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蒼海機動ヴァルハラ・ホライズン ~報復の指揮を執る追放・企業令嬢は、無感情な「最強パイロット」と共に戦火の海に歯向かっていく~  作者: 不乱慈


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第16話 セレジア。手を貸そうか

 作戦開始から一時間。海原を滑走する一機の蒼いGSの姿があった。

 巨大な都市の威容を背に、巡行を続ける〈ブルー・ブッチャー〉。

 装甲を水飛沫に濡らしながら、眩い陽光のもと、機体を切り返す。


(ブイ)1、周囲に異常はない。哨戒(しょうかい)任務を継続する』


 その機影を遠くに眺めながら、セレジアはマイク越しに訊ねた。


「Ⅴ2、Ⅴ3。そちらの状況はどうかしら?」

『問題ナシだぜ。ちっと退屈なくらいにはな……』

『特には~……おかしなところはないねっ!』

「了解。このまま何事も起こらなければよいのですけど」


 ――艦橋のサロンに紅茶の湯気が漂う。今日の茶葉はアッサムだった。

 少量のミルクが加えられたまろやかな口当たりに、すっと頭が冴え渡る。


「さて、と……」


 セレジアは、リアルタイムで更新されていく戦術マップを見つめていた。

 行き交う船と、漂流物。三機のGSからのデータが周囲の“情報地形”を創る。

 インスマス号はティレムスの沖合に留まり、各機は等間隔に展開している。


「では十五分後、再び定時連絡を。くれぐれもサボったりは――……っ」


 滑らかな視線の動きが、マップのスキャン範囲のある一画で止まった。

 V2――ジョニーが担当しているエリアから、僅かに、遠くの位置。

 協議会が指定した防衛ラインの外側ではあるが、そこに艦影が見える。


 スマート・パッドの画面を撫でて、入港予定船舶のリストを開いた。


 該当するものは無い。大型。採掘艦というより、輸送艦のフォルムか。


「……V2、聞こえまして?」


『あぁ? サボってねえよ』


「違いますわ。カメラを五時の方向に向けて」

『……――妙な船が見えるな。あれか」

「近寄ってくださいまし。警告を送ります」


 ジョニーは返事代わりに、舌打ちをひとつ返してから動きはじめた。

 マップ上の機体のアイコンが、不審船のマーカーに接近して――停止。

 通信リンクがオープン回線に繋がれると、セレジアは目配せをした。

 視線を受け取ったバートラムが頷いて、無線機を手に朗々と告げる。


「そこの船舶に次ぐ。こちらは“ティレムス都市警”より、正式な委任を受けた警備船である。貴船の目的と、予定する航路についてお聞かせ願いたい。繰り返す――」


『こちらハツオリ商会所属、輸送貨物船“ウミオロチ”。当船はタスマン・ラインを経由して、輸送業務を実施中である。現在、機関系統に軽微な不調があり、点検中だ』


 淡々としたウミオロチ通信手の言葉に、セレジアは訝んだ。


 端末から、都市間の輸送計画についての閲覧を申請――。

 データベース上の書類に、不備や矛盾はみられない。


 言い分は通っているが、状況に照らし合わせればキナ臭かった。


 通信手は、濃いノイズにまみれた声色のまま、次いで言った。


『ティレムスへ寄港の予定はなく、港湾境界を越えるつもりはない。どうぞ』


 バートラムが鼻息をつき、視線を返してセレジアに指示を仰ぐ。

 彼女は僅かな間の沈思を経て、自らのヘッドセットに回線を繋いだ。


「貴船への立ち入り調査を要請します。乗船の許可を」

『…………それは……しかし……』

「機関故障に関しても、技術的助言が可能かもしれません」


 戻ってきたのは、数秒の沈黙。ざらついたノイズが唸りを上げる。

 通信手は、先ほどよりも明らかに、硬質な気配の声を鳴らした。


『……恐縮であるが、当船の輸送契約上、立ち入りはお断りしたい』

「これは、お願いではありませんわ。従っていただけない場合は――」


 そのときだった。音の背後から、女の声が響く。


『いいよ、メイレム。変わってくれ』

『はっ。了解です、中隊長殿』


(――……中隊長ですって……?)


『ふふっ……。お嬢さん、従わないは場合はどうなるのかな』


 ノイズを物ともせずに、澄んだ()を鳴らす女。

 どこか楽し気な、その含み笑いが鼓膜にこびりつく。

 だが、セレジアは屈することなく彼女に応えた。


「貴船を拿捕(だほ)いたします。抵抗するつもりであれば、実力行使も(いと)いませんわ」

『コンツェルンのお姫様とあろうひとが、随分と、荒事に慣れてしまったようだね』

「……誰ですの。……貴船の目的と所属を、もう一度、お答え願えますかしら」


 ――いいだろう、とノイズ混じりの吐息が入って、女は語り出した。


『オレたちは、SAVIO社所属、“フレスヴェルク中隊”実働A班』


 その名を聞いてセレジアの脳裏を過ったのは、とある少女のことである。

 言葉と結び付けられているのは、幼い日の記憶だった。彼女の声が、続く。


『オレたちの目的はひとつ。この海に散った、偉大な同志たちの敵討ちだ』

「――ミゼッタ……。貴女、ミゼッタ・フォン・ハールマンですわね……っ!」


 マイクを引き寄せ、セレジアは叫んでいた。女――ミゼッタは笑った。


『また会えて嬉しいよ、セレジア。君の十歳の誕生日パーティー以来かな?』


 ◇


 〈ブルー・ブッチャー〉のコクピット。フィンは二人の会話を聞いていた。


『SAVIOの先鋭部隊が、いったいここで何をしていらっしゃいますの?』

『敵討ちの下ごしらえ、といったところかな。邪魔をするつもりはないよ』

『そのような話は、協議会から聞いておりませんわ。貴女、まさか独断で――』


 プライベートのチャンネルから、Ⅴ2の通信が入る。


『おい、青いの。……これってどういう状況だと思う?』


 “偽装”輸送艦ウミオロチを前に、ジョニーはその場で待機を命じられていた。

 暴かれた正体と、セレジアとの面識。どう動くのか分かったものではない状況。

 さすがに困惑を隠せないのだろう。フィンは淡々と、彼に分析を伝える。


「赤いGS部隊に沈められたうちの二隻は、SAVIOの所属だ。どうやら協議会の思惑を外れて、勝手に動いていたらしい。復讐の機会を窺っているようだが……」

『ってか、アイツら知り合いか? まさかドンパチやり始めるってのはねえよな』

「確率は低い。どちらにもメリットがない。お前は、そのまま警戒を続けていろ」


 はぁ? 俺に命令すんじゃねえよ、と舌打ちして、ジョニーは通信を切った。


『バーシュ兄は、相変わらずじゃな』

「AI、黙って作戦に集中しろ」

『……相変わらずなのは、主殿もじゃな』


 センサーの走査を続けながら、セレジアたちの交渉の過程を聞き流す。

 どうにも、フレスヴェルク中隊はここから退くつもりはないようだ。

 彼らの因縁、過去、それらの一切すべてに、フィンは興味を持たない。 

 即応性のある防衛戦力が増えた。価値ある情報は、ただそれだけだった。


 ――と、カティアがサブウィンドウを出す。映っているのは一隻の艦影。


『主殿。七時方向、マップ上のグリッド・F20の辺りに何か来たぞい』

「タンカーか。セレジアに情報を送れ」


 見やれば、その大型のタンカーは、アウステル港へと直進し続けていた。

 入港目的の船にしては、やけに船速をあげすぎているように見える。

 フィンは密かに、“カトラス”アサルト・ライフルの安全装置(セーフティ)を外した。


『……(ヴァルハラ)各機へ。リストにない大型船が接近中ですわ。注意して』


 共有された戦術マップ上、タンカーのアイコン表示が要警戒の黄色に変わる。

 果たして敵なのか、あるいは――答えを知れるまでに、時間はそうかからなかった。

 タンカーの上面のハッチが、跳ねて開く。そこから現れたのは、GSだった。


 夥しい数の〈ザーウィ〉の灰色の機影が続々と、海面に向けて飛び出していく。


「V1よりインスマス。敵機を視認した。機数……十八。指示を」

『こんなときに……。防衛ラインを意識し、侵入したものは撃墜して』

「了解。Ⅴ3、狙撃で数を減らせ。Ⅴ2は持ち場に戻れ」

『命令すんなっつの。お貴族サマは放っておいていいのかよ?』

『あのさぁ、兄貴ぃ~! 優先順位ってわかんないかな~!』


 何度目かの舌打ちが聞こえて、マップ上のⅤ2が迎撃地点に着く。

 〈ブルー・ブッチャー〉もライフルを構えた。が、まだ射程外だ。

 先んじてナイアの〈グラベル〉が、敵の前衛集団を狙い撃つ。


『さて、ほらほらァ! 避けないと死んじゃうよーーっ!』


 火線が空と海の境界に向かって飛び、直進する〈ザーウィ〉の腹を穿った。


 瞬間。


 視界を灼き尽くすほどの閃光が弾けて、巨大な爆発が、爆炎が天を突く。

 海原は酷く荒波立ち、余波は〈ブルー・ブッチャー〉の足元まで揺らした。


『……えっ……? 融合炉が、爆発したの……ッ!?』


 敵を撃破したはずのナイア本人が、ひどく狼狽する。


『……弾一発で、ありえねえだろっ……』


 彼女の動揺は、ジョニーにも伝播していた。

 無理もない。あれは尋常の爆発ではなかったのだ。


 GSの動力・ユニットは、ある意味、コクピット以上に高度な保護が施されている。戦闘で負うダメージから、機体の動力源となる「小型核融合炉」を守る為だ。

 コアは最も厚い装甲で覆われた部位でもあり、多少の被弾程度では何ともない。仮に損傷を負ったとしても貫通――ましてや、誘爆を起こすことなどは滅多にない。


 基本的には、ユニットごと機体から分離され、制御された状態で爆発を回避する。

 たとえ機体が爆発したとしても、それは武装類に搭載された弾薬類、もしくはバッテリーなど追加装備への被弾を要因とする、ごく小規模なものであることが通例だ。


 ――したがって先の〈ザーウィ〉の爆発の様子は、明らかに異常なものである。

 それを目の当たりにしたからこそ、彼らは同時に、一つの結論へと辿り着く。


『……まさか……自爆特攻をするつもりですの……!?』

「臨界状態で突っ込んでくるつもりか。どうする、セレジア」

『汚染の危険がありますわ! くれぐれも港に近づけないで!』

『そうは言っても、数が多すぎるだろうがッ……!』


 ジョニーの言葉に、フィンはモニターの視界を見渡す。

 残り十七機、大量の〈ザーウィ〉が加速をかけて向かってくる。

 防衛ラインに入るまでに、あれを全て撃墜せねばならない。


『大変そうだね、セレジア。手を貸そうか』


 状況にそぐわない、落ち着いたトーンでミゼッタが言う。

 セレジアの声は、動揺を押し殺した様子で提案に応じた。


『頼みますわ。この数、ウチのGSだけでは抑えきれない……』

『だろうね。一分待ってくれ。オレも〈カデンツァ〉で加勢するよ』

『クソが。一分も持たせられるか? ちくしょう……!』


 〈ライカントロピー〉が、やけくそにライフルを掃射した。

 有効射程外なのもあってか、ほとんどが外れてしまっている。

 数発、命中した弾もあったが、見事に装甲に弾かれていた。

 そうこうしている間に、戦列は徐々に距離を詰めてくる――。


『もぉ! ちまちま狙うのは大嫌いなんだけどね……ッ!』


 頼みの綱である〈グラベル〉のガトリング砲が絶えず唸り、銃火を吠える。

 灼熱色の弾道の軌跡が、水平線を薙ぎ払うようにして突き進んだ。

 が――対する敵機もただの木偶の坊ではない。散開し、被弾を避ける。


『主殿、どうするんじゃ……!』

「前に出て、潰せるヤツから潰す」

『な、なんじゃと……?』


 カティアの動揺を無視して、フィンはペダルを踏み込んだ。

 加速する蒼い影が水飛沫をあげて走り、敵集団に突っ込んでいく。

 低い前傾姿勢のまま、アサルト・ライフルを腰だめに構えた。


「爆発の有効半径は――五十メートルといったところか」

『なっ……主殿の被ばくのリスクがあるじゃろ!?』


「考慮しない。湾岸防衛、およびインスマスの護衛が最優先だ」


 そう呟く彼の頭上には、ぼんやり“光の輪”が浮かび上がった。


「……時間がない。敵との距離を保ちつつ、連鎖爆発で数を減らす」

『主殿! さらっと言っておるが、一歩でも間違えれば大爆死じゃぞ!?』

「計算上では、実行可能なプランだ。問題はない。――黙っていろ!」


 前のめりに〈ブルー・ブッチャー〉は加速を続ける。


 有効射程に入った瞬間に、トリガーを引いて射撃を開始する。

 狙うは、二機で並走する〈ザーウィ〉の片割れ、その片足を撃ち抜いた。

 バランスを崩した機体が、きりもみ状態で海面を跳ねる。

 敵機の位置が、後方集団と近くなった。概ね計算通りである。

 フィンは再びトリガーを絞り、今度は胸郭部を狙って致命傷を与えた。


 眼前のメインコンソール中で、カティアが情けない悲鳴をあげる。


『うおおおおおーーーーお頼み申すぅ~~~!』


 ――大爆発。海面が激しく荒れ狂い、津波のような隆起を生んだ。

 その流れに抗わず、むしろ勢いに身を任せるようにして跳躍する。

 〈ブルー・ブッチャー〉のボディを追うように、爆炎が拡張を始めた。


「……ッ!」


 炎に飲まれて更に二機、後方の〈ザーウィ〉が破裂して、灼熱を解き放つ。

 どうにか爆発の余波からは逃れることができたが、その圧力は重い。

 波打つ海面を障壁にしておかなければ、衝撃波だけで機体が潰れていた。

 思考の内側で、爆風の距離と拡張速度の計算式を、瞬間的に改め直す。

 と、そこで電磁カタパルトが物体を射出する轟音が、海原に響き渡った。


『ウミオロチより、GSが一機発進! 友軍マーカーを付与しますわ』


 マップ上に新たに増えた緑色の光点が、急激な加速で接近してくる。

 ちら、と〈ブルー・ブッチャー〉のカメラは、その方角を向いた。

 水飛沫と共に現れたのは、五尾の補水索(サイフォン)をしならせた一機のGSである。

 鋭く突き出した顎、アクリル装甲のバイザー下に光る双眼のセンサ。

 そのどこか凶悪な顔つきをした機体は、両肩に複雑な兵装を備えていた。


『〈ハイドラⅡ カデンツァ〉。ミゼッタ・ハールマン、ここに見参』


 GS――〈カデンツァ〉の両肩にあるものは、どうやら射撃兵装のようである。

 肩の円盤状の装甲に、スウィング式のアームで取り付けられた大型弾倉。

 ごつごつとした発射装置のようなものが、肘から手甲にかけてを覆い尽くす。

 〈カデンツァ〉はそれを持ち上げて、手元のトリガー・グリップを操作した。


『さぁカーニバルを始めようか。きっと、素敵な花火ショウになるよ』


 ぽこん、と圧縮された空気の抜ける音。目に見えて巨大な弾頭が飛ぶ。

 弾は加速し、空中で唐突に爆ぜて、無数の鉄槍を海面に向かって降らせた。

 エアバースト式のグレネード・ランチャー。弾種はフレシェット弾か。

 降り注ぐ子弾が、その直下にいた〈ザーウィ〉たちへと容赦なく突き刺さる。


 いわば、針芯を詰めた散弾を、砲の規模にまで拡張したものである。


 フィンは再び衝撃に備えた。距離こそ遠いが、爆発の威力は計り知れない。

 爆薬を抱えた敵機が、連鎖して二機。大きな火炎を打ち上げて吹き飛ぶ。


『あははっ! 綺麗だね。残り十二機。さっさと平らげてしまおうか』

「――了解した。敵の爆発範囲には、くれぐれも注意しろ」


 揃い立った二機の第三世代GSは、地獄めいて荒れ狂う海へと飛び出す。


 ◇


 溜め息をつく。再びカップを手に取ったとき、ミルクは底に沈殿していた。


『……っと、危ねえなッ。V2、さらに一機撃破だ』

『ひとつ、ふたつ、みっつ! V3、追加で三機やった!』


 二人の後方から撃つバーシュ兄妹も、順調に敵の数を減らしていっている。

 残り八機。彼らはどこか攻めあぐねるような風に、ずっと遠くを廻っていた。

 海洋の汚染リスクも考えれば、このまま素直に撤退してくれれば良いのだが……。

 ふいに開かれたオープン回線から、ミゼッタの声音が、セレジアを呼ぶ。


『セレジア、この状況……少し派手すぎると思わないかな』

「派手なものはお好きでしょう。どうしたというの」

『さあね。ただ、どうにもこれが本命だとは思えないんだな』


 ――すわ陽動か。そうだ、海洋民兵たちには例の大型兵器という手もある。

 あの強力な〈アラクネ〉の出現だって、依然としてありうる状況なのだ。

 もし、そういった第二の矢が、ここから放たれるというのならば、きっと。


『開拓者どもよ、よくぞ持ちこたえてくれた。支援攻撃を開始する!』


 沿岸部にGSが集う。アルジャバール・セキュリティ・フォージの機体群だ。

 都市の防衛戦力が、アウステル港側に集中したこれが絶好の機会だろう。

 彼女の予感が最高潮に高まったとき、次なる敵襲を報せるアラートが鳴った。


「ティレムス北西、ボレアス港側に高熱源反応、出現! 数、いちッ!」


 艦橋オペレーターが叫ぶ。反対側の港か。バートラムが命じた。


「過去の戦闘で取得したデータと照合しろ! ……お嬢様、これは」

「ミゼッタが言った“本命”ですわね。くそっ、やられましたわ」

「パターン一致。前〈ティルビング〉と同型の突砕艦と思われます!」


 ボレアス港は、いま居るアウステル港とは正反対の側にあるのだ。

 加速に優れる第三世代機の、フィンとミゼッタであれば間に合うか。


 セレジアが、次に打つべき手について思考を巡らせていると――。


「これは……〈ティルビング〉級の熱源反応、急速に高まっています!」

「なんだと……? いったい何をするつもりだ?」

「……しまったッ! バートラム、すぐに協議会に連絡を――」


 彼女が何かを察して、そう叫んだ頃には、もはやすべてが遅かった。

 一瞬ばかり空の色が白んで、禍々しい光条が海原へ注ぐ。

 けたたましい爆発音を耳にして、反射的に窓辺に張り付いた。


「そんな……」


 ティレムスの都市の中心地、この沖合からも見えるほど巨大なタワービル。

 ――会合の舞台であるトライデント・プラザ・ビルには、風穴が空いていた。

 どろりと融解した穴からは、見えるはずのない向こうの空が覗いている。

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