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第129話 三上淳一の再起動(S!)

今回はサイドエピソードです。

俺がとにかく落ち込んでいる間、母は頭をそっと撫でて、慰めてくれた。

俺はてっきりここでめちゃくちゃ泣くのかと思った。

だが、なぜか涙は出てことなかった。

きっと未だに信じられないのだろう。

俺は直接……『遺体をみることができなかったから』だ。


だが不思議と、涙は出ていないのに、

ものすごい絶望の渦の中にいるような感覚だ。

直接見ていないからまだ生きているのではないかという淡い希望と、

医者から告げられたから間違いなく亡くなったという絶望が、

俺の中にあって混乱しているのかもしれない。


その日の夕食の好物なカレーは、全然喉を通らなかった。

まるで喉がカレーを止めているかのように……


だがそれでも、頑張って少しは食べた。

空腹でいるのは……もっとやばい気がしたから。


風呂は……今日だけは入る気になれなかった。

まるで鬱っぽい症状が出ているみたいだ。


とにかく落ち込んでいる俺は、自室に戻り布団に倒れ込む。


(…………)


その日は眠れなかったけど、とにかく布団の中に入り続けた。

スマホもパソコンも何時間やってたのかわからない。


次の日以降も、未だにショックは消えていなかった。

会社には忌引きを申請した。

休みの方はこれで問題ないだろう。

その後に葬儀、火葬も終わった。


俺はここで初めて、本当に淳一が亡くなった現実を突きつけられたような気分だ。

いじめに耐え抜いて卒業して、ひかりと仲良くやっていた。あの頃の淳一はもう帰ってこない。

その日も涙はなぜか出てこなかった。だがずっと下を向いている。悲しいという気持ちはあるのだろう。


……結局今日もうまく寝れなかった。

……これで……本当に淳一とお別れだ。

骨になってしまったときが、本当の意味でのお別れだ。

もう魂すら現実にはない。


だがなんとか寝ることができて、次の日になった。

昨日のような鬱っぽい感じが嘘のように、今日は元気だった。


『でもこの時に、本来なら気づいてほしかったんだ。

自分の心の変化を……』


「おはよう~」


「おはよう、今日まで忌引きだっけ?」


「ふぇっ……何言ってるの?俺は”『働いていないよ?』」


「……え!」


母は一瞬固まったようだ。

なぜ母はあのような質問を?なぜここで驚く?

もしかして俺のことをからかっているのだろうか?


「もう冗談も言えるぐらい回復したんだね。良かった」


「冗談?俺は何も冗談を言ってないよ?」


「ねえ?ちょっとあんた様子が変だよ。何かあったの?」


「なにもないよ」


なんだかわからない会話を交わしながらも、

俺はいつも通りパソコンやらゲームやらをした。


その日はそれ以上何も起きず、次の日を迎えた。


「ちょっと俊介!今何時だと思っているの!早く起きなさい!」


いつもなら怒鳴られて起こされることがないのに、なぜか今日に限って起こされた。


「ていうか!なんで自分の部屋で寝ないの!」


しまいには全く意味がわからない指摘までされる始末だ。


「もう完全に遅刻だわ!ほら早く朝ごはん食べて!」


「……なあ?なにに遅刻するんだ?」


「はあ?あんた警察官だよね?何寝ぼけたこと言ってるの!」


「何言ってるの!それは兄の方じゃん!」


「何言ってるの!じゃああなた誰なの?」


「俺?俺は『三上淳一』だよ」

こんなに悲しい再起動はなかなかないですね。

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