ペタの村 ①
村(…というかほぼ町)の門をくぐった時には既に夜になっていた。半日で行けるなんて嘘だったんだ。
「ミドリ様、戦闘を全てお任せしてすみませんでした。やはりミドリ様はお強いのですね。私、今まであのような強い、そのうえ技術も伴った戦闘を初めて見ました」
「道案内頼んだんだし、おあいこでいいって言ったろ」
「はい。本当にありがとうございました。私たちはもう行きますので、ここでお別れとなります」
「ああ、ありがとな」
そう言って、ルーフィアたちとは別れた。
「おい、俺はここからどうすればいいんだよ」
…誰に言っているのだろうか。
しばらく歩いて、とりあえず宿屋を見つけた。
「今日はもう休むか。かなり疲れたな」
ということで、
「よく来たな、一人部屋は1泊ご飯無しで20コルだ。ご飯は1食5コルで朝、昼、夕方に1回ずつある。3食ともなら特別に12コルだ。」
「とりあえず3日ぶん、明日からは3食付きで頼む」
「なら、84コルだ」
宿屋の主人に84コルを渡した。
「確かに受け取ったぜ。その他の詳しいことは部屋にあるやつを見てくれ」
宿屋の主人ならそれくらいサボるなよ、と思いつつ2階の7号室に行ってみた。
「まあ、こんなもんだよな」
普通に寝泊まりするには申し分ないし、他の同質の宿屋よりは安いらしい。しばらくはここを拠点としよう。
「ご飯は夕方だけ定時に、他に必要なものは追加料金払えばもらえる、風呂は無し、ねえ」
置いてある紙…のような質感の何かに書いてあるものに目を通し、読み終わるや否や、ベッドに飛び込んだ。
一瞬のうちに、意識は無くなった…
翌朝、朝早くに起きてご飯を食べ、さっそく町に出ていった。
「かなり広い村…だな。村というよりか、これもう町だろ」
町と言われても何ら疑いを持てないだろうその村には、やはり様々な店が並んでいた。
「武器屋に防具屋、雑貨屋に露店、それに…」
その時目に入っていた店は…
「奴隷商店か…」
碧は日本生まれの日本育ちだ。奴隷制などというものを少なくともよしとする人間ではなかった。この世界で生き残るためとはいえ、こんなことをしてもいいのだろうか。
「と、とりあえずここは保留だな」
そういって、再び町を歩きだした。
その他には酒場があったり、[出会いの場]と呼ばれる簡単に言うとパーティーが組めるところがあったり、普通に大きな村だった。
しばらく歩いていると、どうやら村の端のほうに来てしまったらしい。
そこに、
「この先はペタの村の管轄外となっております。この先でいかなることが起こりましても全て自己責任でお願いします」
という看板が立っていた。
「同じペタの村なのに、どれだけ廃れてるんだ」
少しの呆れと恐怖は大きな好奇心によってねじ伏せられ、碧の歩みを進めてしまった。
そして、管轄外区域に入ったとたん、
「なんだ、この気持ちの悪い気配は」
女性の媚を売るような気配や、ごろつき共が立ててる殺気のような気配、そして何よりも一番強かったのは…
「救済を求めるかのような気配。
恐らく、借金などで首がまわらなくなった奴とかもここに連れてこられてるんだろうな」
そう、何よりこの空間に恐怖し、助けを求める気配が強かったのだ。この村の闇を全て抱えて出来たような所だ。
少し奥まで来てしまっていたが、見なかったことにして帰ろうとした。
「あ、あの、やめて…くだ…さい……」
この声を聞くまでは…