第130話 ひかりが見せた最初の涙(S!)
今回はサイドエピソードです。
「なっ……何言ってるの!」
母は明らかに動揺している。
なぜ素直に質問に答えたのに、動揺されるんだ?
「冗談はやめて!この冗談は不謹慎だよ」
「冗談?不謹慎?俺は聞かれたことをそのまま答えただけだよ。それの何が不謹慎なのさ?」
「死んでしまった弟のふりをするっていうこと!この年でこんなこともわからないの!」
「勝手に殺さないでくれよ。俺はまだ生きてるよ。この体がその証拠さ」
「…………」
母は黙り込んでしまった。
散々人をばかにしやがって。何が不謹慎だ!何が死んだ人だ!
「もうわかった、今日は休みなさい。このまま会社に行っても迷惑になるだけだわ」
そういって母はどこかへ電話をかけた。もしかして職場?
はっ!ありえない!存在しない職場にかけてどうするんだ!
働いているのは兄だけなんだ!
そして夜になった。明らかにおかしいことが起きてしまった。
兄が……帰ってこないんだ。
「ねえ母さん」
「どうしたの?」
「今日兄さんの帰り遅いね」
「…………」
母は……また考え込んでしまった。
「……そうね、きっと仕事が忙しくなったのよ」
(…………)
母はそれ以上何も言ってくれなかった。
どうして兄は帰りが遅いんだろう?
その疑問がわからないまま、次の日を迎えた。
(…………)
今日は誰も起こしては来なかった。
「おはよう」
「おはよう……『淳一』」
(…………)
今日は会社に行けということすらも言われない。
昨日のあれは何だったんだろう?
そう考えていた時、
ピンポーン!
「はーい」
「南ひかりです 遊びに来ました」
またいつものひかりが来た。
母がいつも通り対応をして、俺のところに来る。
「遊びに来たよ!ところで……俊介くんは?」
「……?兄さんなら会社だけど?」
「もう~新手のジョーク?いきなり面白いこと言うね~」
ひかりはなぜか笑っている。
「今日は非番でしょ?それにものまねしたとしても、見た目で一発でわかるよ!」
(……?)
ものまね?ひかりは一体何を言っているんだ?
「ひかりちゃん……ちょっと」
母がひかりと一緒に、部屋の中に入っていった。
俺はよくわからないけど、何かあるんだと思って、
部屋を覗いたりはしなかった。
俺はとりあえず自室で待つことにした。
待つこと5分。
「淳一?ひかりちゃんが話あるっていってるから、来なさい」
話が終わっているみたいだ。
俺はすぐにひかりのところへ向かった。
するとそこには……
『泣いていたひかり』がいた。
「ごめんね……淳一くん……さようなら」
「待ってくれ!ひかり!」
だがその声はひかりには届かず、
ひかりは帰ってしまった。
(…………)
俺が一体……何をしたというのだ?
なんで俺はこんなによくわからない対応をされるのだ?
母には存在しない会社のことを言われ、
ひかりからは突然の別れを告げられ、
もう意味が分かんなくなった。
俺はどうしてこうなったのか?よく考えてみた。
多分……俺が『働いていないから』
精神攻撃をしかけてきているのかもしれない。
親はきっと、すぐ回復するんだと思ってるのだろう。
だが1年経っても働かないから、怒りが爆発してしまった。
ひかりも……俺がニートだと知って泣いて出ていったに違いない!
俺は今からでも働いて、お金を稼いで、
そのお金で母にプレゼントしてあげよう。
大体30万ぐらい……あればいいのかな?
物の値段に詳しくない俺は、漠然で目標金額を考えた。
そしてすぐさまパソコンで求人を探した。
……だが、なぜか働くのが怖いという気持ちになった。
またいじめられるのではないか……?そういう不安があったのだ。
父は……逮捕されてしまったらしい。
母がそう言ってたのだから間違いないのだろう。
つまりこれから母も働くということになる。
それならなおさら頑張らないといけない。
だが結局少しネットで求人を見たら、すぐにやめて、
ゲームや動画ざんまい。まるでやる気が出てこない。
もう……ダメなのか……そう思ったその時!
そう……そこで出会ってしまったのだ。
俺の運命を変えるもの……
【あなたも最高の無職を目指しませんか?】
ひかりの涙は見てて辛いですね。




