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時かける少女 BETA  作者: 大橋むつお
34/60

34・コスモス坂・7

時かける少女BETA・34

《コスモス坂・7》



『カツオとワカメの兄妹日誌』


 ワカメからカツオへ


 共産主義は間違っている。一党独裁は必ず党内の権力闘争と政治の腐敗を招きます。

 

 党が一つだと、その中でしか競争ができないからです。その競争も党の外からは見えないので、日本では想像できないぐらい汚く熾烈なものになり、競争に負けた者は、あらゆる罪名で強制収容所に送られたり、処刑されたりします。政治や政策論争は公開され、民衆の支持を得なければ、独りよがりな独善でしかありません。ソ連でも、創設期から、たくさん粛清されています。教育や生産も党の指導で行われ、現場の声は反映されません。当然潜在的な恐怖や不満は国中に満ち、そのはけ口は対外膨張に向けられます。戦後の共産主義国の増大は、そういう空気の中で行われたもので、けして世界の民衆が望んで行われたことではありません。


 日本は、そういう共産主義の国々に囲まれています。だから、それらの国からの間接侵略・直接侵略から国を守らなければなりません。とても日本一国でできるものではありません。日本はまだまだ戦後復興の途上にあります。莫大な軍事費にまわすお金がありませんし、回すべきでもありません。

 アメリカがパラダイスで、いつも正義だとは思いません。でも、共産主義の国と手を結ぶよりは100倍はましだと思います。だからこその日米安保条約なんです。どうか理解して、安保反対闘争などに首を突っ込まないでください。


 カツオくんは絵の才能があります。進路もM美大とかおっしゃっていましたね。その道で努力してください。カツオくんの勉強なら絵のモデルにもなります(ヌードモデルは御免こうむりますけど)勉強できるように力にもなります。春には受験ですね。専一にがんばってください。


 カツオからワカメへ


 ワカメのお父さんは外交官だから、お父さんの影響が強いと思うよ。安保条約はアメリカの戦争に日本が巻き込まれるだけだ。朝鮮戦争に直接日本は巻き込まれずに済んだ。でも、日本の基地からたくさんアメリカ軍が戦場に出撃した。そのお蔭で日本は経済復興したけど、ボクは釈然としない。人の不幸で復興しても素直には喜べない。アメリカは、これからも対外戦争を続けるだろう。次はインドシナかフィリピンか、キューバあたり。

 ボクは、ソ連も含めて完全な国など存在しないと思っている。だからこそ、日本が平和憲法を守って美しく平和に向かい合っていけば、いつかは日本の平和主義が世界のスタンダードになると確信している。今年の春には国会で批准されてしまう。日本を真の平和国家にするためにも絶対阻止しなければいけない。微力でも、この時代を生きる若者としては見過ごしてはいけないと思う。


 ボクの絵の勉強を応援してくれることは、とても嬉しい。ボク自身は絵で身を立てていこうと思う。ボクは人物デッサンが苦手だ。モデルになってくれることは、とても助かる。これからもよろしく。



 二人の論争は交換日誌の中だけだった。二人で会っている時間は、そういう揮発性の高い話はしないような不文律ができていた。そして、春には白根はめでたくM美大に合格し、芳子は七倉高校の三年生になっていた。


「やだ、お兄ちゃん、なに、その恰好!?」


 半年ぶりに帰ってきた勲を見て久美子が、素っ頓狂な声を上げた。

「似合うだろう。青春の一ページをめくったんだ」

 そういうと、勲は上着を脱ぎ捨て、ネクタイも外して居間で大の字になった。


 のちの時代でリクルートカットと言う頭になって、完璧なサラリーマンの姿になっている兄を見て、芳子も茫然とした。

 



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