速報
その日私は、非常に体調が悪かった。本当なら居酒屋のバイトを休みたいと思った。
しかし、それは出来ない。
いつもギリギリの人数で店を回している。
私が休むと、他の誰かが代わりに出勤しなければならなくなるのだ。
私は、他の人に迷惑をかけたくなかった。
出勤時間は刻々と迫ってくる。
私はどうすればいいんだ。
悩んでいると、玄関のベルが鳴った。
近所にすむバイト仲間のAちゃんだ。
昨日から風邪気味だった私を心配して、様子を見に来てくれたのだ。
私は、正直に具合が悪いことを伝えた。
そうしたら、もともと休みだった彼女は、代わりにお店に出ようか、と申し出てくれた。
私は決めた。
今日は休ませてもらおう。
Aちゃんには感謝してもしきれない。
一時間後、部屋でテレビを眺めながらお粥をすすっていると、ニュースキャスターの女性が急に緊迫した表情に変わった。
列車脱線事故だという。
画面が切り替わる。
「……っ」
私は理解した瞬間、持っていたスプーンを取り落とした。
この時間、この路線。
私たちがいつも通勤に使っている電車だった。