ホワイトデー 2
夜。
月が昇り切った時間帯に瑠璃は来る。
それはいつものこと。
瑠璃にだって仕事がある。私のために仕事を疎かにする、なんてことになったら別れるよ、と脅した為である。
仕事と私、どっちが大事なの!?なんて醜いことはしないの。
貴族令嬢たるもの、旦那様を支えるぐらいはしなければ。
☆
『今日は夜更かししますわ!』
と宣言した妹は、瑠璃君のことを待っているのだろう。
5・6歳の時から、決まった日に父上や私に贈り物をしてくれる可愛いリサ。その習慣が何に基づいたものかは分からないけれど、その行動を知った他の貴族令嬢によって今日、そして一か月前の今日の贈り物日は社交界に根付いていた。
この贈り物日によく売れるのは、衣服だったり菓子だったり花だったりする。
要は、恋人なり伴侶なり家族なりに贈りたいと思えるものが良く売れる。
その経済効果は毎度毎度凄まじい。
まあ、買っていくのが貴族であるっていうのが一番大きいけれど。
瑠璃君という良い恋人を得てから、リサはさらに綺麗になった。
お蔭で甘い蜜を得ようする男は数知れず。
虫を除けるのに毎回苦労する。
瑠璃君もわかって、今回の贈り物を選んだのだと思うけど。
「リサを泣かせたら容赦しないよ?」
月に向かって笑った。
☆
漸く仕事が終わり、さあリサのもとへ行こうと思って道を開け、聞こえた言葉に後ろにいた部下達が震え上がっていた。
「…なんで君達が怯えるのさ」
「「「怖いじゃないですかっ!」」」
「……そう?」
要はリサを泣かせなきゃ良いんでしょ?
☆
ああ、瑠璃様が悪い笑みを浮かべている……。
「伴侶様、申し訳ありません…」
どうか穏やかに終わりますように、と願っても良いと思うのです。
まだまだ続きます。
お月様にはいきません。




