだろうか?。その答えは簡単だろう。この行為が『遊び』だからだ。簡単に停止させられていては面白くないということだ。また、非常停止信号は、半径十メートル程度ではあるが信号の届く範囲にいる全てのロボットを停止させてしまうことから、一部屋ずつ対処するような使い方にはあまり適さないというのもある。


それが使われているということは、彼らもそれなりに追い詰められているということだろう。彼らとしても迂闊に姿を晒せば停止信号が届く範囲外からナイフやフォーク等で武装したメイトギアの攻撃を受ける可能性もあるが、メイトギアの方も迂闊に近付けない状態だった。


だがそれにしても、クグリはどこに行ったのだろうか?。当然、クグリはまだそこにいた。殺害された乗客の部屋で、乗客が頼んだルームサービスのディナーを食べていたのだった。


「やっぱり良いもの出してんなあ。美味い美味い」


そう言った瞬間、クグリの表情が変わった。野生の肉食獣が危険を察知した時のそれを思わせる表情だった。テーブルを払いのけ客室の窓の方に走り、外を見た。耳を澄ますような仕草をした後、ニヤリと禍々しい笑みを浮かべる。


「いいねえ。騎兵隊の登場か」




クイーン・オブ・マーズが救難信号を発してから十数分。その上空に一機の飛行機が近付いていた。民間用の輸送機、C-F1のようだった。いや、違う。民間機に偽装された軍用機だ。


その機体の中に、肥土亮司ひどりょうじ二等陸尉の姿があった。


「あれが、クイーン・オブ・マーズか。うちが一番乗りのようだな」


そう、たまたま近くを通りがかり最も早く対応出来たのが、肥土らを乗せたC-F1だったのである。しかもニューカイロから正式な要請を受け、対処する為に駆け付けたのだ。


「どうだ。まだ連絡はとれないのか?」


肥土がオペレーターに問い掛けると、通信を試みていたオペレーターが応えた。


「いえ、やはり応答はありません。しかもこの海域は、先月から衛星電話用の衛星が老朽化により故障し通話不能になっています。とは言え、あらゆるチャンネルで応答がないということ自体が異常ですね。さらに船体に若干の傾きが見られます。浸水し始めているのかも知れません」


その言葉に肥土の表情が厳しいものになる。


「何とか連絡を取りたいが、何が起こっているのか確かめられない限り迂闊に近付くのも危険だな…」


と、その時、窓からクイーン・オブ・マーズを見ていた月城香澄つきしろかすみ二等陸曹が声を上げた。


「隊長!、発光信号です!」




肥土達のC-F1の接近に気付いたのは、クグリだけではなかった。千堂アリシアもそれに気付いていた。デッキに避難していたアリシア2234-MMNが上空に接近中の航空機の音を捉え、その情報が千堂アリシアにも届いたのである。しかも、C-F1が発する音から、以前、空港で見かけた肥土達のC-F1であることに気付いたのだった。


「千堂様、肥土様の部隊が近くまで来ています。恐らく救難信号を受信して対応してくださったものと思われます」


思いがけない名前を聞き、千堂が「なに!?」と声を上げた。だがその次の瞬間にはその表情は、どこか笑っているようにも見えるものになった。こういう時には本当に頼りになる名を耳にしたからだ。


「発光信号だ!。救援要請。及び状況を通達!。現時点で分かっている情報を全て伝えるんだ!」


その指示を受けると同時に、アリシアはデッキにいたアリシアシリーズに装備されたライトを使い、肥土達のC-F1へと信号を発信した。船内の第一デッキから第四デッキまでの後部から中央部にかけて占拠されていること。テロリストの人数は二十人から三十人弱。対ロボット用の不正アクセス機器と非常停止信号を装備。現時点で確認出来ている火器は自動小銃のみだがC-7爆薬の保有も推測される。なお、現在はメイトギア約六十機によりバリケードを構築。テロリストの侵攻を阻止している等の情報を発信した。


「発光信号の内容は以上です。なお、発信者はJAPAN-2社、千堂京一」


信号を解析したオペレーターの言葉に、肥土の顔色も変わる。


「千堂さんがあの船に!?」


情報を受け取った肥土は決断した。


「GLAN-AFRICAに状況伝達!。GLAN-AFRICAからの支援要請が出次第、救援に降りる!。各自降下用意!。まずCSK-305を降ろし、通信を確保。その後我々も降下する!」


クイーン・オブ・マーズに乗っているロボットは全て、要人警護仕様であっても民間機の為、軍用の暗号通信は使えなかった。その為、軍用ランドギアのCSK-305を先に船に降ろすことでそれを通じて通信を確保することにしたのだ。


「情報受信の返信来ました」


上空を旋回するC-F1から、短い発光信号で「了解」と発信されたのをアリシアが千堂に伝える。それに千堂の体に力がこもった。


「よし!、これで状況をひっくり返せるぞ!」


テロリスト達は、対ロボット用の装備を充実させている為、ロボットではどうしても膠着状態に持ち込むのが精一杯だった。だが、対テロ戦もカバーする肥土の部隊なら、むしろこういう状況には適しているだろう。


だが、千堂がホッとしたのも束の間、船から炎を上げつつすさまじい速さで何かが宙を舞った。その時、C-F1の機内にアラームが鳴り響いていた。


「高熱原体接近!、対空ミサイルです!」


オペレーターの声に、肥土が叫ぶ。


「デコイ射出!。躱せぇ!!」


航空機が発する熱をセンサーで感知し、かつカメラでその姿を捉えて追跡してくる対空ミサイルを欺く為のデコイを射出と同時に旋回して緊急回避する。


デコイに命中したミサイルが爆発。衝撃波が機体を揺らした。しかしダメージはない。一旦、船から離れて大きく旋回。CSK-305を投下する準備に入る。そこへ、GLAN-AFRICAからの正式な支援要請が届いた。これで作戦行動が可能となった。


船の船首方向から接近。デッキ上のプールを目標にした。そこなら人がいないからだ。


「よし、投下!」


肥土の指示を受けて、CSK-305が投下される。だがそこにまた、船の客室の窓からミサイルが発射された。接近するのを狙っていたのだろう。


再度デコイを射出。緊急回避でミサイルを躱す。


その様子を客室の窓から見ていたのは、クグリであった。ニヤリと禍々しい笑みを浮かべつつ、クグリが呟いた。


「このくらいでやられるような奴なら要らねえんだよ。だが、どうやら楽しめそうだ」


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