やっぱ、愛は世界を救う!コレ常識でしょ?
ゆる~いファンタジーを目指しています。ちょっとした息抜きでどうぞ。
あくまでも初心者ですので、生暖かい目で見守ってください。
「・・・・・・・・・、っておまえも何か反応しろよ!」
今私は、白いモフモフとしたウサギと会話するという、ファンタジーな状況に置かれている。
何故、こんな状況になったかを語る為には、話を1日前に戻さなくてはならない。
その間、この白い獣は無視しよう。やかましくて、話が進まないからだ。
さて、この大陸には数々の国があり、独自の文化を育んでいる。
国同士の大きな戦争もたまにあるが、基本的に『人同士』の戦争はほぼないといえるだろう。
なぜなら、人類共通の敵『魔人族』がいるからである。
国同士の戦争も、元を辿れば魔人族が絡んでいたなんてよくある話だ。
彼らは、外見は人に近いが、総じて魔力が強く、力こそ全てな種族だ。
人に近いと言ったが、二足歩行の獣や、耳がとがっていたり、羽根や角が生えていたり、目が4つあったり・・・、言い出したらきりがないほど様々なのだ。
そんな彼らだが、人類とあまり仲がよろしくない。
彼らは人類を馬鹿にしていて、人類は人類で、人と違う彼らを嫌悪している。
当然、あちこちで大なり小なりのイザコザがあったりする。大きなものだと国家がのっとられたり、小さなものだと旅人が襲われたり、いじめられたり(?)、お金取られたり(?)と、日々人類と魔人族の争いは起こっているのである。
そんなイザコザを速やかに解決するべく、人類はある組織を設立した。
『魔人族とのアレやコレ、速やかに解決いたします』略して、M・A・S・K。
・・・・・・うん。深く追求しようとしたら終りだよ?こういうのは気にしたら負けだ。
とりあえず、先人達が組織したM・A・S・Kは、世界各地に支部を置き、日夜魔人族とのアレやコレを解決する為に勤しんでいるのである。
ここまでは、わかっていただけたであろうか?
少しややこしい部分は省かせていただいたが、ソレはいずれ別の機会に・・・
とりあえず簡単に言うと、私はM・A・S・Kの任務の為に、相棒とともに依頼主のいる町に向かって森を突き進んでいたわけだ。
1日で森を通り抜けることができなかったので、川の近くで野営することにしたのだが、あ~あの時はこんな事になるなんて夢にも思わなかったな~~~。
「おい!!ササメ!お前誰に向かって喋ってるわけ?そんなことより、俺どうすればいいわけ?」
さて、さきほどからやかましいコレ→。
小さな体を激しく動かし、後足で地面をダンダン蹴っているが、そんな姿もモフモフとしていて可愛い。
喋るウサギなんて珍しいが、『可愛さ-喋る=モフモフLOVEで、なにも問題ない。
「何が?何が問題ないわけ?」
しかし、おかしい。昨日休む前は隣に相棒のシンラがいたはずだ。
朝起きたらウサギ。
シンラが寝ていた場所にウサギ。
シンラ=ウサギ。
「おまえ無視か?相棒の一大事に無視か?」
マジマジとウサギを見てみた。このモフモフしたウサギにシンラとの共通点があるのだろうか?
ん?んん?よく見ると、シンラが身につけていた魔法使いの証の腕輪が、モフモフウサギの首にはまっている。
「おまえ、絶対にわざとだよな」
しかも、ウサギのまわりには、シンラのものと思しき服が散乱している。
「もういいよ。俺は一生このままなんだ・・・」
あ、いじけだした。まん丸になってかなり可愛い。LOVEだ。
「・・・・・・ササメ?」
「すまんすまん(笑)あまりに突拍子がないことに、頭がついていかなかったんだ」
「嘘だ!あんなに冷静だったじゃないか!そりゃ、ササメがそういう女だって知ってるけど、相棒の一大事なんだから、もう少し慌てるとかしろよ」
「だから、混乱してたんだって。目が覚めたら、目の前にウサギだぞ?そりゃ驚くって。しかも喋るし。」
信じられんといった目を向けてくるが、所詮ウサギ。
お鼻をヒクヒクさせて、お髭がピコピコしている。
「・・・・おまえ、可愛いな。いつの間にウサギに変身する魔法なんて覚えたんだ?」
シンラは絶望的な顔(ウサギだけど、なんとなくそんなかんじの顔)をして。こちらをにらんだ。
「この状況でソレを言うか?信じられん!俺がこんなに慌てているのに、わざと変身したとか言うか?お前、絶対にわかってて楽しんでるだろッ!」
「わかった、わかった、それで何故にウサギ?昨日休む前は人間だったよな?」
「当然だ!朝起きたらウサギになってたんだ!」
「・・・・・さ~て、そろそろ出発するか。依頼主も待っていることだしな」
ヨイショと立ち上がり、固まった体をほぐすように伸びをする。
「わーーーー待て待て、本当なんだよ!マ・ジ・で!!起きたらウサギになってたんだよ。俺だってありえないと思ったさ。誰かに呪われたとしても、気付かないなんてありえん!とりあえず、解呪とか色々試したが、人には戻れず今に至ってるんだ」
「確かにおかしいな。魔法の腕だけは天下一品のシンラが、魔法の気配に気付かないわけないし・・・。では、魔法以外の手段だとしたら、ソレは何か?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・全くわからんな。」
「わかんないのかよ!!」
シンラの周りには散乱した服や荷物が落ちていたが、ソコにあるはずの物が無いことに気がついた。
「シンラ。おまえ、杖はどうした?」
私の言葉に驚いたシンラ(ウサギ)が、キョロキョロと辺りを見る。
右へピョコピョコ、左へピョコピョコと跳ねている。うん、やっぱカワイイ。
あ、あきらめて戻ってきた。
「ササメ!杖が無い!」
だから、そう言ってるじゃん。
「なんか、裏がありそうだな~。コレ絶対に魔人族がらみのゴタゴタっぽいなー・・・。」
「とりあえずだ!ササメ!緊急事態だし、王都に戻ろう?このままじゃ任務に支障をきたす!」
シンラの杖は特別も特別。ドラゴンの心臓石を核に作られている。
ドラゴンに認められ、信頼されないと手に入れられない超レア物なのだ。
しかも、ドラゴンが死ぬ時しか手に入れられず、それは友であるドラゴンを看取るということで・・・
いかん、いかん、涙が出そうだ。
ということなので、シンラの杖は特別なのだ。
たとえ杖を手に入れても、使えるヤツがそうそういるとは思えないけど・・・。
「いや、王都には戻らん。このまま依頼主のとこへ行こう。シンラの杖の行方を捜しながら進む。もしかしたら、シンラをウサギにしたヤツが近くにいるかもしれないしな。」
白いモ、シンラは小さな姿で私を見上げている。なんてカワイイんだ。
「ササメ、ちゃんと俺のこと考えてくれてたんだな。ちょっと感動した。よし!このまま進もう。犯人を見つけて、人に戻るぞ!」
「ところでシンラ。その姿でも魔法は使えるのか?」
シンラは小さな目でパチパチと瞬きをしながら得意げな顔をした(ウサギだけど、なんとなくそんなかんじの顔)。
「おう!それは問題ない。杖がないから制御が難しいけどな」
「なら問題ないな、出発するぞ。ところで、おまえは私が抱いていけばいいのか?」
「なッ!!!いい、自分で歩く!」
・・・うん。1人と一匹の旅も悪くはない。ハズだ。
*************
「だから最初に言ったじゃないか。抱いていこうか?って」
歩き始めて半時ほどたった現在、シンラはおとなしく私の左腕に抱かれている。
「ウサギの体力を侮っていた!!!」
「いや、違うし!もともとシンラに体力がないんだよ。それが、ウサギになっても変わらなかっただけだろう?ウサギのせいにしちゃあ、いかん」
私の左腕に抱かれているシンラは、お髭をピコピコさせて、おとなしくしていた。
「せめて、ウサギじゃなくて、狼とか鳥とか役に立ちそうな獣がよかった・・・」
「いいじゃないかウサギ。モフモフしててカワイイし。魔法も使えて、言葉も喋れる。私は何も問題ないぞ?」
「お前に問題なくても、俺にはあるんだよ!!見ろよコレ!どっからどう見ても、愛・玩・動・物!!魔法が使えて、言葉が喋れても、ウサギはウサギだ!!」
「そんなカワイイ姿で、その喋り。初めて見る人はさぞやガッカリするだろうな・・・」
「見せんでいいし、そういう問題じゃない!」
どんなに鼻息荒く叫んでも、ウサギはウサギ。お鼻ヒクヒクさせてカワイイな~~。
はっ!いかんいかん。あんまりふざけていると、本当にシンラが怒りそうだ(もう怒ってる)。
「今はそういう事にしておけ。起こってしまった事を考えても仕方ない。これからどうするか考えていかなければ前には進めんぞ?」
私の言葉を聞き、瞳をウルウルさせながら、見上げてきたシンラの顔はとても嬉しそうだ(ウサギだけど、なんとなくそんなかんじの顔)。
「ササメちゃん!さっきも言ったけど、本当に俺のこと考えてくれてたのね・・・。ありがとう!俺頑張るよ!」
「当たり前だろ?何年シンラの相棒やっていると思っている?心配に決まっている。ウサギの生態など詳しくはしらんし、これから共に生活するにいたってソレは致命的だろ。ところで、主食はニンジンでいいのか?」
「おいーーーーー(怒)!!!」
かくして、シンラの激しいツッコミは森中に響きわたったのである。
おしまい。
「なわけないだろ!何?何勝手に終わらそうとしてんの?おまえ、俺のことそんなに嫌い?あぁ、そうか。俺の事嫌いだから、そんな態度なのね。もういいよウサギで、一生草でも食ってるさ」
いけない、いけない。あまりにもモフモフとラブリーな姿に暴走してしまったようだ。
私は歩みを止めて、本気でいじけてしまったシンラの頭を優しく撫でた。
何度も撫でていると、シンラの(ウサギの)真っ黒でまん丸な瞳が細められて、気持ちよさそうにしている。
「とりあえず、何がどうなってウサギになったか、全くわからんが、『誰か』が関与しているのは間違いない。見つけ出して、シンラを元に戻させる。必ずお前を元に戻してやるから、今はウサギライフを満喫していろ」
シンラが、小さく頷いたのを確認した私は、再び森の出口に向かって歩き出した。
杖が盗まれ、シンラがウサギにされたのは果たして偶然だろうか?
私達も、その筋(力こそ全てなバカ連中)には、そこそこ有名だし、狙われていた可能性は高いだろうな。ってことは、やっぱり魔人族がらみのゴタゴタか・・・。
しっかし・・・、ウサギね。
シンラからしたら、屈辱以外のなにものでもないだろう。
魔法使いが杖取られて、魔法をかけられましたなんて。しかも小さな小動物だし(笑)。
シンラにかけられた魔法が今後変化しないとはかぎらないし、何とか早く犯人を見つけなくては。
歩き続けていると、ふと異質な気配を感じた。
?なんだ?動物?にしては、気配が大きすぎる。
人?いや、違う!魔人族だ!
「ササメ!」
私の緊張を、抱かれているシンラも感じたようだ。
数は・・・5人(匹?)か。
さてさて、この事件の関係者だとありがたいな。探し回る手間が省ける。
気配を探りながら、ジッと立ち止まっていると、背後の草むらから顔にビッシリと毛が生えた獣人が現れた。
「おや?魔人族が何の御用ですか?急ぐ旅なので、残念ながらお相手はしてあげられないんですよ」
私は、挑発をするように、顔毛だらけ獣人を見据えた。
「まぁ、そういうな。少し遊んでくぐらいかまわんだろ?時間はそう取らせないさ。」
そう言うと、周りから顔毛だらけ獣人その2、その3、その4、その5が現れた。
「あ~何?おたくら追いはぎですか?」
やれやれとしたふざけた態度に、顔毛だらけ獣人その・・・2か3は剣を抜いて脅してきた。
「黙って、そのウサギを置いてけ、悪いようにはしねぇよ」
ビンゴ!!私はシンラと目を合わせると、ニッコリと笑った。
「あ~、やっぱり関係者でしたか、よかったよかった、探す手間が省けました。」
不穏な空気が流れる中、私はゆっくりとした動作で、シンラを地面に降ろした。
「ササメ!」
「大丈夫だ。お前は離れて防御魔法でもかけとけ。・・・さて、皆殺しにしないように気をつけなければな(ニヤリ)」
私のセリフに、顔毛だらけ獣人達は一気に殺気立った。
「おい!姉ちゃん、馬鹿にしているのか?俺ら5人を相手に勝てると思ってんのか?なめるのも大概にしろや」
顔・・・獣人達の、お決まりの低俗なセリフに、思わずニヤリと口角が上がった。
「数が勝っていれば勝てるとでも?案外、単純な頭してるな。」
私の挑発を受けて、顔・・・・(なんだかめんどくさくなってきた)獣人その2とその3が剣を振りかざし襲い掛かってきた。
「なめるなよ!女!」
だから、そういうのがお決まりなんだって(呆)
シュン!
・・・一瞬だった。
辺りに濃い血の匂いが立ち込めた。
私の前には、首のない獣人2人が立っていた。
おそらく、何が起こったかわからないままご臨終した2人の獣人の体が、ゆっくりと倒れていく。
剣に付いた血を振り払い、残りの獣人達を、ゆっくりと見渡した。
「さあ、次は?あんまり手ごたえがないと、つまらないな。私はあまり気が長いほうじゃないんだ。何故、ウサギを狙う?素直に話せば許してやらないこともないぞ?」
返り血で汚れた私の顔は、さぞ恐ろしかったのだろう。
残った獣人達は急に地面に手を突いて、頭を下げた。所詮それは土下座だ。
「わ、悪かった。殺さないでくれ!俺達は頼まれただけだ!この先のアカサの町で人間を困らせろって」
「ふ~ん?じゃあ、アカサの町からM・A・S・Kに届いた依頼は、お前らのせいか。で、なんで私達を襲うことになったんだ?その頼んできたヤツから指示されたのか?」
よっぽど恐ろしいのか、ガタガタと震えながら、獣人その1は話しだした。
「そうだ。もうすぐ、森の出口付近にウサギを連れた女剣士がくるから、ウサギを奪えって言われたんだ。ウサギは必ず生け捕り、女は殺してもかまわんと・・・」
「ふ~~~~ん(怒)で、その依頼主はどんなヤツ?顔は見た?」
「い、いや(汗)、真っ黒な仮面で顔を隠していたから顔は見ていない。ただ、ウサギを奪った後は、町に戻って連絡を待てと言われた。」
ふむ、つまりそいつは私達を認識して狙っているんだな。
ウサギはいるが、私は要らない・・・。
・・・なんかむかついてきた。
「ってか、お前らもそんな顔も見せないようなヤツの依頼を受けるな!どう見ても怪しすぎるだろ!」
「ほ、報酬が破格だったんだ!町で暴れるだけで銀貨500。森でウサギをとらえたら金貨10枚もらえるはずだったんだよ!」
気が付くと、足元にシンラが来ていた。
横に転がる首のない獣人に、ビクビクしている様子はとてもカワイイ。
「まぁ、とにかく、お前らの仕事は失敗だ。コレに懲りたら怪しい依頼は受けるなよ」
ガバッと勢いよく顔を上げた獣人は、目を大きく見開いて驚愕していた。
ちょっと待て。なんだ、その反応は。
「助けてくれるのか!?」
「これ以上戦う意志のないヤツと殺りあう気はない。さっさと立ち去れ。」
「恩に着る!おい!行くぞ。もしかしたら、まだ俺達の依頼主がアカサの町にいるかもしれん。もし向かうなら、そのままの格好で行くのはやめたほうがいいぞ。」
去り際に言われた事に大きく頷くと、軽く手を上げて彼らを見送った。
「・・・・・・だって、どうする?シンラ?」
地面にチョコンとお座りしているシンラの表情からは、何の感情も読み取れない。
だってウサギだもん(笑)
「・・・ちょっとビックリした。ササメって、今回のこと結構怒ってたんだな。」
相棒からの率直な感想に、思わず苦笑してしまった。
「あたりまえだ。今後、問題なくウサギの体でいられるかわからんだろう?命にかかわる魔法だったらどうする?一刻も早く人に戻る手段を探すことが、最優先事項だ」
「ありがとう」
そう言ったシンラの顔は相変わらずウサギだったけど、優しく微笑んでる顔をしている気がしたのは、私の気のせいではないはずだ。
「さて、行くか?まだしばらくウサギライフが続くが、1人と1匹の旅もそう悪くないだろう?」
私がニヤリと笑うと、シンラはヤレヤレと大きく息を吐いた。
「食べ物はニンジン以外で頼む。知っているだろうが、俺はニンジンが大嫌いだ」
進む先に何が待つかはわからないが、行ってみなけりゃわかるはずもない。
とりあえず、ウサギの生態を調べるところからはじめるか(笑)