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白き雪の足跡は。  作者: 宙来
本編 二つの道。
9/23

第九話

 本日、私が記憶喪失の状態で目を覚ましてから3日目。

 “お母様”によると、私の兄が留学先から帰ってくるそうだ。

 到着予定時刻は夕刻らしい。


 何となく、兄が帰ってくると聞いたときから落ち着かない。

 “お母様”も“お父様”も“ルーベルト様”も“使用人”達も、何となく信用できない。

 疑心暗鬼になっていると言われればそれまでだが、それとはまた違う気がするのだ。もしかしたら、リサ・アージェンとして生きてきた20年間が今の私に警告をしているのかもしれない。

 “ルーベルト様”を拒絶したいと考えたことも。


「お嬢様!若様がお帰りになりました!」

「今行きます」


 突然飛び込んできた侍女の言葉に服装を整えながら、早足でエントランスホールへ向かう。

 現在時刻はおやつ時。つまり、まだまだ昼なのである。


「お兄様のお帰りは夕刻ではなかったの?」

「そのはずですが……」


 実際には昼に帰ってきたと。


(一体どうなっているのやら)





「リサ!」

「…お帰りなさいませ、お兄様。王太子殿下のお付きは宜しいのですか?」

「許可はもぎ取ってくるものだよ、可愛いリサ。怪我は大丈夫なのかい?」

「はい。今朝に包帯が取れたばかりですけど、かなりの早さで治っているからと、お医者様が」


 柔らかく抱きしめられ、その腕の中で兄妹らしい会話を交わす。

 “お母様”や“お父様”、“婚約者(ルーベルト)様”に抱き締められたときには全く感じなかった安堵。それを、お兄様の腕の中ではとても感じる。

 お兄様に関することは混乱することなくすらすらと思い出せる。


 危険人物と安全な人を分けているのかもしれない。


 そう思いつつ、エスコートされるままにサロンへ移動するのだった。

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