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眠れない夜

寝取られ冒険者の憂鬱

作者: 青空のら
掲載日:2020/08/01

暇つぶしにサクッと読んでいただければ幸いです

「おい! 冒険者辞めるって本当なのか!」


 酒場の扉を勢いよく開いて飛び込んで来た銀髪の男が俺の肩を掴んで揺さ振る。

 コイツはルーカス、メンバーが足りない時にちょくちょくパーティーに加えてもらって一緒に活動したことがある。


「ああ、そろそろ潮時かなって思ったんだ」


「馬鹿を言うな、これからだろ? 今やS級冒険者のカール、憤怒のカールと言えば知らない奴はいないだろ!」


「そうか? だが、俺は所帯を持ちたいんだ。好きな女とこじんまりと暮らして行きたい」


「冒険者の言う台詞じゃないな? 何かあったのか?」


「また、振られてたよ。もう数えきれない。

 俺が頼りないから振られるのか?」


「馬鹿を言うな。魔獣相手に一歩も引かずに戦うお前の姿を見て頼りないなんて言う奴は居ないぞ! 俺だって何度お前に助けられた事か」


「だが、こんな仕事している限り、好きな女を世間の誘惑から守り切れない。側に居たいんだよ。何日も家を留守にする冒険者じゃ、駄目なんだ」


「振られたばかりだろ? 次の相手は居るのかよ?」


「これから探すよ。付き合い出したらどんどん派手になって、金遣いも荒くなって、新しい男を作って俺を捨てるような、そんな女じゃない女を」


 ビールを一気に飲み干す。

 やってられないよ。


「俺の彼女だから金回り良いはずって、一部の奴らから狙われるらしいんだ」


 女を財布と思ってる奴らも酷いが、ちょっと格好良ければ粉かけて来た男について行く女も女だ。


「まあ、一番悪いのは信用してホイホイと金を出してた俺なんだろうけどな」


「馬鹿な事を言うなよ、騙された奴より、騙した奴の方が悪いに決まってるだろ?」


「本当にそう思ってるのか?」


「ああ、勿論さ。女なんて腐るほど居るんだ、冒険者引退なんて言わずに次の女にいけばいいさ」


「女に振られて、怒りと悲しみに駆られて、罪もない魔獣を狩りまくる生活にも飽きたよ。しかも、それで付いたの二つ名が『憤怒』のカール、もう笑うしかないな」


「お前が落ち込むのも仕方ない事だ。しかし、もう直ぐ指名依頼が発令されるらしいからお前も必然的に参加させられるぞ。聞いた話だとスタンピードが発生してる可能性が高いらしい」


 スタンピード、魔獣の異常発生。そして溢れ出した魔獣達は津波のように近隣の村や町、都市に押し寄せてはそれを呑み込んで行く。

 スタンピードの通過した後には動くものは残らない。


「既に組合には脱退届けを出しているんだ。流石に受付担当からは元彼女を外してくれるだろうけど、彼女に手を出したイケメン支部長とは顔も合わせたくない」


 あのクソ野郎、何がいずれ寿退職で居なくなる事を想像したら寂しくなって、つい手を出してしまっただ。


「ヘンリー支部長って既婚者だろ? 部下である受付嬢のエミリーに手を出したって? 以前から二人はそういう関係だったのか?」


「いや、エミリー曰く、俺と付き合い出した後だとさ。以前にアピールした時は振り向いて貰えなくて諦めてたけれど、俺と付き合い出したら今度は逆に支部長から積極的にアピールされて、俺には悪いと思っていたけど気が付いたら男と女の関係になってたとさ。だから、俺には感謝してるって言われたよ」


 奴ら、俺たちの結婚資金にって一緒に貯めてた金を全て使い切やがった。

 1000万ゴールドは有った筈だぞ! 半年で使い切るか?


「いつもパリッとしてる姿の支部長と一介の冒険者の俺とじゃあ比較にもならないんだとさ」


 命を掛けて稼いでいる冒険者の金を掠め取って二人でお楽しみか──


「なら、活動拠点を変えるだけでいいだろ?流石に既婚者のヘンリー支部長の事は本部に報告すれば何らかの処分は受けるだろうし」


「支部長はまだ支部長だろ?」


「何を言ってる。支部長はヘンリーのまま……」


「そう、本部の判断はそういう事。たかだか受付嬢や一介の冒険者の恋愛事情なんて考慮しない、些末な事」


「そうか、意思は固いんだな……」


「世話になったな。落ち着いたら連絡するよ、今度遊びに来てくれ!」


 どこに行くかはまだ決めてないが──


「ああ、しっかり者の嫁さんを見つけて尻に敷かれてろよ」


「ああ、マリアにもよろしく言っといてくれ」


 ルーカスが差し出した手を握り返すとそのまま酒場を出た。

 マリアの名が出た途端にルーカスの顔色が変わったが知ったことか。



 -------



 カールは小高い丘の上から月明かりに照らされる街を見つめていた。炎の影が妖しく揺らめいて幻想的だった。

 マリア、それはカールが初めてパーティを組んだ時のメンバーだった。

 駆け出しの冒険者として試行錯誤をしている最中で有り、苦労を共にしている内にお互いに恋心も芽生え、二人は恋人になった。

 しかし、別れは突然であり一方的であった。


「ルーカスと付き合うだって、いったいどうして?」


「貴方の優しさは意気地なしの言い訳なのよ。二人でいても手を出さない。ルーカスはあなたと違って男らしいの! 確かに最初は無理やりだったけど、私を女にしてくれたの。そして女の喜びも教えてくれたわ」


「いつからなんだ?」


「3回目に一緒に冒険した時かしら?

 恋人になって一年以上手を出して来ないあなたは本当に男なのかしら? ルーカスは昼も夜も女性として扱ってくれるわ」


 嘲るようにいうマリアの瞳をカールは今も忘れる事が出来ないでいた。

 冒険者パーティー内では婚姻関係のある者を除き、男女の区別なく扱う。

 これは基本的なルールであり、正しい事を今のカールは知っていた。

 だが当時、1年先に冒険者となったルーカスをカールもマリアも信頼しており、一緒のパーティになる度にくれるルーカスのアドバイスを素直に受け入れていた。

 そして。冒険者であっても女性らしく扱うべきだ、との意見で夜警は女性抜きでする事となった。

 だが、四六時中行動を共にする冒険者パーティー内で、殊更に性を、異性を意識させるのは興奮状態に陥りやすい冒険者という職業柄まずかった。興奮状態のまま欲情した男どもがその性のはけ口としてパーティー内の女性を見だすのだ。

 そしてルーカスは普段カールとマリアが一緒に夜警をする事を逆手に取り二人を引き離し、その隙をついたのであった。


「やられた方は忘れない。やった方は覚えていない……なら、俺はこの景色を忘れる事が出来るのだろうか?」


 動くもののいない街、スタンピードが通り過ぎた跡。

 月明かりの中、炎が街を溶かしていく。

 ゆらゆらとゆらゆらと。

 防衛に駆り出された冒険者も住民も皆、逃げ遅れたものは全て蹂躙され尽くしていた。


 怒りに任せて力を振るっていたらS級冒険者と呼ばれる様になっていた。

 責任者なのに一番に逃げ出そうとした冒険者ギルドの支部長は一刀のもとに切り捨てた。

 受付嬢は若い冒険者と手を取り合って遁走していたので見逃した。

 冒険者であっても女性らしく扱うべきだと言ってた男は、魔獣に囲まれた瞬間に女を盾にした。

 そして盾とされた女は驚愕の顔をしたまま魔獣に喰われて死んだ。

 次の瞬間に投げナイフで男の命を奪った。



 円形に魔獣の死骸が積み上がった中心でカールが呟いた。

続きません


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― 新着の感想 ―
名前の間違いでルーカス=マーカスと読替であっているのであれば、物語としては救いもないけど、復讐含め主人公の判断が間違っていなかったということなんだろうね。 女の選び方が悪かっただけで。
[一言] やったぜ!!!
[気になる点] 加害者万歳小説は胸糞悪いだけ [一言] 読者に嫌われる話書いて満足したの?
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