表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白き雪の足跡は。  作者: 宙来
本編 二つの道。
7/23

第七話

 一人、静かに笑う女がいた。

 その女は、言葉にできないナニカを持っていて。

 一人、静かに考える。


(われわれ)にも伴侶となるべき者というのはいるのですよ、瑠璃。必然的に出会い、必然故に惹かれ、必然がために唯々恋い慕う相手が。…貴方は、まだ若いですがね……」


 うふふ、と静かに笑う。


「貴方は、…どうしますか?」


 静かに、笑う。





 息子は、産まれたときから既におかしかった。

 産声一つ上げず、泣き叫ぶこともない。

 ただ、虚ろな瞳をみせるだけ。


 それが変わったのは、友人であるアージェン伯爵のお嬢と会わせたときだろうか。


 まるで、年相応に瞳を輝かせて彼女を見ていた。

 初めて楽しそうに遊ぶ姿を見て、アージェンに迷わず婚約を申し込んだ。

 幸い、我が家の領地は王室御用達の絹がとれる。多少融通するだけでも金貨数百枚が浮かぶぐらいの人気ぶりで、伯爵家相手であろうと切り札にできる物だったのだ。

 政略結婚をさせるつもりはないと初めは断られたが、切実に事情を話せばお人好しの気がある彼は迷いながらも了承してくれた。

 少々強引に婚約を了承させた私の良心は痛むが、息子が幸せになってくれるならと思い、それを無視した。


 頻繁に伯爵家へ通わせるようになってから数年。

 アージェンに『お前の息子のことで…』と相談されたのはいつだったか。

 そんな心配は無用だろう、と笑い飛ばした我が身を懲らしめてやりたい。

 今思うと、近すぎた故にわからなかった、のだと思う。



 アージェンの懸念は決して的外れの物ではなかったと、身を持って知ることになったのだから。



 それを聞いたとき、最初は冗談だろうと思った。

 だが、アージェンの側近だという送られてきた使者は蒼白だった。

 急いで駆けつけたとき、そこにはひどく満足そうに笑う息子がいたのだ、間違っても冗談ではないのだと突きつけられた。


 ルーベルトがやったことは、強姦、だった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ