全校集会で行われる「第1回 生徒会プレゼンツ チキチキ 会長の彼女争奪クイズ大会」って何!?
夏休みも近づいてきた7月の全校集会。
今日もいつものように生徒会として準備に勤しんでいた。
「今回はレクリエーションがあるんだっけ?」
「はい、○×クイズ形式の催しで商品も用意しています」
「珍しいね、今までそういうのなかったから楽しみだね」
高校入学時に、生徒会長を半ば無理やり押し付けられた俺は今年高校2年となり副会長の斎藤美和と来週行われる全校集会について話していた。
齋藤美和はメガネが似合う知的美人でポニーテールがとても似合っている。
ちなみに脅威の胸囲も持ち合わせている。
「夏休みも近いですし、浮足立っている人も多いでしょうからそういう人に向けての催しになります」
「クイズが喜ばれるのかな?確かに商品は豪華だけどね。みんなが喜んでもらえるように協力するよ」
「はい、ありがとうございます。生徒会長の協力が無いと今回の催しは成立しないので助かります」
クイズを行うと聞いた際に問題提供として身内ネタを盛り込みたいという相談を受けたので、それで盛り上がるのであればと思い承諾したのだ。
どんな内容が使われるのかを聞いたところ当日のお楽しみですと言って教えてもらえなかった。
◇◇◇◇◇
全校集会当日、体育館ではなく広めのホールに集まって行われる。
というのも俺が通っている学校は小中高一貫となっているため人数が普通の学校より人数が多いためだ。
生徒会は小中高それぞれに存在しており、準備は生徒会で行うが、人数的にはギリギリでたまにボランティアを募って手伝ってもらったりもする。
「問題なく進行できてるね。ちょっとみんながソワソワしている気もするけど」
「はい、ここまでつつがなく進行できています」
「会長の指示が的確ですからね!」
「お兄ちゃんなら当然ですねー」
進行が問題ないと眼鏡に手をかけて報告する齋藤。
続けて俺をほめるのは中学校の生徒会長の綾辻由紀で淡い栗色の緩くかかったウェーブ髪が特徴の美少女で、スタイルも良く読者モデルなどもこなしているらしい。
お兄ちゃんと俺を呼ぶのは小学校の生徒会長の梁瀬麻衣で義妹だ。
セミロングの黒髪でクリっとした瞳は見たものを全て魅了するだろう(俺主観)。
世界一の妹だと断言できる、文句は受け付けん!
少しシスコン気味になっているのは仕方がないだろう。
だって可愛いんだから。
「そろそろ本番ですね」
「気合い入れますか!」
「みんなー頑張るよー」
『はい!(生徒会一同)』
クイズ大会が本番ってすごい気合の入れようだな。
まぁ、俺も楽しみにしていたから人のこと言えないけどね。
それにしても生徒会が一丸となって頑張るのって青春って感じでいいよね。
でも俺何も手伝って無くない?まぁ、一緒に参加ってのも青春だよね。
「会長、すみませんが壇上の真ん中に立って問題を読んでもらってもいいですか?」
「え?俺が読むの?参加できるの楽しみにしてたんだけど、、、」
「そこは、すみません。でも、会長にしか頼めないんですちゃんとお詫びは用意しますので」
「いや、別にお詫びとかいいよ。準備任せちゃったしね。ここは人肌脱ぎますよ!」
『ありがとうございます!(生徒会一同)』
「お、おぅ、、、」
お礼の言葉に勢いがあって少し驚いてしまった。
程なくしてホールの準備が整った。
準備といっても壇上に○×のフリップを用意して、長いロープを真ん中に引いて区切りをつけるといった簡易的な物だ。
「では、会長お願いします」
「おう!」
齋藤に進行台本を渡され、壇上の真ん中へと向かう。
「はーい、では今からレクリエーションを行います!」
『えー(会場一同)』
まぁ、学内行事なんてあんまり乗り気じゃないよね。
それは俺も分かる。
「そんなこと言っていいのかなー?今回は何と特別に生徒会で豪華賞品を用意しているんですよ?」
『おぉ?(会場一同)』
「豪華商品とは、東京ディステニーランドのペアチケットだー!」
『うぉぉー!(会場一同)』
「やる気が出てきたかー!!」
『うぉぉぉー!!(会場一同)』
「豪華賞品を自分の物にしたいかー!」
『うぉおおぉぉー!!(会場一同)』
「いい感じで盛り上がってきましたね。それじゃあ、内容を説明します。今回行うのは○×クイズです。俺が問題を出題するので、正解と思ったほうに移動してください。間違った場合は後ろに移動して待機。生徒会が見張っています。もしズルが発覚した場合はトイレ掃除を1週間の罰があります!以上です!!」
会場のあちこちで「やるぞー」「チケットをゲットして換金だ」「彼女とデートだ!」といった声が聞こえる。
デートって言った奴は覚えた、後でトイレ掃除1週間の奉仕活動をプレゼントしよう。
俺は手にした台本に目を落とし記載されている問題を読み上げ始める。
「それでは、第1問! 通っているこの学び舎清積学校は小中高一貫学校である〇か☓か」
………
「第5問! 清積高校の現生徒会長は梁瀬尚人である。〇か☓か」
次々に問題を出していく。
まだ始まって数問なこともあり、だいぶ簡単だ。
間違っている人は興味がなくわざと間違った人ぐらいだろう。
そして次の問題を出そうと台本のページをめくったところで思考が止まった。
「え?」
驚きのあまり言葉をこぼして袖に控えている生徒会一同を見つめる。
それが合図だったのか齋藤はてきぱきと指示を出し始めた。
「照明調整!」
「はい!」
「垂れ幕を下ろして!」
「はい!」
「スポットライト!」
「はい!」
「みんないくよ!」
『はい!(生徒会一同)』
俺の真上から垂れ幕が下りてきた。
そして、垂れ幕と俺にスポットライトが当照られ、壇上に生徒会一同が出てきて書かれている内容を高らかに宣言した。
『第1回 生徒会プレゼンツ チキチキ 会長の彼女争奪クイズ大会!(生徒会一同)』
「さぁ、ここからが本番です。皆さんお待ちかね楽しい楽しいイベントのお時間です」
「えぇ、、」
とんでも発言と共に意味の分からないとんでもイベントが始まってしまった。
その開始の宣言にホールにいた女子生徒と女子教員から黄色い声援があがる。
男子生徒と男性教員は唖然としている、俺も含めて完全に置いてけぼり状態である。
「ここからは会長の彼女の座をかけてクイズにチャレンジしてもらいます。事前に全女子生徒並びに女子教員にはファンクラブからお知らせがあったと思うのでご存じかと思いますが、生徒会一同は主催側なので既に彼女という扱いになりますのであしからず」
『はーい!!(女子生徒と女子教員一同)』
「え?」
「それでは、会長問題のほうをお願いします。」
「え?」
「問題です。そのページの上のやつからお願いします」
「拒否権は?」
「あると思います?」
無いと思う。
そういう空気じゃないというのをひしひしと感じているから。
でも、正直何が起きているのか分からない。
ファンクラブとか謎の組織もあるように聞こえたけど、俺はイケメンでもないし、運動も普通レベル、勉強も上の中ぐらいだ。
少しは周りに気配りをしてはいるけどそれは生徒会長としての行動だ。
何が言いたいかというと、いや言いたくはまったくないんだけど過去一度もモテた試しがない。
よく女子からはからかわれることがあるが、モテた試しがない!(大事なことなので二度目)
よって考えられるこの状況の答えは【ドッキリ】これしかない。
どこかのタイミングでドッキリ大成功看板をもってネタばらしをしてくるんだろう。
これはしばらく付き合ってあげるべきかそれとも今すぐに突っ込みを入れるべきか。
会場を見渡すと女性陣から早くしろと言わんばかりの熱い視線を感じる。
「え、えーっと、じゃあ読むだけなら」
「はい、会長ありがとうございます。それでは、」
『争奪クイズ開始!(生徒会一同)』
「・・・」
無駄に息が合ってるな。
ここは無心で問題を読むしかない、台本に目を落として読み上げる。
「争奪クイズ第1問:清積高校の現生徒会長である梁瀬尚人の生年月日は5月1日だが。血液型はBである。〇か×か」
俺の個人情報はどうやら共有情報らしい。
女性陣は迷うことなく〇へ移動している。
男性陣は唖然としたまま後ろに移動している。
「争奪クイズ第2問:清積高校の現生徒会長である梁瀬尚人の趣味はゲームだが。最近購入し楽しんでいるゲームはハンティングモンスターである。〇か×か」
まぁ、流行ってるしね知られててもおかしくない情報だね。
みんな迷うことなく〇へ移動している。
………
「争奪クイズ第10問:ファンクラブの会報記念すべき第1回にて記載された【今日の会長】の内容は昼食の食堂で食べていたメニューについてである。〇か×か」
会報ってそんなことまで書かれてるの?本人は何を選んだかなんて覚えてないんだけど、、、
うん、みんなの動きには迷いがないね。
「争奪クイズ第11問:ファンクラブの会報第194回にて開示された。会長のおねしょをしていた学年は小学2年生である。〇か×か」
え?恥ずかしいんだけど、これみんな知ってるの?どんな羞恥プレイですか。
これ確実に身内からのリークだよね。犯人は母さんか麻衣のどちらかだよね。
………
「争奪クイズ第20問:ファンクラブの会報第254回にて開示された。所持している性的思考本で多いジャンルはスク水とブルマである。〇か×か」
これなんで俺が読んでるんだろう。なんで自分の性癖を大衆の前で暴露してるんだろう、、、
そうですよ!俺はスク水とブルマ好きな変態野郎ですよ!!
………
「争奪クイズ第30問:清積高校の現生徒会長の梁瀬尚人の黒歴史の1つである中二的な事項を記載した書物の名前は【黒義会の書】である。〇か×か」
やめてぇえぇぇぇぇ!忘れたい過去なの!!
「争奪クイズ第31問:ファンクラブの会報第85回にて開示された。【黒義会の書】に対をなす存在と記載された書物の名前は【白実の書】である。〇か×か」
うぎゃぁぁぁぁぁぁ!
存在が周知されてる時点でもしかしてと思ったけど内容まで周知されているとかどういうことなんだぁぁぁあ!!
………
「争奪クイズ最終問題:ここまで残った者全てを彼女と認め会長を共有財産とすることに同意する場合は〇へ同意しない場合は×へ」
読み切った、、、もう俺のライフは0だ、、、もう何もしたくないし聞きたくない、、、、、、
会場を見ると〇側にすべての女性陣が陣取っている。俺の個人情報は漏れなく全て把握されていたようだ。
男性一同は後ろでまだ唖然としている状況だ。
これどうやって収めるの、そう思って齋藤に目をやると頷き話し始めた。
「以上、今残っている女子生徒と女子教員は会長の彼女となります。おめでとうございます」
『ありがとうございます!(女子生徒と女子教員一同)』
「詳細につきましてはファンクラブの会報を通じて連絡させていただきますので少々お待ちください。また、東京ディステニーランドのペアチケットもファンクラブを通じて抽選とします。」
『はーい!!(女子生徒と女子教員一同)』
「では、会長締めの一言をお願いします」
「えっと、ドッキリ大成功!的な看板はどこにありますか?」
「ありません。事実として受け止めてください」
「まじか、、、」