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囚われて

もうどのくらい走っただろうか…朝から続く胸騒ぎが、黒王を急かすように走らせる。

とにかく早く使いを済ませて帰らねば…

そんな気持ちが頭の中を占め、ひたすら走ることを黒王に伝えてくる。

いつもなら…朱緒と山の風を楽しみながら歩く南の里への道も、今日はそんな余裕もなくひたすら前を向いて走るだけだった。


ざわり………


なんとも言えない嫌な風が笑うように黒王の側を通り抜けた。

それを感じた黒王は思わず足を止め、今走って来た道を振うり返った。

山から感じる気配がいつもと違う。

黒王は頭を振ると、腰着けた水筒を手に取り傍の岩の上に腰掛ける。

一口水を含んだところで、何かが下草を揺らして走って来るのを感じる。

それはまるで大きな蛇が流れるように走る様子にも見えた。

黒王は思わず腰の大鉈に手をかけた。


ざわざわざわ………がさり!


黒王の数歩手前に、何かをくわえた山犬が出て来る。

山犬は尾を振りながら黒王のところに近付くと、くわえた物を足元に落とした。

そうして黒王の袖に食いつき引っ張る。黒王は山犬を押さえ、何であろう?…と落とした物を拾い見た。

手にしたのは、先程自分を見送ってくれたじい様の着物の片袖であった。

その片袖にはべったりと血が付いていた。


『何かあったら山犬を使いに出す。』


出掛けのじい様の言葉が頭に浮かんだ。

黒王は飛び上がるように立ち上がると、山犬に案内され飛ぶように走り引き返して行った。



ここは一体どこであろう…朱緒はそんなことを思いながら重い体をゆっくりと起こした。

見慣れない暗い部屋の中を見回す。

確か黒王を見送ってしばらくして、いつも入り用の物を売ってくれる峠の店の主がが訪ねてきたところまでは思い出した。

頼んだ布地が来たからと…そう言って来たから戸を開けたのだが…その後の記憶がはっきりしない。

朱緒は頭を振りながら自分がどうしてここにいるのか思い出そうとしていた。

あのあと…誰かがいきなり入ってきて…じい様に山に逃げろと言われて…

それから…それから…………

ぼんやりとした頭は思い出すのを拒む様に、肝心のところを霞に隠し答えを見せようとしない。

ここは一体何処なのだろう…せめてその事だけでも判れば…そんな事を思いながら、朱緒は部屋の中を見回す。

暗い小さな部屋に置いてある物は何もなく、天井近くに申し訳程度に開けられた小窓から陽が射し込んでいるだけだった。

朱緒はよろめきながら立ち上がると、出入り口の方に歩いて行こうと一歩踏み出した。


ガタリ!


そんな音を立てて自分が行こうとした戸が開き、眩しい光と共に男が一人入って来た。


「…目が覚めたようですね。」


部屋の出入り口の前に立ち塞がるように男が立つと、戸はまた閉められ元の薄暗い部屋に戻る。


「ようやく私のところに来てくれた…」


男はそんな事を言いながら、朱緒に近づいて来る。

ぼんやりする視点がはっきりその男を捉えた時、朱緒は血の気が引くのを感じた。

蛇のように冷たい視線が、自分の体に纏いつく(まといつく)ように投げ掛けられているのに気づいたからだ。

その視線はじい様のところに行くまでずっと感じ、薬草を売りに来た時に時折里の中で感じていた嫌な視線を投げかけるその男だったからだ。

朱緒は後ずさるように後ろに下がった。

男は朱緒を壁際に追い詰めるようにゆっくりと近づいて来る。


「家へ…家へ帰してください!」


体は壁にぶつかり、もう後が無いことを教えた。

朱緒は叫びながら壁伝いに、入り口の方へそのままの姿勢で体を動かす。


「それはない…せっかくお招きしたのに何ももてなしもせず帰すなぞ…」


男は尚もじりじりと追い詰め、手を伸ばせば捕まえられるところまで来た。

朱緒は男の横をすり抜ける様にして反対側の壁に逃げる。

しばらくそうやって男を交わしていた朱緒は、やっと戸のところにたどり着き戸を開けようとするのだが…戸は固く閉じられ開かない。


「誰か!ここを開けてください!誰か!」


隙間から覗くと人がいる筈なのに、応えるどころかまるで誰も居ないように装い動かない。

それでも朱緒はとにかくこの部屋から出たい…その一心で叩いて助けを求めた。

後ろにあの気配が忍び寄ってくる。

背を戸に向けて、男に向かい朱緒は叫んだ。


「こ…こんなところに閉じ込めて!嫌です!帰してください!」


その様子を男は薄笑いを浮かべながら見ていたが…


「どうして帰さねばならないのです?せっかく手に入れたのに。」


朱緒を掴むとそこから引き倒すように、部屋の真ん中に引きずり出した。

朱緒の体は勢い余って床に転がる。

はだけた着物の裾から、白い足が薄暗がりの部屋に浮き上がった。


「初めて見たときから、貴女を自分のものにしたいといつも思っていましたよ。」


男はそんな事を言いながら、白く滑らかな朱緒の足に触れようと手を伸ばした。

朱緒は着物の裾を直し、その嫌らしい手から逃れようと足を畳んだ。


「貴女は私にとって特別な存在。」


男は朱緒の体を巻き付けるようにして背後に座ると、腕で絞め上げる様に抱きしめる。

顔を近づけ首筋に顔をつけるようにしてくる。

朱緒はそれを拒み身をすくめ、逃げようとするのだが抗う毎にその腕の力は強くなる。


「貴女は憧れであり癒しでした…それをあの爺が取り上げるようにあんなところへ連れて行った。

その上あんな男にふらりと現れ、居着いた余所者のあの者が傍にいるのを許している。」


男は朱緒の体を舐め回すように擦り上げ、着物を剥ぎ取ろうとする。

朱緒はどうにかして逃れたいと身をよじる。

男はそれを更に締め付けるように絡み付き…それが繰り返される。


「今はもうあの頃の私ではありません。貴女がここにいた頃の…親父に押さえつけられ叱られてばかりの。

うるさい親父が逝ってくれた時は、天にも昇る気持ちでした…里長になれば力も手に入りますから。

貴女にも贅沢をさせてあげられます。こんなぼろのような着物ではなく、絹の着物を…欲しいものは何でもあげますよ。

あんな冴えない男に何が出来ると言うんですか?

特別な貴女に相応しい生活をさせてあげますよ。」


口を吸おうと朱緒の顔を無理やり自分の方に向ける。

朱緒は少し緩んだから片手を外しそれを拒んだ。

それでも諦めず男が顔を近づけたその時…男の頬に熱いものが走った。


がりっ!


朱緒の目は男を睨み付けて怒りに燃えている。

自分をこんな目に遇わせたでけでなく、じい様や黒王の事を悪く言うその者が許せなかった。


「じい様も黒王も…お前みたいなつまらぬ男ではない!黒王は…黒王は…

着物も贅沢な暮らしもいらない!黒王のところに帰して!」


男は顔に手をやると掌についた自分の血をしばらく眺めていた。

朱緒の口から黒王の名が出たのが許せなかったのか、そのまま朱緒の横っ面に張り手を飛ばす。

朱緒は床にそのまま体を床に打ち付け気を失う。


「…ふん、まあ良い…抗うがいい。そんな気持ちも湧かぬようにしてやる。」


男は気を失った朱緒に向けてそう言うと、部屋を出て行った。



黒王が家に着いたのは、陽が傾き始める時間だった。

家の戸は壊され、部屋は滅茶苦茶に荒らされていた。周りを巡り朱緒の姿を探すが見つからない。

家の裏の木を積み上げたところで、崩れ落ちた薪に足を挟まれ動けぬじい様を見つける。

黒王は背負ってじい様を部屋の中に連れて入ると、傷の手当てを始めた。


「…黒王…すまぬ…」


じい様は静かに黒王に詫びた。


「…肩の傷は思ったより浅い。足も骨は折れておらん…じい様が無事で良かった。」

「黒王…すまぬ…」

「すまぬのはこちらじゃ、じい様に怪我をさせてしもうた。襲ってきたのはあの者か?」


黒王はちらりとじい様を見て、傷の手当てをしながら訊ねる。


「まさか朱緒が懇意にしておった店の者に裏切られるとは思わなんだ…」

「店…と言うと、峠のところにあるあれか?」

「そうじゃ。あれは里の者とも縁があるからと安心しておったのに…

そなたが出たあと、その者が訪ねて来た。

朱緒に声をかけ戸が開けられると、その後それと一緒に来たであろう数人の男が雪崩れ込んできた…

この辺りでは見ぬ見知らぬ者ばかり…」

「男の特徴は?」

「体格はそなたくらいかの…入って来た男は皆そんな体付きをしておった。

汀と二人で、とにかく朱緒を山に逃がそうとしたが人数と力に負けてこの始末。」


じい様はしゅんとした様子で話す。面目無い…そればかり口にしていた。

傷の手当てが終わると、黒王は身仕度を始める。

手甲や脛当てをし、それはまるで戦仕度のようだった。


「じい様が無事だった…それだけで十分じゃ。何かあれば守り人の里の者に恨まれてしまう。

汀は姿が見えぬが大丈夫なのか?まあ、汀はすばしこいからの…まるでいたちのようにすばしこい。」


黒王はわざと明るい声でじい様にそう言った。


「汀は怪我もせず無事じゃ。だから拐った男らの後を追わせた。」

「そうか…じい様何か要るものがあるか?その足では歩くのにもままなるまい。要るものがあれば傍に置いておく。」


黒王はいつもの調子でじい様に訊ねる。じい様は何も要らぬ…と、言うと身仕度を終えた黒王の背中を見つめていた。

その背中からは、ゆらゆらと燃えるような揺れる気配が立ち上がっていた。

じい様はそれを見ながら声をかける。


「行くか?」

「朱緒が迎えを待っておろう。あれは勝ち気なようで、なかなか怖がりなところがあるからの。

それに何をするやら見ておって危ない…早く行かねば…」


振り返った黒王の目は、獣が獲物を狙い見定めるような目をしていた。

じい様はその目を見ると、静かに目を閉じて何やら考えておった。


「黒王…ちょっと頼まれてくれぬか。」


家から出ようとする黒王を呼び止め、傍にやって来た黒王に懐から出した小さな小袋を渡す。


「これを…汀に渡してやってくれ。」

「わかった…渡せば良いのだな。」

「すまんの…」


黒王はそれを受け取ると懐に納め、すぐに戻るから…と言いながらゆっくりと外に出て行こうとした。

ふと足元に落ちていた、朱緒が好きでいつも手にしていた手拭いに手をかける。


『黒王!助けて!』


風の中に朱緒が助けを求める声が聞こえたような気がした。


「…朱緒…待っておれよ…」


黒王は呟くと出入り口から風のように走って行った。

じい様はゆっくりと立ち上がり、黒王の走っていった中の里に続く道を眺めながら小さく溜め息をつきながら呟く。


「時が…来たのかもしれんの。中の里は終いじゃな…

まあそれも仕方あるまい…臥竜の逆鱗に触れてしもうたのじゃから…

どれ…わしも動かねばなるまいて。」


じい様が外に出ると同時に一陣の疾風が走る。

風は誰も居ない家を揺らし通りすぎて行った。



夕刻近く…近くの荘園から、一台の牛車が中の里に着いた。

最近この牛車の持ち主…すなわち荘園の主が里長の屋敷によくやって来る。


「お待ちしておりました。」


里長は、恭しく主を迎えた。

男は裕福な貴族なのか、織りの豪華な衣装を身に纏って(まとって)いる。年の頃は里長と変わらないくらい。

似た者同士が寄り集まると言うが…その男も里長とよく似た気配を持っており、なんとも得体の知れない目をしていた。

屋敷の奥の部屋にその男は通され、里長相手に酒を飲み始めた。


「遂に手に入れたんですよ。」


里長は自慢するように話し始める。

男はちらりと見ると杯を傾けながら、何を手に入れたか男に聞いた。


「前から話していたでしょう…里の宝…」

「お前が欲しくてたまらないと言っておった?」

「ええ…番人の居らぬ間に、かっさらって来ました。今頃は南の里に走っておる事でしょう。」

「何か画策して?」

「もちろんです。貴方にお借りした方々に、あちらの里の外れを荒らして頂きました。爺に伺いを立てねばならぬように…」


里長は得意気に自分の悪巧みを披露する。

男はそれを肴に酒を煽っていた。


「…で?」

「見張りに出していた者が、今朝…番人が離れたと言ってきたので迎えに行かせたのですよ。」

「ふふ…間抜けな番人もあったものよの。その番人…どんな男なのだ?」


男は目の前の男が執着するものを守っていた…という番人に興味を持ち、どんな男か聞いてみた。


「背の高い大男で、髪の色が赤みががった色で…目も何やら人より薄く、鬼のような感じのする男です。」


里長の言葉に何やら思い出すようにしていたが、しばらくすると低く唸るように呟いた。


「…鬼黒…あやつ生きておったのか。」

「それは…一体何者で?」

「この辺りの荘園を荒らしておった者よ。私の屋敷も襲われて…どこかで死んだと思っていたが。

その男…捕まえたら金をやろう。そうだ…警護の者を貸してやろう…」


男はそう言うとニヤリと笑った。

それから従者を呼ぶと、自分の屋敷に帰り人を連れて来るように言いつけた。


「お前も運が良い男よの。」

「その運…お分けしますよ。残念ながらお下がりになってしまいましたが…」


里長はそう言うと人を呼び朱緒を連れて来るように言った。

しばらくすると手を縛られた朱緒が部屋に連れて来られる。

目の前に引き出された朱緒を見て男は喜んだ。


「…賎しい女にしては美しいの…」

「そうでしょう…先代の話では、龍神の娘と言ってましたか。

その話し…本当かどうかはわかりませんが。」


男は座から立ち上がり、朱緒の傍に行くと物を見るような目で朱緒をじろじろと見る。


「面白い趣向じゃな…龍神の娘か…龍の逆鱗に触れるぞ?」


男は朱緒を見ながらそう言った。


「ははは…迷信する者が振り撒いた話しですよ。そんなことがあるはずない…

残念なのは、あの者悔しがる顔が見えぬそれだけです。

しっかりと可愛がってやれば、言うことも聞くようになるでしょう。」

「わからぬぞ?鬼黒は神出鬼没…」

「…現れたら現れたで、女を盾に捕らえればいい事…

その時はその時ですよ。」


二人の男は笑い合いながら、これからしばらくの楽しみを頭に描き喜んでいた。


(…神様…私の命を差し上げます…どうぞ黒王を御護りください……)


朱緒は男らの話しを聞きながら、心の中で伏し拝むように神に祈った。


「さて…先ずは楽しませてもらおうか…」


男は朱緒を床に引き倒した…



峠にある店の主は目の前にある金の塊を見ながらほくそえんでいた。

無理もない…こんなもの一生に何度…あるいは一生お目にかかれない物だから。

金の粒なら見たことがある…それもかなり小さな物が数粒だった。

それがどうだ…自分の目の前にあるこれは、そんな物ではない。

小さいものだが一握りの金の塊…これが喜ばずにいられようか…

朝方、中の里から使いが来て朱緒のところに案内して欲しいと言われる。

何でも朱緒が高貴なお方の目に止まり、迎えに行きたいから…と言われた。

この事は他言無用…口止め料でもらった物だが、誰に話すものか…何度も眺めては口元を緩ます。

朱緒には申し訳ないが、こんな物を手に出来るところに行くのだから損は無いだろう…

主はそんな勝手なことを考えながら、飽きもせずそれを眺めていた。


ガスン!


店の入り口から大きな音が聞こえた。主は恐る恐る店の方へ歩いていく。

店に行くと、閉めた筈の戸が打ち破られるように壊されていた。

主はその有り様に慌てて駆け寄った。


「ちょっと物を訊ねるが…」


店の入り口にたどり着き壊された戸に手をかけた時…後ろの暗がりの中から低い男の声が響いた。

その声は穏やかに聞こえるが強い殺気を帯びていた。主はごくり…と、唾を飲み後ろを振り返る。

そこには大きな男が目を光らせて立っている、主が持って来た暗い灯りを手にした男は灯りで自分の顔を照らし見せる。

その顔はまるで鬼のように見えた。


「…く…くろ…黒…王…」


主はあまりの形相に腰が抜けたのか、へなへなと床に座り込んだ。

その主の顔を覗き込むようにして、黒王は先程の言葉をもう一度主に向けた。

主は目を見開き、口を動かすが言葉にならない。

黒王は、そんな主の襟首を掴み引きずるようにして奥の部屋に向かった。

転がすように主を部屋に投げ込むと、腕を組み仁王立ちして見下げるように主を見る。


「…今日…うちに来たそうだな。何用でやって来た。」


声音は穏やかに聞こえるが、その言葉には激しい怒りが込められている。

主はその声に怯えて口をぱくぱくとさせるだけだった。


「黙っておってはわからぬであろう!」


黒王が一喝すると主は股の間を濡らし涙を流し始める。

その主の髪を掴みしゃがんで顔を近づけると、穏やかな声音で耳元でもう一度聞いた。


「何用でうちに来た。」

「…あ…あん…案内を…た…たの…頼まれた。」

「誰に案内を頼まれた?」

「み…見知らぬ…お…男達に…」

「里の者でもない見知らぬ者に案内を頼まれたか…その者等はどこからやって来た。」


問いかけに怯えてなかなか答えない主の有り様は、黒王を苛つかせ殺気を体にみなぎらせる。

主はそれに気づき、部屋の隅に這うようにして逃げると黒王を拝むように伏して事の一部始終を話し始めた。


「お…お助けを…ぜっ…全部言います。だから命だけはお助けを…

け…今朝方、中…中の里の者の案内で見知らぬ者が数名やって来て…高貴なお方の目にあ…朱緒殿が止まったから、迎えに行くため案内しろと…」

「中の里の?やって来たのは誰だ!」

「さ…里長の屋敷にいる者です…」


主の答えに黒王はやはりそうか…と思い、部屋を出ようとした。

主は何もせず、黒王が出ていくのにほっと胸を撫で下ろす。


こつん…


小さな塊が黒王の足先に当たる、拾い上げると金の塊が転がっていた。


「…案内の謝礼と言うことか…」


その塊を見るうちに収まっていた怒りが再び込み上げる。


(こんな物のと引き換えに、朱緒は怖い目にあっておるのか?)


そう思うとこの主が許せなくなった。

金の塊を手の中に握ると、その様子を後ろで見ている主に一振り拳をぶつけた。

主は出し抜けに飛ぶように飛んでくるそれを交わせず顔面に食らい昏倒する。

黒王は歯もへし折れ、口を開け血まみれの顔を晒す主の口にその金の塊を押し込むと、店を出て中の里に向かった。

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