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ReverseFlag 病床の王編  作者: 居村 るみ
反旗疾走!
9/18

VS Acceleration and………?

西暦2135年 9月9日 AM8:30

翌日になっても騒ぎは収まらなかった。

騒ぎが嫌いな生徒もいるだろうが、彼らにとってはこの騒ぎは好都合だった。


「いや~、まさか晴斗が来るとは…」

「ハハハ!それは思った!名探偵がいても予測は出来まい」


廊下を()()()歩いているのはイケメンズこと清透零と暗木黒である。


「彼には悪いがお陰でこうやって堂々と歩けるんだよね」

「そうそう。いや~、団長君のルックスが悪くなくて助かったよ」


一番の安堵。それは二人をストーカーする人間が減った事だった。

転入生としてグリトニルに来た晴斗をストーキングする人間が増えたため、逆にこの二人をストーキングする人間が減ったのだ。


「でもさ~気づいたんだけどさ~」

「どうしたの?」

「俺らと晴斗が合流したら…」


黒がそこまで言った時だった。


「あ!零~!黒~!」

「……ヤバくね?」

「そう…だね…」


結果、いつもより追跡者(ストーカー)が増えたのだった。

***

「あぁ~疲れた…」

「ホントだよ…ストーカーの指導者とかいるんじゃないかな…」

「え?そんなレベルで追われてたの?」

「「気付かないかぁ…」」


三人とも東区から通っているので帰り道は(おの)ずと一緒になる。

(晴斗の場合はストーキングされない道を零達と一緒に通っている為、二人についていく形での帰宅だ)


「そういやさ、団長君は何処なの?家」


黒が話を変える。

帰る際、晴斗の方から「一緒に帰ろう」と誘われたのだが、その時に黒は引っ掛かりを覚えていた。


「東区在住じゃないの?」

「まぁ零の言うとおりではあるんだけど、それだと色々おかしいとこが出てくるんだよ。例えば団長君が『半年前のテロの犠牲者』という発言。あれが嘘じゃなかったら、今頃テレビやネットで大騒ぎだぜ?だが、それがない。流石にバレるだろ、身内を通してさ。そしてそんな人間はこんな学校来るに来れなくなるだろ。てか、そもそも半年前から学校通ってなかったら高校入れないだろうし…」


と推理をしている黒に


「じゃあ全部教えてやるよ」


と返す晴斗。


「答え。革命症に詳しい人物に一時的に匿ってもらっていた。その人から高校一年までの勉強は教えてもらった。今は親元にいない。てか会えてないし。俺は今、駅前のカフェで居候させてもらってるよ。休日はバイトするって条件付きだから、そのうち身内に見つかって大事になるだろうね」

「あぁ~なるほど。『まだ』誰も騒いでないってだけね…」


大変だなぁと黒が呟く。


「あれ?」


そこで零、疑問を持つ。


「なんで両親にあってあげないの?」

「あ、あ~それね。それは…」

「いきなり帰って来て反旗団立てました~患者を救います~…っつても困惑するだけだ…って事で良いか?」


それを聞き驚く。

そこまでわかるのか、と。


(俺と似た境遇に陥った事があるのか…?)


「んフフ。不思議そうな顔してるな。『なんだお前、エスパーか?』って顔だ。もしくは『俺と同じ経験を?』って感じかな?まあ、どっちも違うんだがな。」


悪戯っぽい笑みを浮かべ続ける。


「仕事柄、推理するのも顔色伺うのも得意でねぇ…こーゆーのかなり頭回るのよ。勿論、被害者の気持ちもな?」


得意気に言った。

晴斗はなんとなく「なるほど…?」っといった感じで反応していたが、零は「なんでそこまで出来るのさ…」と思っていた。(顔にこそ出さなかったが)


「晴斗はいいなぁ。カフェ暮らしってのも夢があっていいよね」

「そうそう、そーゆーのってね、いくらハイテクになってもやってみたい願望はあるよな」

「まあ、いつでも遊びに来るといいよ。俺からも由衣ちゃんに…マスターに言っておくからさ」

「そいつは良いねぇ。じゃあ団長君のお言葉に甘えまして」

「うん。休日あたりに僕らの方からお邪魔させてもらうよ」


***

西暦2135年 9月11日 AM9:00

零、黒の二人は早速晴斗が住むというカフェへ遊びにいくことにした。


「う~んと…どこだっけ?」

「東区駅前だよ。まったく…記憶力無いな~」

「あぁそうだった、そうだった」

「しっかりしてよ~」

「悪ぃ。でもさぁ?東区の駅前なんてそうそう行かないからな…」


これで二度目の解説となるが、現在日本はかつての東北、北海道及び新潟を含めた北区。中部地方及び滋賀県を含めた中央区(グリトニル)。近畿、中国地方が合わさった西区。九州、四国合わさった南区。そして、かつて関東と呼ばれた東区。合わせて五つの区で成り立っている。

その成り立ちについてはグリトニル誕生も話さなくてはならないので、また別の機会に。

そしてこの二人が住むのは、かつては埼玉と呼ばれていた場所だった。


「まぁ電車で行って、降りてみたらわかるだろうな」

「そうだね。それでわからなかったら晴斗に案内してもらおう」


二人は最寄りの駅から数分、電車に揺られていた。

日曜と言うだけあって東区駅行きの電車には親子連れやカップル、家族連れの人達でいっぱいだ。

とはいえ、今は休日。通勤ラッシュに比べれば屁でもないだろうが。

***

「到着~っと」


二人は駅に降り立つと早速カフェのある駅前へと足を運ぶ。

その間、久々の東区の駅への旅(読者達の時代的には県庁所在地のある所へ行く感覚)だったので観光もした。


ここまでは平和だった。

平和だったのだが…


轟ッ!


文字通りの轟音が鳴り響く。

それと同時に並び立つビル、その一つが倒れ始めた。


「え…?」


唖然とする人々。それは零、黒の二人も例外ではなかった。

ビルが倒れ…

人々がそれの下敷きに…


『ズ…ドォォオオン!』


なる事はなかった。


倒壊したビルは地面に落ちるより先に、()()()()へと落ちたのだ。


「ハァ…ハァ…間に…合った…」


どこかで聞き覚えのある少年の声が聞こえる。


「早く…ここから…逃げ…て…くださいッ…!」


少年がそう言うと氷の下にいた人達はようやく我に帰ったのか、叫びながら逃げてゆく。

そしてそこに残ったのは…


「晴斗!皆逃げたよ!」

「周りにも、もう人はいない!一旦そっから出てこい!」


黒、そして零の二人だった。

晴斗が氷の天井の下から脱出すると天井は砕けビルが落下した。

低い位置からの落下だったためビルが完全に砕け散ることはなかった。


「二人とも!大丈夫だった?」

「うん」

「まあ、なんとかな……!」


3人は倒れたビルから何者かの気配を感じた。

ビルの上にあったのはローブを纏った人影、それも2つの紅い光を放つ物だった。


(深紅(ガルス)か…!)


革命症を良く知る晴斗はその結論にたどり着き、戦闘体制をとる。

それをみた二人も人影を敵だと知り構える。


「晴斗…あれって…」

「ああ、患者だ。ただどうやってビルを倒したかはわからないけどな」

「……ありゃ…恐らくだが、朽ちらす革命症だろうな。ビルの折れた部分、特に鉄筋部分がボロッボロに錆びてる。あんなんじゃビルなんか支えらんねぇよ」


(一理ある…だが…)


と晴斗は思う。


(本当にそうだろうか?)


何か引っかかるモノがあるようだ。


(あの会話の一瞬でどうやってビルの上に立った?)


ただ少し会話しただけだったが、どうやってその間にビルの上に登り、立ち、見下ろしていたのか。

それだけと言えばそれだけではあるが、その移動が妙に引っかかった。


再びビルの上へ目をやる晴斗。奴は依然立っている。

だが、ふと瞬きをしたその瞬間その姿は消えていた。


「え…?」

「団長!後ろだ!」

「…!?」


時すでに遅し。晴斗の体は遠くへ飛ばされた。


「晴斗!」


零は晴斗を追おうとする。

その時だった、異変に気付いたのは。

飛ばされた晴斗のスピードが落ちなかった。

いや、むしろ加速している。


「助けてええぇぇぇぇ………」

「……」

「…おい、助けてやれよ」

「無理だからね!?」


と掛け合いつつも敵の攻撃をかわす二人。


「こいつの能力って…!」

「うん!十中八九()()()()()革命症!」

「ビルの老朽化を加速させたって事か!」


自身を加速した。

だからいつの間にかビルの上にいた。

だから瞬きの間に晴斗をぶっ飛ばせた。

晴斗を加速した。

だから吹っ飛んでも減速せず加速した。


そして今もなお、その攻撃は加速している。


「だがぁ!」


突然黒の手から黒い霧のような物が現れ


「人間そのものを加速することは出来ないようだな!」


その霧はローブの男を拘束し、動けないようにした。

男は必死にもがくが、無理だと悟ったのか間もなく抵抗をやめた。


「どうゆうこと?」


零が聞く。


「人間に効かない訳じゃないだろう?さっきだって晴斗は加速してたし、攻撃だって段々速く…」

「いや、俺が言いたいのは『人間の成長』って事だ。さっきは鉄筋とコンクリートを加速させて急速に老朽化させた。でもそれは経年劣化による老朽化であり、決して細胞の成長による劣化とかじゃない。それが人にも使えたらもう使ってるはずだ。例えば晴斗に」


あーなるほど、と零。


「じゃあそろそろこいつをどうにかするとしようか」


と男を担ぎ上げたその時だった。


「うわぁああああ!」

「ぬぅおおおおお!」


晴斗が吹っ飛んだ方向から妙に聞き覚えのある二人の男の声が聞こえたのだった。

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