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はじめの村 ③

「「「!!!」」」


 盗賊たちは突然入ってきた碧に一瞬硬直した。碧には、その一瞬の硬直が必要であり、硬直は一瞬で十分だった。


「せいっ!」


 持ってた松明を一つ、一番近くにいた盗賊に投げた。と同時に、識別で情報を見ることにした。


 盗賊A lv.23

 メインジョブ 盗賊 lv.25

 サブジョブ 農夫 lv.26

 スキル 目利き 隠密

 装備 ダガー 盗賊の服 皮のブーツ


 盗賊B lv.24

 メインジョブ 盗賊 lv.26

 サブジョブ 探検家 lv.20

 スキル 隠密

 装備 サーベル 盗賊の服 皮のブーツ


 ガイル lv.36

 メインジョブ 盗賊 lv.41

 サブジョブ 剣士 lv.34

 スキル 隠密 目利き スラッシュ 剣の舞

 装備 毒牙のナイフ 盗賊の服 皮のブーツ(敏)



「おい、取りまきの奴等の名前もつけてやれよ。可哀想だろ」


 碧は突然上を向いてわけの分からない一言を放ちつつ、

「ガイルってやつ以外は何とか倒せるか。奴の毒牙のナイフだけ注意していくか」


 毒牙のナイフは名の通り刃に毒が塗られている。毒消しの方法が分からない今、毒を食らうのはそのまま死に直行である。


 ここまでの思考を終えたと同時に、投げていた松明が盗賊Aの体に当たった。不運なことに、服に火がついたようだ。


 ……あと二人


 盗賊たちはやっと立て直して、各々武器をとって攻撃してきた。


 碧はガイルは視界に入れるだけにして、盗賊たちの攻撃をかわしつつ盗賊Bに攻撃をしかけた。


 だが、レベル差が20以上もある。さすがに易々と倒すことは出来なかった。


「お前ら、ここの村人をどうした」


 松明とサーベルで鍔迫り合いをしながら、盗賊Bに声量を上げて聞いた。


「お前は何者だ。 この村の奴等ではないようだが」

「今は俺が質問をしている。ここの村人をどうした」

「お前に答える必要はないと思うんだが」

「ならいい…」


 鍔迫り合いが拮抗しているように見えていたガイルと盗賊Bは、血の気がひく経験をすることになった。


 一瞬、碧が力を弱めた。そこで一気に押しきろうとした盗賊Bのサーベルは次の瞬間、盗賊Bの手から離れて空中にあった。


 下から切り上げる、ことによりサーベルを飛ばしたのだ。


「あんな松明で…どうやったんだ」


 ただでさえ耐久値は高くないうえ、燃やされて更に耐久値が落ちているただの松明に鉄製のサーベルが飛ばされたのだ。しかも、松明には今のところ傷はついてない。


 その際飛び散った火の粉に盗賊Bは一瞬怯む。その隙に碧はサーベルを手にいれていた。


「意外に軽いな」

 鉄製の武器はこんなものか、などと言いながら盗賊Bに降り下ろしてみた。


 なかなか軽いが、切れ味はまあまああるらしい。盗賊Bの片腕は胴体とお別れすることになった。


「腕が…腕がぁぁ!!」


 盗賊B腕が無くなったショックと痛みで転げ回っていた。


 碧がガイルを睨む。


「おい、ここの村人をどうした」

「お前、この村見て回ったか? 誰か人を見かけたか?」

「見てないから聞いてる。もう一度だけ聞く。ここの村人をどうした」

「知りたかったら…吐かせるんだな」


 そう言うのと、サーベルとナイフが迫り合いを始めるのはほぼ同時だった。


(くっ…さすがにレベルの差が大きすぎるか…)


 徐々に碧が追い込まれていった。

 これ以上追い込まれると危険だ、というところでふと、さっきまで使っていた松明が目に入った。サーベルに持ちかえたので、捨てていたのだ。


「威勢よく飛び込んできたからどんだけ強いかと思ったら、拍子抜けだな」


 ガイルが一段階力を強めた。

 碧が片膝をつく形になった。


(……今だ!)


 その瞬間、碧はサーベルを片手で持った。それはつまり一気に迫り合いの力を弱めることになる。思惑通りガイルは少しよろけた。その一瞬の隙を碧は逃さなかった。


 ガイルがよろけている間に碧は空いてる片手で松明を掬い上げるようにしてガイルに向かって投げた。と同時に、サーベルを持っていた手を軸に逆立ちのままガイルに向かって飛んでいた松明ごと、ガイルの腹を蹴った。


 ガイルは既にほぼ絶命している盗賊Aに向かって飛んでいった。火が服に燃え移って火だるまになりながら。


 碧が体制を立て直した時には、ガイルは死体と一緒に壁に激突していた。



 残るは…


「お前だけだぞ…盗賊B」


 何とか止血は出来たものの、完全に戦意喪失していたBに碧は殺気を宿した目を向けた。


「ヒイッ!」


 どうやらもう戦うことはできないだろう。碧はそうふんで、Bにゆっくり近づいていった。その目には、既に殺気の欠片も残っていなかった。


「質問に答えてくれるなら、今回だけは見逃してやる」

「ここの村人をどうした」

「ほとんどの奴は…もう殺した」

「ほとんどってことは、一部は生きてるのか。まあ、女だろうな」

「あぁ、」

「この村の付近に大きな町とかはあるか」

「ここからかなりの距離があるが、西に歩いて行ったところに…中央都市バルンがある。と言うか、お前、この世界でバルンを知らない奴がいるとは…」

「あぁ…ちょっとな」


(バルン、ねぇ…まあ、また学校終わってから攻略しますかね)


「聞きたいのは以上だ。さっさと出ていけ」


 そう言うや否や、盗賊Bは一目散に逃げていった。


「さて、装備ドロップしてるかな」


 振り返ってみると二つの塊はまだ燃え続けていた。服や靴も一緒に。


「装備…ドロップしないのか?」


 しばらくして、ほぼ燃え尽きた後も経験値表示等のウィンドウは出てこなかった。


「このゲーム、やけに不親切だな。装備が欲しけりゃこうなる前に盗れってか」


 仕方ないので燃えてなかった[ダガー] [サーベル] [毒牙のナイフ]だけ拝借して、碧も穴を出た。


 ふと、レベルがどれくらい上がったか気になり、目を凝らして自分を見てみた。


 しばらくして、


 雲英 碧 lv.3

 メインジョブ 村人 lv.7

 サブジョブ ???? lv.2

 取得ジョブ 探検家 剣士

 スキル 識別 世渡り上手

 装備 サーベル


「取得ジョブ? レベル上昇によるものか、経験によるものか…。」


 外に出ると、夕方になっていた。


「やばいな、ちょっと遊びすぎたか。そろそろ帰らないと怒られるな」


 そう言って帰ろうとログアウトしようとした。右手をかざした状態で止まってしまった。


「あれ、これ…どうやって…」


 そう、ログアウトする手段を今現在、碧は持っていなかったのだ。

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