ひとは悲しい生き物【赤頭巾異聞】
詩を描こうとしたら、おはなしになっちゃった。
赤だか青だか黄色だか、とにかく頭巾をかぶった女のコ。
病気のおばあちゃんをお見舞いにたずねます。
たずねますが、そこにいたのは。おばあちゃんを食べてしまい、すりかわった、まだまだ腹ペコのオオカミでした。
頭巾をかぶった女のコは質問します。
どうしておばあちゃんの目は、そんなに大きいのかを。
「それはおまえを食べるためだよ」
どうしておばあちゃんの耳は、そんなに大きいのかを。
「それはおまえを食べるためだよ」
どうしておばあちゃんは、そんなに毛深いのかを。
「それはおまえを食べるためだよ」。
どうしてひとは、こんなに悲しい生き物なのかを。
「それはおまえを食べることに、罪悪感をおぼえるからだよ」
ひとは、ひとを食い物にしなくては生きてゆけない。
だが、それに罪悪感を失くしてしまえば。それはすでに、もうひとではない。
オオカミになってしまう。
罪悪感もなしに、オオカミは頭巾をかぶった女のコを食べてしまいました。
罪悪感を感じながらの、ひとに食い物にされるのと、どちらが彼女には幸せだったのでしょう?
その罪悪感こそ、ひとをひとたらしめるのならば。
せめて、だれかがひとであるための贄になりたかった。彼女はそう呪って、オオカミに食べられたのかもしれません。
黒い安息日先生のエッセイに書いた感想から、描いてみました。