第171話 慢心が招いた損害(S!)
※今回はサイドエピソードです。
「……昇格戦?」
「はい!今から昇格戦を行ってもらいます。あなたが勝ちましたら、無事リーグ昇格となります!」
「……そうなんだ。それでルールは?」
「私に勝てたら昇格します」
「なるほどな。んで負けたら俺が死ぬと」
「いいえ、負けてもペナルティはないので、ご安心ください」
これはまだ三上さんと出会う前のお話です。
当時昇格戦の時は、負けてもペナルティはないということを告知するルールでした。
これは利用者さんの不安を事前に取り除く、という目的で行われていたのです。
しかし今回……まさか……あのようなことが起きてしまうとは……
「それじゃあ早速戦いを始めましょうか」
「あー……俺いいや」
「……?どういうことですか?」
「俺はアリスちゃんとは戦わない。別に昇格にこだわってるわけじゃないし、アリスちゃんを傷つけてまで上に上り詰めたいわけじゃないからさ」
(…………)
「てことでさ、一思いに俺を倒しちゃってくれよ」
(…………)
これは……まずいことになってしまいました。
昇格戦で相手に勝ってはならないというルールはありませんが、
『無抵抗の相手』を攻撃してはならないというルールがあります。
これは利用者さんと、リバーサル社の職員が全て揃わないと、
戦いが始まらないルールと考え方は似ています。
どりらも無抵抗の相手を攻撃してはならない。
という考えの元できたルールです。
「いいえ、少しは戦ってください。もしかしたら勝てるかも……」
「いいよめんどくさいし。明日の戦いに向けて体力を温存したいからさ。結構ハードだからねぇ相手によっちゃあだけど」
「お願いします!どうか戦ってください!」
「いやだね」
「このままだと……私が大きく傷つきますし、なによりあなたが『死んでしまいますよ』」
「どういうことかね?」
「この異空間は、2時間しか持たないんです。2時間以内に決着をつけないと、空間が崩壊してあなたは死んでしまうんです」
「だったらアリスちゃんが、俺を攻撃すればいい。そうすれば解決だ」
「それはできません」
「ははーん!さてはアリスちゃん臆病者だな?」
「……?どういうことですか?」
「アリスちゃんが先制攻撃をしたときに受ける報復みたいなのが怖いから、嘘を言って俺の行動パターンを変えようとしているんだろう」
(…………)
「でもよぉ……俺の正体知ってるんだろう?長い付き合いだからよぉ……俺がめんどくさがりで省エネ主義の男であることをよぉ……」
(…………)
「それに……空間が崩壊したら……アリスちゃんも死んじゃうんじゃないの?」
(……!)
「同じ条件なんだからさぁ……そんなはったり通用しないよ」
(…………)
言えない……
私は人間ではないから、空間が崩壊しても死なないってこと……
なんとしてでも私の正体は隠し通さなきゃいけません!
「んま!とにかく俺ここで待ってるからはよ攻撃してきなさいよ!」
(…………)
相手は全く考えを変えようとしなかった。
そのまま時間は過ぎていき……
ついに2時間経ってしまいました。
ズゴゴゴゴゴ……
「……!?」
ついに……始まってしまいましたか……
空間の崩壊が……
「おい!嘘じゃなかったのかよ!」
「……ごめんなさい」
「ごめんで住んだら警t……」
相手が喋り終わる前に、空間の崩壊に飲み込まれていった。
もう相手は助かりません……
本当に……悲しい事件です。
私は急いでテレポートを使って、元の世界に戻りました。
このあとの体内工事……かなり時間がかかりそう……
ちなみにですが、職員は昇格戦終了後、必ず体内工事をします。
戦闘時、または今回みたいに空間の崩壊が起きたときでは、
工事の時間や内容が変わります。
手術ではありませんよ?工事です。
なにせ私は人間ではありませんので。
今回みたいなケースだと、結構長くかかりそうです……
ひとまず一時的にでも……別の私に担当を引き継ぐしかないでしょう……
それから数日後……
リバーサル社の社内で緊急会議が行われました。
そこであるルールが改正されたのです。
『昇格戦時は、負けても死なないことを伝えないようにする』と。
まあ……こう考える人も一定数はいますよね……




