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異説・東方花映塚  作者: 小湊拓也
3/30

第3話 咲き誇る弾幕の花

この作品は「東方Project」の二次創作です。


原作 上海アリス幻樂団


改変、独自設定その他諸々 小湊拓也

 霧雨魔理沙は、空中で急停止した。

 目的地……太陽の畑が、もう近い。

 だが魔理沙は、魔法の箒にまたがったまま、ふわりと降下していた。

 地上。見知った姿が二つ、弱々しく原野を歩いていたからだ。

 二人とも、赤系統の衣装をまとう少女だった。

 片方が、片方に肩を貸している。支え合いながら歩いている。

「おーい」

 魔理沙は着地し、声をかけた。

「やっぱり! 秋の神様。一体どうしたんだ」

「霧雨魔理沙……」

 秋穣子が、顔を上げた。

 秋姉妹。

 神降ろしの苦手な巫女・博麗霊夢でも呼び出す事の出来る、数少ない神々である。

 妹・穣子が、まるでボロ雑巾のようになった姉の静葉に肩を貸しているのだが、こちらも無傷というわけではなかった。

「二人とも……ボロボロじゃないか。弾幕戦でやられたな? あんまり無理するなよ」

 二人とも弱いんだから、とまでは魔理沙は言わなかった。

「…………助けて……」

 秋静葉が、妹にしがみつきながら、辛うじて聞き取れる声を発した。

「痩せても枯れても、神……の、つもりでいたけれど。私たちの力で、どうにかしなければならない……それは重々承知、なのだけれど……ね。どうやら霧雨魔理沙、貴女や博麗の巫女に……協力を、仰がなければ」

「まあまあ、少し休めよ」

 空を飛ぶ、どころか歩く力すら尽きかけている姉妹神を、魔理沙は近くの木陰へと導いた。

「何があったのか……は、まあ何となくわかる。アレだな?」

「……ええ。まあ、ね」

 穣子が、大木の根元に姉の身体を横たえる。

 そして、原野の彼方に視線を投げる。

 花が、咲いていた。

 様々な植物が、茎を、蔓を、幹を、絡ませ合って巨大な塊を成しつつ、花を咲かせているのだ。

 それは、植物の城郭であった。

 原野を睥睨する形にそびえ立ち、色鮮やかさを誇示している。

「……あれを……私は、枯らさなければならない……」

 静葉が呻く。

「秋に咲いては、いけない花々を……無理矢理に咲かせている者がいる。幻想郷の大地から力を奪い、それを養分として……」

 紅葉の髪飾りが、ぼろぼろと崩れ落ちた。

「あれら全てを枯らせて、大地に還さなければ…………冬も、春も、夏も、次の秋も、来なくなる……」

「今年の実りに必要な大地の力は、何とか確保したわ」

 穣子が言った。

「だけど、このままでは……来年の収穫が、どうなるか……」

「大地の力……確保した、だって……?」

 魔理沙は、睨むように穣子を観察した。

 豊穣の女神である彼女は、帽子に常に葡萄を生らせている。

 その葡萄が、萎びていた。

「お前……自分の力を、幻想郷の大地に……かなりの量、注入したんじゃないのか」

「豊穣神なんて言われてるし、そのくらいはね」

 弱々しく、穣子は笑った。

「幻想郷の農民どもに向かって、普段から偉そうにしてるわけだし……今年の収穫くらいは、確保してやらないと」

「おい、どこへ行く」

「……霧雨魔理沙、お姉様をお願い」

 植物の城郭を、穣子は見据えた。

「あれを……滅ぼさないと……」

「なあ、アレって……」

 息を呑みながら、魔理沙は呻いた。

「…………太陽の畑、だよな……?」

「もしも、風見幽香の仕業なら」

 木陰に倒れたまま、静葉が言った。

「……恐ろしい事よ。幻想郷そのものが、枯死しかねない……」

「ごめん、はっきり言うぞ。お前らで、どうにかなる相手じゃあない」

 魔理沙は無理矢理、穣子の行く手を身体で遮った。

 秋の姉妹を、まとめて背後に庇った。

「……お前らは、幻想郷に必要な神様だ。こんな所で無理をし過ぎるなよ」

「貴女なら、どうにか出来るって言うの……!?」

 穣子が呻き、魔理沙の肩越しに、植物の城郭を睨む。

 太陽の畑、全体を飲み込んで咲き乱れる、花々の巨大な塊。

 それが、キラキラと光り輝く花粉を噴出させていた。

 全て、光弾だった。

 煌めく弾幕が、嵐のように押し寄せて来る。

「くっ!」

 前方に、魔理沙は魔力を投げ広げた。

 巨大な魔法陣が空中に描かれ、魔理沙と秋姉妹を防護する。

 魔力の、防壁。

 それが、押し寄せる弾幕を防ぎ止める。

 防ぎながら、ひび割れてゆく。

「…………大馬鹿者ね、貴女も……」

 静葉が、倒れたまま苦笑する。

「私たちなんか、放っておいて……かわして、逃げていれば良かったのに……」

「ああ、その手があったな畜生!」

 魔理沙の叫びと同時に、魔法陣防壁が砕け散った。

 破片を蹴散らし、押し寄せて来た弾幕が、しかし突然、消え失せた。

 シャッター音と同時にだ。

「魔理沙さん、無事ですか?」

「射命丸……」

「お礼には及びませんよ。以前、貴女とアリスさんには、椛ともども助けていただきましたからねっ」

 天狗の少女が、写真機を構えながら、魔理沙の頭上や周囲を飛び回っている。

 そして、植物の城郭から放たれ襲い来る光弾の嵐を撮影している。

 押し寄せる弾幕が、ことごとく切り取られて消滅する。

「魔理沙さん、大スクープですよ」

 射命丸文は、声を弾ませていた。

「プリズムリバー楽団、解散の危機です!」

「……そうか、そんなところまで追い詰められたか。ついに」

「何だ、ご存じだったんですか」

「あいつらを見ていればな、何となくわかる。一番下の妹が、今にも家出しそうな感じだったしな……本当に、家出でもしたか?」

「ええ、まあ……きっと、あの人に匿ってもらってるんじゃないかと思いましてね。太陽の畑に行ってみようかと」

「悪い。それ、ちょっと後回しにしてくれないか」

 植物の城郭が、またしても花粉を噴いた。

「そこの神様二人を、安全に手当て出来る場所……出来たら、永遠亭に連れて行って欲しい。悔しいが、私よりお前の方が速いし力もあるからな」

「……魔理沙さんは?」

「風見幽香と、話をつける」

 花粉嵐のような弾幕が、押し寄せて来る。

 その真っただ中へと、魔理沙は箒を駆り、突入して行った。

 光弾と光弾の隙間を、狙ってだ。

「……もちろん、話だけじゃ済まないだろうけどなっ!」



 まるで稲穂のようである。が、食べられるわけではないだろう。

 それが、竹の花だった。

 不吉と言うよりは地味だ、と博麗霊夢は思う。

 とてつもなく地味で彩りに欠ける、竹の開花風景。

 それが今の、迷いの竹林である。

「ふうん。これが凶兆、ね」

 歩きながら、霊夢は見回した。

「こうなると悪い事が起こるって言うのね。異変なら、去年の夏頃から立て続けに起こってるけど」

「迷信さね」

 因幡てゐが言った。

 霊夢を先導し、歩いているところである。

「それなりに長生きしてる私が言うんだから、間違いはない。竹の花なんて、いくらでも見ているけど。こんなもの咲いても咲かなくても、悪い事なんて起こる時は起こるもんよ」

「起こる時ってのが続いてるわけね最近は。外の世界から吸血鬼は入って来るわ、冬が長引きまくるわ、宇宙人は攻めてくるわ」

 ぼやきながら霊夢は、ちらりと振り向いた。

「あんたたちまで来る事、ないのよ?」

「あの、一緒に行かせて下さい。霊夢さん」

 スターサファイアが、続いてルナチャイルドが言った。

「……チルノの奴、ちょっと放っておけないし」

「霊夢さん、お願い」

 サニーミルクが、愛らしい両手を握り合わせる。

「あいつをさ、一回休みにならない程度に、ぶちのめして欲しいの。大人しくなったら、あたしたちでお説教するから」

「そんなにトチ狂ってるの? あいつ……まあ、萃香に喧嘩売ってるくらいだしね」

 幻想郷に、季節外の花々が咲き乱れている。

 自然界の異状、となれば、まず影響を受けるのは妖精だ。

 氷の妖精チルノが、何やら暴走に近い状態にあるという。

「まあ、ね……チルノを締め上げて、異変の真相みたいなものに近付けるかどうかは、わかんないけど。今のところ、他に手がかりもなし」

 霊夢が、この竹林を訪れた理由は二つ。

 一つ目はチルノ。

 てゐが、この竹林で見かけたという。

「ここへ迷い込んだ以上、そう簡単に出られやしないよ。上手いこと案内人でも出くわさない限りは、ね」

「案内人っていうのは……」

「私か、妹紅ちゃんだね。まあ……鈴仙でも、道案内くらいは出来なくもないかな」

「……鈴仙隊長も、捜してあげないとね」

 二つ目の理由が、それである。

「永遠亭の先生やお姫様に、あいつの普段の行動とか行きそうな場所とか、よく聞いてみないと」

「そのくらいなら、私でもわかるよ」

 てゐは言った。

「鈴仙の普段、行く場所……この竹林以外だと、人里しかないね。薬売りが、あいつの仕事だからね」

「……人里で、誰かの家に転がり込んでいる?」

「だとしたら……寺子屋の先生んとこか、でなけりゃ稗田のお屋敷か。いや、それはないかな」

 言いつつ、てゐは立ち止まった。

 少女が一人。前方から、あたふたと飛んで来たのだ。

「助けて……誰か、助けて下さい! チルノちゃんを止めて!」

「あ、大ちゃん」

 ルナチャイルドが、その少女を正面から迎え、落ち着かせた。

「どうしたの……あ、いや何となくわかったけど」

「うん、私もわかった……」

 スターサファイアが、両目の上で片手を庇にした。

「なかなか、派手な事になってるわねえ」

「おーい、こら! チルノー!」

 サニーミルクが、大声を出している。

「いたずらに命を懸けるのは感心だけど! あんたのやってる事ってもう、いたずらじゃあないでしょーがぁああああああああっ!」

 聞こえてなどいないだろう、と霊夢は思った。

 炎が、轟音を立てて渦を巻いている。

 周囲の竹に、燃え移る様子はない。燃やすものを選別する事は、出来るようであった。

 竹林に火事を起こさぬよう、藤原妹紅は炎の大渦を巻き起こしている。

「いい加減にしろ! お前と遊んでやる暇、無いんだよ今日はっ!」

「ふはははははは! あたいはなっ、遊んでるんじゃないぞぉー!」

 チルノの笑い叫びに合わせ、吹雪が生じて荒れ狂う。

 鋭利な氷の粒子を大量に含んだ冷気の嵐が、妹紅の炎とぶつかり合い、凄まじい水蒸気の気流に変わって立ち込めた。

「あたいは、あたいはっ、戦わなきゃいけないんだ!」

 チルノが、笑いながら怒り狂っている。

 片腕を上げ、蒸し暑い霧を付け袖で防ぎながら、霊夢は思った。

 何に対し、激怒しているのか。

 昨日、伊吹萃香に挑んで粉砕されたようだが、その事か。

 違う。

 根拠もなく霊夢は、そう感じた。

「もうやめて、チルノちゃん!」

 大妖精が、叫んでいる。

「昨日、神社の鬼さんに負けて! 痛い目に遭ったばっかりじゃないの!」

「……だからだよ大ちゃん。あたいは、強くならなきゃ駄目なんだ」

 無数の氷塊が、流星の如く妹紅を襲う。

「あの鬼にも! 妹紅にだって、勝てるくらいに!」

「……そうかチルノ。お前、強くなりたいのか。修行の真っ最中なんだな」

 降り注ぐ氷の流星雨を、妺紅は炎の翼で薙ぎ払った。

 薙ぎ払われた氷塊たちの何割かが溶けきらず、いくらか小さくなりながらも妹紅を襲う。

 それらが、砕け散って水飛沫に変わった。

 妹紅の長い脚に、ことごとく蹴り砕かれていた。

「それなら是非とも協力してやりたいところだが……今日は、ちょっと駄目なんだよ。都合が悪い。行かなきゃいけない所があるんだ、勘弁してくれないか」

「そりゃ、おかしな話でございますなあ。妹紅の姐様」

 てゐが、意地悪く笑う。

「あんたね、うちの姫様の都合ってもの考えた事ありますか? そんなもん、お構いなしに永遠亭へカチ込んで来ますよねぇ毎度毎度。まあ私は一向に構いませんがね、一方的に喧嘩売られるっての、たまには経験してみたらどうです」

「そ、それは」

 チルノが叩き付けてくる氷の嵐を、妹紅は炎の翼で受け防いだ。

 大量の水蒸気に圧されるが如く、妹紅は後退する。

 相手はチルノである。妹紅が、本気で戦っているとは思えない。

 それでも、と霊夢は、違和感に近いものを覚えた。

 妹紅が、苦戦をしている。そう見えてしまう。

「……チルノの奴、あんなに強かった?」

 ルナチャイルドが、顎に片手を当てた。

「そりゃまあ、暇さえあれば弾幕戦ばっかりやってる奴だし。私らなんかよりは全然強いけど……」

「ねえ大ちゃん……何か、あったの? チルノってば」

「わかんない……」

 スターサファイアの問いに、大妖精が頭を抱える。

「……ただ、お花の咲き方が何か変なのと、関係あると思う……チルノちゃんったら、それで大はしゃぎして、鬼さんに喧嘩ふっかけて……」

「それで、萃香の奴にブチ砕かれて」

 霊夢は呟き、腕組みをした。

「再生した時に、何か……変なもの、混ざっちゃったのかもね」

「そんな……それじゃ……」

 大妖精が、青ざめた。

「チルノちゃんを……助けるには……」

「粉砕して、混ざり物を取り除く……と、やりたいところだけどっ」

 霊夢は、左腕を振るった。

 翼のような付け袖の内側から、蛇のようなものが高速で伸びる。

 博麗神社の、注連縄。

 それが、背後からチルノを絡め取っていた。

「何だーっ!?」

「バカをやるのは、もう終わりって事よ」

「むむっ、出たな霊夢! あたいと戦えー!」

 注連縄でぐるぐる巻きに拘束されたチルノが、じたばたと騒ぐ。

「霊夢を倒せば、あたいが! 幻想郷最強! みんなを守れる!」

「……そういう事ね。何か、わかった気がする」

 注連縄を、霊夢は引き寄せた。

 そうしながら右手で、光を一閃させた。

「あんたが、突っ走ってる理由……妖精連中が、何だかおかしくなってる理由」

 一閃した光が、チルノの細い首筋に突き刺さる。

 封魔の針。パスウェイジョンニードル。

 チルノは白目を剥き、動きを止めた。

 大妖精が、息を飲みながら悲鳴を上げた。

「チルノちゃん……!」

「大丈夫、眠らせただけよ。一回休みにだって、なっちゃいないわ」

 引き連れて来た三妖精に、霊夢は放り捨てるようにチルノを押し付けた。そうしながら、注連縄をほどく。

「……永遠亭って、妖精も診てくれるのよね?」

「まあね。うちのイナバたちも、しょっちゅう八意先生のお世話にはなってる。このまんま連れて行こうか」

 てゐは言った。

「と、いうわけだ。うちの姫様と殺し合うのはいいけど、お静かに頼みますよ。妹紅の姐さん」

「そうじゃない。行かなきゃいけない所があるとは言ったが、それは永遠亭じゃないんだよ。輝夜は、とりあえず今日はどうでもいい」

 竹の茂みに隠されてあった風呂敷包みを、妹紅は拾い上げ、背負った。

「……慧音の所へ、行かなきゃいけないんだ。出発しようとしたところでチルノに襲われてな。逃げ回っているうちに、こんな所へ来てしまった」

「そうですか、上白沢先生のお宅へ」

 少しの間、てゐは思案した。

「……どうですかね、あの先生。だいぶトチ狂っておられたようですが、少しは大丈夫になったんでしょうかねえ」

「寺子屋をやれる、くらいにはな」

 妹紅は、苦笑まじりに応えた。

「だけど、まだ……一人きりには、させられない。あいつのやらかした事、みんな許してはくれたけど。あいつ自身の心は、まだまだ不安定だ。私みたいな奴でも、一緒にいてやらないと」

 その目が、霊夢に向けられる。

「……助かったよ、博麗霊夢。さすがの手並み、お見事だった」

「このチルノって奴ね、貴女が思ってるほど弱くないから。もうちょっと本気で焼き殺しに行っても大丈夫」

 霊夢は言った。

「……人里の上白沢先生が、やらかしたみたいね何か。私その時ロケットの中で死にかけてたから、見てないんだけど」

 幻想郷全体が、上白沢慧音一人によって踏み潰される。

 そう思えてしまうほどの事態であったらしい、とは霊夢も聞いている。

「まあ、この間の異変はね……私も、やらかしたから」

「まったくなあ。私ら全員、お前さん一人に殺されるところだったんだぞ」

 妺紅は微笑み、歩み去り、すれ違いざまに言葉を残した。

「博麗霊夢……お前は、本当に強い。尊敬する。今後お前と戦う事態にならないよう、心から祈ってるよ」

 立ち去って行く妹紅の背中を見送りながら、てゐが呟く。

「かなりの、ご活躍だった……とは私も聞いてるよ、博麗の巫女」

「私は……」

 全宇宙に滅びをもたらす、弾幕戦の精髄。

 そんなものに玄爺は、八雲紫は、人の形を与えた。人の心を与えた。

 何故か。

(ひたすら異変解決をして……幻想郷を、守れって事?)

「ちょっと、何あれ」

 スターサファイアが、何かに気付いたようだ。

「何か、近付いて来る……」

「おいおい、勘弁願いたいね。あれも妖精じゃあないのかい。こっちに喧嘩売る気満々にしか見えないよ」

 てゐが、頭を掻いている。

「花は咲かせまくるし、誰彼構わず喧嘩は売りまくるし。お前さんたち、一体どうなっているんだい今回の異変」

「何でもかんでも妖精のせいにしないでよね」

 ルナチャイルドが文句を言う。

 サニーミルクが、近付いて来るものを観察している。

「そもそも、ね……あれ、妖精じゃなくない?」

 自分たちと同じく、迷いの竹林に外から入り込んで来たのであろうが、竹林の奥の暗闇から湧いて出現した、ようにも霊夢には見えた。

 幻想郷の暗闇が、実体化したもの。そう見えた。

 てゐを、妖精たちを、霊夢はまとめて背後に庇った。

「あれは……あの子は……」

 縛られ気絶したチルノを抱き締めたまま、大妖精が声を震わせる。

「……幻想郷に今、お花をたくさん咲かせている力と……近いところから、来た……の……?」

 確かに、妖精に見えてしまう少女であった。

 小さな身体に、赤系統の洋服が、禍々しいほど似合っている。

 人形のように愛らしい、その姿が、ふわふわと竹林の中を浮遊し、近付いて来たところであった。

「…………みんな……殺せば、いいのね?」

 人形のような少女は、言った。

「みんなの命が、欲しいのね? わかった……私に任せて、スーさん」

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