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白き雪の足跡は。  作者: 宙来
本編 二つの道。
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第十話

 少年は、一人囁き。


「記憶封じは貴女が無意識に行っていることだよ、里紗。僕は関わっていない……。つまり、貴女のお兄様はリサにとっても里紗にとっても信頼できる人物である証拠。3日しか滞在しないみたいだけど……この期間に“婚約者”は引き剥がしておきたいな」


 冷たくも妖艶な笑みを浮かべて、アージェン伯爵邸に近づくルーベルトを見つめた。


「君に対して厳しい態度しかとらないお義兄様は邪魔で仕方無いんだろうけど……そう簡単に思い通りに行くとは思わないで欲しいな」


 少年は、嗤う。


「まずは、里紗からかな」


 生まれ変わった最愛の(ひと)

 唯一人のために、神は。





 ルーベルトは、焦っていた。

 自分自身に対し、親の敵であるかように冷たい態度しかとらない未来の義兄が伯爵邸に帰っていると聞き、リサが自分のことを覚えていないと知れば婚約破棄となる、そんな未来を想像してしまったからだ。


 王太子の側近としていることを許されている次期伯爵に対し、副騎士団長でしかないただの子爵と。


 どちらの言葉が優先されるかなど比べる必要もない。


 お人好しのアージェン伯爵から実権を奪い取ったその手腕は決して伊達ではないのだから。



 仕事の関係で知った暗殺ギルドに連絡を取り、三日後には留学先に戻るらしい次期伯爵の暗殺を依頼し、自分は挨拶と称して伯爵邸に向かう。


 リサとの婚約が破棄されないうちに。


 気持ちばかりが急いていくのだった。





「……不思議、ですわ」

「何がだい?」

「お兄様に関することはすらすらと思い出せますの。でも、お父様達やルーベルト様のことは全く思い出せなくて…」

「…それは、不思議だね」

「何故でしょう…」


 サロンでゆっくりと紅茶を嗜む私と(リサ)

 リサの言葉は、周りに控えていた使用人達に衝撃を与えていたが、私からみれば困った顔をしている妹は全く気にしていない…いや、気づいていないようだった。


「後で、どこまで覚えているのか検証してみようか」

「はい、お兄様」


 妹と過ごす時間を確保できた私は、上機嫌でルーベルトを入れないよう使用人に命じた。

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