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ivy  作者: 雨上紡佳
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出逢い

 おはよう、春。散っていく桜。もう既に終わってしまった高校二年間。退屈な勉強もあと一年で終わり。この先最後の部活の大会も1年。私の理想の高校生活。学生のうちに味わえそうな「甘ったるい恋愛」も思ったように進まなかった。期待していたあの二年間も、三年生の始業式の日に体育館の窓から見える甘さの象徴の色がバラつくように崩れた。二年間で学んだ事は「期待は無駄」「努力はそこそこ実る」という2つ。二年も使ったのに得られたものはそれしかなかった。

 そのはずだった。気付かないふりもいつしかできなくなるような「甘ったるい恋愛」を知る事になるとは微塵も思っていなかった。

「えっと……。私のクラス……。あった。」私のクラスは三組。いつも仲良くしてた友達とはクラスが離れてしまった。二年も同じ学校に通ってたのに、同じクラスになった人達は知らない名前ばっかり。人と積極的に話すタイプでもないし、まあ当然の結果かも。半ば諦めながら自分の教室に重たい足を動かして歩く。教室の扉は開放されていて、すんなり教室に入る。「げ……。」思わず小さく声が漏れた。私のクラス、三組には既に出来上がっているであろうコミュニティがちらほら見えて、初日からとんでもなくアウェイを感じる。黒板に一枚の紙が貼られていて、自分の座る席を確認できた。そそくさと私は自分の席を紙で確認して見たくない後ろを振り向き自分の席に着く。周りの視線は痛いし、他人の話し声が何故か私の噂のような気がしていたたまれなくなった。何も聞かずに済むように有線イヤホンを取り出して、即座に好きな音楽を流した。気にしない振りをしたくて、SNSを流し見て先生が来るのを待った。その時の私は多分、滑稽な程にモロ「陰キャ」と呼ばれる類に見られていたことだろう。イヤホンをしているし、画面に集中しているようで、多分背も猫背になっていて髪も結ばず耳にもかけず。自分から話しかけたりするようなタイプでもないと言いながら、他人からも話しかけづらいような空気をまとっていたと思う。その時だ。「あ、ユウレイ。」口角をあげた男が有線イヤホンを片方引っ張って外してきた。「よっ。」手を顔の横であげて目でわかる様に口を大袈裟に動かす男。黒板に貼ってある紙を思い出した。あぁ、この男同じクラスだったのか。まあ、私にとってはどうでもいいこと。いや、そんな訳がない。今周りの人が見たらどう思うかなんて明白だ。だから嫌だ。少し男と仲が良いだけで「男たらし」扱いを受けてしまう。だから封印したはずだった。男と仲良くするという事をやめて、女友達を作って群れておく。それがどれだけ平穏をもたらすか、私は知っていた。だけれども、もう時すでに遅し。男から声をかけられてしまった。万事休す。「……あ、あぁ、同じクラスだったんだ。一年の時被ったんだっけ、確か。最後だけどよろしく。」喋りすぎた。目立たないよう、できるだけ角が立たないよう、と考えすぎた結果、喋りすぎてしまった。返事を聞く前に早くイヤホンを探し耳に刺した。その時ちょうど今年度の担任であろう先生が入ってきたため、ギリギリ難を逃れた。と思ったのもつかの間。その男は私の席の斜め前方向。私に見えるように微笑みながら小さく手を振ってくる。この時はまだ何も知らなかった。朝のほんの少しの時間の出来事が全ての事柄を揺るがすことになるとは微塵も思っていなかったのだ。

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