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ivy  作者: 雨上紡佳
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教室2

 少し思い出した。柊との出会いも、あの時友達と言えるかもしれない存在が、できたことも。そうだった。私には舞揺がいた。今の人間関係に悩まなくても、少しくらい話が通じる人が、クラスは違っても存在していたこと。さらに気がついたこと。それは私が最初、彼を、柊を好きだったこと。あの時に感じたことを、取り返している「続き」に過ぎないこと。そして今、三年生になって彼の対応が少し変わっていること。過去をちゃんと全部、思い出さなければいけない気がして少し頭が痛くなった。でもこれは思い出したくなくて痛くなったわけではない事、今の私には理解できた。ひとしきり思い出に触れた後、手の中の紙切れをバッグの中に押し込み、柊がくれたおにぎりを食べた。想像よりお米が甘いこと、具が塩っけ多くて少し辛いこと、思い出に浸る時間と少し味が似ていた。少し目に涙が浮かんだ。感情に振りまわされて過ごす日も悪くない、かも、と思った。けれども人の感情を放置できるほど、私はできた人間じゃない。この先に待ち受けることの、悪いこと。容易に想像できることから深読みすることまで、全て。私は戦わないといけない気がした。今の私は「二年」もかけて学んだのだ。「期待は無駄」「努力はそこそこ実る」この2つ。期待はしない、その代わり自分が行動しなきゃいけない。努力はそこそこ実る、それなら実るまで努力してみる価値はあるということ、その努力は報われなくても経験値は上がること。口の中のご飯をしっかり飲み込み、ゴミを片付けた。バッグの中から彼にもらった紙切れを取り出し、皺を伸ばして、私のお気に入りのクリアファイルに入れた。このクリアファイルは、この紙切れ専用になりそうだ。バッグの中にゴミを一旦詰め込み、クリアファイルもノートの間に優しく入れた。バッグを抱えて自分のクラスに戻ろう、どれだけ打ちのめされても私は戦えるはず。

 自分のクラスに戻り、扉を開けた。まだ次の授業まで少し時間がある。自分の席について必要そうなノートなどを準備した。その時、一緒に紙切れを入れたクリアファイルも出てきた。このファイルは私だけのものにしたいから、バッグにしまおうとした。「似合わないよねー、あの柄。」「分不相応っていうんだっけ?」「それなー!」声のする方に目線をやると、既に出来上がっている女子グループからの熱い視線を受けていた。明らかに私に向いていた為、すぐ目線を逸らしたが、何のことを言っているかはすぐにわかった。このファイルだ。柄は白いリボンをぐるっと巻いたようなプリント、その上に首から腰までの裸のトルソーがあしらわれているもの。そこまで派手じゃないのと、舞揺にもらったヘアピンに使っていたリボンと似ていたから、気に入っていた。気に入っているものを、私らしくない、という声で否定されるのがすごく癪に障った。それと同時に紙切れに書いてもらった言葉を、信じる心も少し減って不安になった。今までは不安なんて感じなかったのに、心の奥を細い針で何回も刺される痛みに襲われた。ファイルはバッグに適当に入れられ、椅子に座ろうとした時、少し視界が歪んだ。

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