第119話 俺ニート、アリスのパンエピソード(後編)
主役はまさかのニート!?堕落した生活を送るニートに、ゲームに勝利し続けるとお金を稼ぐことができるという、神のゲームに参加!そのチャンスをものにするために、早速リバーサル社にて契約を交わした!
戦いに勝利し続け、快適な生活を送ることができるのか!
「それで……その恐ろしい暴力は……その日だけじゃなかったんです……」
(…………)
「ちょうど会社が忙しい時期で、どうしても朝早く出発することが多くて……頑張ってもパンだけしか出せない日々でした。なんとか夫にその事情を説明するんですが、こっちだって働いてんだぞ!っていう主張で、全く聞いてもらえなくて……」
「そうだったんですか……」
なっ……なんて恐ろしい過去なんだ……
俺だったらつい相手をぶっ殺したくなるレベルの話じゃないか。
……でも、まずはDVした相手の罪がもっと重くなるような法改正を求めたいけどな。
せめて2回目のDVは無期懲役とかでも全然いいと思うが……
「それが続いてしまったので、私の精神はもうボロボロになってしまって……おかしくなってしまったんです。仕事にも支障をきたし始めていて、仕事で些細なミスを連発するようになって、上司に怒られたりしてしまって……それでもう完全に壊れてしまう!ってなるその直前に、奇跡が起きたんです」
「奇跡……ですか?」
「はい!私を助けてくれる人がいたんです」
「そうなんですか」
良かった……アリスがこのまま限界来て、やむ負えず犯罪行為をしてしまうルートにならなくて……
「それが、リバーサル社の上司だったんです。その人はこういったんです」
(…………)
「『新しい環境で心機一転頑張ってみないか?』って」
「……なるほど、それでアリスさんはリバーサル社に『転職』したんですね」
「はい。リバーサル社に入る前の会社も結構気に入ってたんですが……その上司のある言葉が決め手になって即刻転職したんです」
(…………)
「あなたの邪魔に感じている物を『回収』しますって。私はそれを聞いたときに、恐らく夫のことだろうなって思いました。恐らく私の殴られた顔のあざを見て、そう言ってくれたんだなって」
「なるほど……」
「……あっ!」
「どうかしたんですか?」
「すっすみません!パンの話だけするつもりだったのに、全然関係ない話までしてしまって……」
「えっ!いや大丈夫ですよ。むしろその話ももっと聞きたいです」
というか……まだなぜ朝はパンしか出せないのかの理由がわかってないからな。
まだ話を聞く必要がある。
「わかりました。続きを話します。それでその上司には転職することを伝えました。そしたら……夜夫が帰ってきたときに、上司が夫を連れてどこかへ去ってしまいました。ただ玄関に1枚だけ手紙を残してくれたんです。そこにはリバーサル社の住所が書かれていました」
(…………)
「それで色々あって、リバーサル社で無事働けるようになって、夫からも解放されたんですが……」
「何かあったんですか?」
「『過去に受けたDVのショック』で、朝にパン以外を作ろうとすると、無意識に手や体が震えるんです。きっとご飯を作ろうとすると、無意識に夫のことを思い出してしまうから……多分体がパンにして殴られない環境っていうのを、本能的に求めてるんだと思います……」
「なるほど……」
「でも……ちょっとおかしいですよね……私でもなんでこうなったのかわからないです。人間のトラウマとかは、いつどうやって現れるかわからないものなんです。私なりに考えたこうなってしまった理由ですが、体が夫との過去を『忘れようとしている』からこうなったのかもしれません」
「なるほど……」
「これが……私の朝にパンしか出せない理由……その全てです。でもそもそもパンを作ることはできなくて、トーストなど既に出来上がっているものしか出せないのですが……」
「よくわかりました。俺は……何も知らずに、アリスさんを傷つけていたんですね。
たまにはご飯にしてほしいって、何も考えずに要望出して、アリスさんを苦しめていた。
本当に悪いことをしました」
これがアリスの朝はパン!固定の理由でした。




