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ReverseFlag 病床の王編  作者: 居村 るみ
反旗疾走!
6/18

問題解決!

会話とか多いです


「二階はあれか。それぞれの自室か」


黄土が口を開く。階段を登った先には部屋が並んでおり、ドアにはネームプレートが掛けられていた。


「その…音の発生源って…」

「シー…」


晴斗は聞き出そうとしたが黄土に止められた。音を聞き取るのに集中したいのだろう。


「ここだな」


そう言ってドアの前に立つ。ドアのネームプレートには由依の文字が


「黄土さんさすがにやめましょう」


黄土が入ろうとしたのですかさず止める。この部屋の持ち主であろう、花岡由依は晴斗の元クラスメイトである以前に、このカフェの看板娘である以前に…一人の少女である。


「女性の部屋に無断で入るのはちょっと…」

「いや……由依ちゃん今やべぇぞ…栄養失調になっちまってるかも…」

「え…?」

「呼吸も弱いし、微動だにしてない…大方マスターが死んだショックって所かな」


そう言ってまた躊躇い無くドアを開ける。


「嘘…だろ」

「……これは…」


そこには二人が学校で、カフェで見ていた花岡由依の姿とはかけ離れていた。体は痩せ細り、髪はボサボサで部屋の隅でうずくまっている。


「由依…ちゃん…だよね?」


晴斗は聞く


「…何…なんで人がいるの」


由依は逆に問う。

「い、いや~、マスターに線香をあげようかなって思ったら、由依ちゃんがこんな状態だったから」


あははと晴斗は笑う。


「一応病院にでも行かないと。じゃねぇと死んじまうぜ?」


今度は黄土が言う。

「……て……よ」


由依は口を開き何か言っているが二人には聞き取れなかった。


「ん?なんて?」

「もう…死んだって良いよ!」


そう叫ぶと二人がいきなり壁に叩きつけられる。


「へ!?何!?何!?」

混乱している黄土をよそに晴斗は冷静に状況を分析していた。

(目が青い…青空ケオノアか…!最愛の人(マスター)の死で発症と見た!)


「黄土さん!見えないだろうけど何とか攻撃を避けてもらえますか!」

「りょーかい!ってか避けねぇと死ぬ!」


黄土は自身の聴力を頼りに見えない攻撃を避ける。


「さて…俺は…」


そう言って晴斗はヘッドフォンを着ける。

(精神世界に潜り込む!)

そして集中する準備が整った瞬間。


「危ねぇ!」

黄土が叫び助けに入ろうとする。が一歩遅かった…。


「えぇ…何なの…ホントに…」

晴斗は見えない攻撃を凍らせたのである。


「どうやら物理的に殴り付けていたようですね。でもこれで隙ができた」


晴斗は改めて集中する。由依の雑念をかき分け、思念のその奥へと進む。

精神世界で自分の体があることを確認するとまっすぐに歩を進める。

由依の精神世界は険しいジャングルとなっていた。

奥へ進めば進むほど険しくなり。どんどん歩きづらくなっていく。


「他人を拒絶してるって象徴みたいだな…このジャングルは」


そんな事を呟きながら進んでいると、一軒の小さなログハウスを見つける。そして不思議なことにログハウスの周りには拒絶するような木はなく、代わりにピンクや白といった花が咲き誇っていた。


「ここが彼女の心の『核』なんだろうな…」


そう言って晴斗はログハウスのドアに手をかける。

ドアノブは心地よい暖かさだった。


「お邪魔…しまーす…」


とドアを開けた晴斗は驚く。そこは以前通っていたカフェとそっくりだったのだ。

それよりも驚いた事が晴斗にはあった。

死んだと聞いていたマスターと由依の姿があったのだ。

あまりにも最愛の人が死んだ人間の精神内だとは思えない。

そこで考えられる事は、一番楽しかった頃の記憶への逃避だった。

すると背後のドアから人が入る。


「お邪魔しますよ~」

「ようこそカフェ、ティエラへ!」


どうやら客だったようだ。誰も自分には気づいていないところから記憶に干渉する事は不可能だと悟る。

試しに由依に触ってみたが、由依の体をその手が通り抜けた。

まるで


「これじゃあ…助けられないじゃないか…」


と絶望していると。部屋の奥に続く部屋の扉が半開きになっていた事に気付く。ものは試しだ。これに賭けよう。そう思い晴斗は扉の奥へと進む。


扉の先は小さな部屋だった。子供が十人ほど集まっただけできつくなるような狭い部屋。その中央に(うつむ)いた由依が座っていた。


「由依…ちゃん…?」


晴斗声をかけた。

すると由依は顔を上げて晴斗の方を見る。

それは晴斗の知る由依の顔だった。


「晴斗…くん…?」

「良かったぁ…俺の事、ちゃんとわかるんだね?」

「え…でも何ヵ月も行方不明で…」

「そういう話は後だよ…それより由依ちゃん、どうしてこうなっちゃったか教えてくれないか?どうしてこんなところに閉じ籠ったのかを、さ」


由依は閉じ籠った経緯を晴斗に話した。

2月に祖父が亡くなった由依は親戚に預けてもらう事となった。

最初はカフェで経営していたお金があったので一人でどうにかするつもりだったのだが、それはさすがにいけないと親戚一同に言われたとのこと。

カフェが併設された家は売るのも勿体ないとそのままにしてあったらしい。

由依は自分の叔母に当たる人物に預けてもらう事になった。


「でもある日気付いたんだよ…自分は必要とされてないって…」


それは引き取られてから2週間の事である。

そろそろ叔母の家での生活に慣れてきたときだった。

呼び出された由依は何の前触れもなく…殴られた。

どうやら由依に残された金が目当てだったらしい。

この時の由依は分かっていなかったがマスターの遺言で莫大な遺産が由依に相続されていたのだ。


「殴られ続けて…もう私は誰からも必要とされてないんだって…おじいちゃんしか大切にしてくれなかったんだって…そう思ったら叔母さんが吹っ飛んで…」


革命症に目覚めたらしい。


「だから私はもう死んでも…誰も悲しまないから…閉じ籠って…」


消え入るように話す由依。それに対して晴斗は大きく息を吸って叫ぶ。


「何を言ってるんだ!君は!もっと胸を張りなさい!」

「え?」


いきなり叫んだので驚く由依。


「必要とされてない人間なんて微塵も居やしないさ。現に俺は元気だった頃の由依ちゃん姿をすぐにでも見てみたいぜ?」

「晴斗くん…」

「俺だけじゃない。きっと常連さんだった人達も元気な由依ちゃんを見たいと思ってるさ。後は君次第だけどね」


そう言って微笑む晴斗。

その顔を見た由依は立ち上がり、ドアの方へ歩いていった。


「私…頑張るよ!」

「おう、頑張れ」



二人が目覚めたのは病室だった。


「おう、目覚めたか。二人とも」


声をかけたのは黄土だった。


「いや~びっくりだよ?いきなり二人とも気を失うんだもんどうしようかちとテンパっちゃったぜ」


笑いながら黄土は話す。


「まぁそんな長い時間気絶してたわけじゃないし、いいんだけどさ」

「どんくらい気絶を…?」


アニメではよくある質問を投げ掛けた晴斗。


「ざっと六時間程度だよ。夜、寝るのと同じくらい」


本当にあまり長い時間気絶してた訳じゃないようだ。


「あ、あの私は…」

「お、由依ちゃん。正気を取り戻したか。由依ちゃんはやっぱり栄養失調で2週間ほど入院してろってさ」


少し残念そうな顔する由依。そこに晴斗が問いかける。


「どうかしたの?」


すると由依は笑顔で


「退院したら二人にお教えします!」


と言った。


西暦2135年 9月3日

すっかり元気になった由依と晴斗、そして黄土の三人は由依の家 の前に集まっていた。


「で?何を教えてくれるんだい?おれ逹に」

「そ・れ・は・ですねぇ」


黄土、晴斗の二人が生唾を飲んで聞く。


「カフェ・ティエラを再開しようと思いまーす!」

「おおおお!」

「マジでか!」


常連だった二人は歓喜した。が、ここで一つの疑問が生まれる。


「由依ちゃん…学校…どうすんの?」

「その時は黄土さんにティエラを任せます」

「えぇ俺!?まぁ暇だからいいんだけどさ」


意外と簡単に問題が解決した。

そして今度は由依が質問をする。


「そういえば晴斗くんは学校行かないの?いや勉強については話を聞いていたからわかるんだけどさ」


由依が入院中に晴斗は自分が行方不明中に何があったのかを由依に話しておいた(ついでに反旗団の事も)。こっちで事情を知っている人がいると楽たいうことだった。


「いや…いきなり途中からのだと変だろ?それに行方不明だったんだぜ?俺」

「大丈夫だよ!そうだ!うちの学校来る?」

「学校がいいってんなら良いよ?で、どこよ?」

「グリトニル」

「グリトニル!?」

「そう」

「マジで!?え、それグリトニル行くってこと?俺」

「うん」

「だろうな」


だがグリトニルに行くことは零や黒もいて何かと便利である。

(まあ反旗団やるって事を考えればある意味ベストかもな…そういやなんか忘れてた気が…)


「あ!思い出した!カフェの二階に広い部屋か何かある!?」

「あるけど…何で?」

「反旗団の拠点が欲しくて…」


晴斗は元々そこで悩みながら東区駅前を歩いていたのだ。(読者も忘れていただろうが)


「なるほどね…反旗団拠点…良いよ!」

「ヨッシャ!」

「ただし交換条件が3つあります」


そう言って由依は指を3本、前に突き出す。


「一つ。晴斗くんにはティエラのバイトとして働いてもらいます」

「それなら大丈夫かな」

「うんうん。おれ以外にも働き手が欲しいもんな」


一つ目の条件は大して難しく無いようだった。

もっとも、仕事内容そのものを聞かない限りキツいかどうかはわからないが。


「もう一つは、私を反旗団に入れて欲しい事」

「あーハイハイ、反旗団に入団ね、了解~…って、は!?」


晴斗にとって予想外の言葉が由依の口から飛び出す。

確かに人は多い方が良いのだが、自分から志願して欲しいとは思っていない。むしろ、今回の由依のように危険な事が起こる方が多いと思われるので無理して入って欲しくは無かったのだ。


「私みたいな…患者、で良いんだっけ?ほっとけないからさ。助けれる人を助けたいと思うの」


そういうことか…晴斗は内心呟く。患者をケア出来るのは似たような体験をした患者だけ…ならば患者にこそ救える人々がいる筈だ。


「そういうことなら。こっちとしても喜んで歓迎するよ」

「うん。ありがとう」

「で、もう一つは?」


そして…最後の一つは…


「今度、二人っきりの時にでも教えるよ」


そう言って由依は家の中に入る。

残った晴斗も拠点を整理するため由依の家に入ろうとする。


「じゃあ俺も拠点を整えに…」

「ちょい待ち」


が黄土に止められる。


「反旗団って何?」


ここまで聞かれたのだ。しょうがない。

黄土にも全部話すことにした。

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