第一話
初めまして、宙来と申します。
この小説を読むにあたり、留意して頂きたい事。
・この小説はナツ様が主催されている『共通プロローグ企画』参加作品です。
・区切りが良いと思った時点でそれを一話としている為、全体的に短いです。
1000文字超えている話は少なくなっています。
・視点変換は星です。
・パソコンなどルビがきちんと表示されるもので読む事を推奨致します。
以上、楽しく(?)呼んで頂けると幸いです。
葉野菜様につられたーと嘆きつつも頑張ってみます。
夜半に降り出した雪は眠るように横たわる一人の女の上へ、まるで薄衣を掛けたようにうっすらと積もった。
一面の白に反射した光が彼女の黒髪を照らしている。
音すらも包み込む静かな雪の中、一人の男が近づきそのまま彼女の脇に屈み込んだ。それに合わせ装身具が冷たい音をかすかに鳴らす。
男は剣をしまうと目を閉じたままの女の息を確認し、彼女を抱え上げた。青白い頬に血の気はないが、少なくとも生きている。急がなければ――。
力強く雪を踏みしめ、男は足早に来た道を戻っていった。
☆
「……」
剣を磨いて磨いて磨いて磨いて―――…。
何度もその動作を繰り返しているその男の目線に映っていたのは、剣ではなく一人の女。
ただ一人、男が惚れ込んだ女。
しかし、彼等には意図せぬ認識の差があった。
男は、ただひたすらに女が愛しく、その気持ちを彼女が受け入れていると思っていた。
だが、女は幼馴染みとして扱われているのだと、幼馴染みとはいえ異性だからこそこんなにも優しい対応をしてくれているのだと、思いこんでいた。
男として扱われないことと、女を思う心が押さえきれず、異性として心募らせていたことをわからせた上でその責任をとると伯爵令嬢である女の父親に結婚の申し込みをし、その申し出を伯爵は受け入れた。
貴族にとって、純潔を奪われた令嬢など嗤い者になるだけだったから。
でも、女は。
「………何故、逃げた」
男は、ぽつりと呟く。
受け入れられたはずだった。婚姻することにも同意したはずではなかったのか。
ただ一つだけ、だが答えが齎されれば全てに対する答えとなるはずの疑問が、頭を渦巻いていた。
女が失踪して二日足らずだが、幼少期から長い時間をともに過ごしてきた男からすれば、見つけるのはとても簡単なことだった。
だが、気がかりなことがある。
女は、れっきとした伯爵令嬢である。そのため、例え真夜中に長時間歩きやすい格好で邸宅を飛び出したとはいえ、伯爵家の紋章が掘ってある何かしらを身につけているはずなのだ。
しかし、保護した女の持ち物、身につけているものには刻印が一切なかった。それどころか、服装も失踪したときに着ていたとされたものとは全く違う。
その上、体には無数の打撲痕があった。
とどめに、後頭部にあった深い切り傷。
何事もなかったとは口が裂けてもいえない。
何があったかはわからない。だが、女の身に異変が起こっていたら、それを利用しない手はないと仄暗い思考を張り巡らせていた。
女は、目覚めない。