第六話 ショウセン
「コカゲ君のヒラメキは……『召閃』」
「しょう……せん……」
「ええ、写真を見てください」
俺は言われるがまま写真に目をやった。特に変わったところはない。さっきと一緒で十歳くらいの子供が二人……二人!?
「えっ……! 子供が増えてる……!?」
「ああ。召閃の人間が力を込めるとそうなる。ハイド、お前もやってみろ」
ヨミさんが写真を取り出しハイドさんに渡す。ハイドさんは無駄の少なそうな動きで力を込める。フラッシュの力を使う事に慣れてるんだろう。
「コカゲ君と違って僕はこうなるんです」
写真の男の子だけ縁取られて真っ黒になっている。感光? 普通はこんな風になるはず無い……。
「僕は『纏閃』の適性があるのでこうなります」
「てんせん……」
ヨミさんがガラガラとホワイトボードを持ってきた。そこには簡単ヒラメキ講座と書いてある。ペリカン?フラミンゴ?良く分からないクチバシのついた化け物の絵も添えられている。
「それフラッシュですよね! ヨミさんって絵うまいんですね!」
「これは雀だ。可愛いだろう?」
「コカゲ君、ヨミさんは絵心無いんです。あと人の心もあんまり……」
「ハイド。私の階級はお前より上だぞ」
「……失礼しました」
ヨミさんはホワイトボードに文字を書いていく。意外と可愛い字。
「フラッシュの使い方、ヒラメキは大別して四種類ある。『武閃』『召閃』『纏閃』、そして『理閃』だ」
なるほど。俺が召閃でハイドさんが纏閃、昨日の小早川って奴はどれなんだろう。
「まずは少年のヒラメキ、召閃から説明しよう。召閃というのはフラッシュをそのまま使うタイプの事だ。フラッシュを生き物の状態で使役する」
「えっ、他の人は違うんですか?」
「ああ。昨日の小早川はフラッシュをナイフに変えて戦っていただろう」
「そういえば……」
「あれが武閃。フラッシュを武器に変えて戦うタイプだ」
「基本的には近接戦闘に向いていますね」
「次は纏閃。これはフラッシュを体に纏って戦う。近距離も遠距離もどっちもイケる器用なタイプ」
武閃が近距離、纏閃が中距離、じゃあ俺の召閃は遠距離かな? フラッシュを前に出すから突っ込む必要がないもんな。
「じゃあ理閃は?」
「理閃はちょっと特別でな。フラッシュの形を変えるとかではないんだ」
「え……」
「理閃は理を作る。そしてそれを破ると罰が下る空間にする」
「実は白山羊本部にも理が適用されてるんですよ」
「嘘!? 怖ぁ……」
危険すぎるだろ……。最初から言っといてくれよ。もしかしたらひどい目にあってたかもしれないじゃないか……!
「で、だ。少年、白山羊に入ってくれないか?」
「ん…………」
昨日みたいな奴と戦う事になるんだろう。つまり痛い思いをするって事だ。それでも俺は……。俺は人を助けたい。この思いがどこから来るのかは分からない。けど本気でそう思ってるみたいだ。
「わかりました……。でもちゃんとジイちゃんには話をしておきたいんです。だから一度戻って……」
「それは構いませんよ。白山羊の説明は我々に任せてください。お祖父様にはしっかりと話をつけさせていただきます。もし不審がって首を縦に振らない様でしたら——」
「おいハイド、お前には人の心が無いのか。少年の巣立ちに水をさすな」
「おっと……失礼」
俺はここ白山羊で人を守る。俺の黒歴史で明日をつくる。