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時かける少女 BETA  作者: 大橋むつお
24/60

24・大和と信濃と・9

時かける少女BETA・24

《大和と信濃と・9》         



 昭和20年3月9日。6機の黒い紫電改は横須賀に向けて飛び立った。


 9日の深夜から未明にかけて行われる東京への大空襲に備えるためである。


 細井中佐に擬態したミナには忸怩じくじたるものがあった。この戦争を五分五分で終わらせ、新しい日米関係を構築。同時にアジア諸国を独立に導き、ソ連を中心とした共産主義勢力を駆逐すること。


 以前に飛んだ世界はロシア革命前夜で、皇女アナスタシアを救出することで、世界平和を実現できた。でもこの世界では、ロシア革命はおろか、第二次大戦の真っ最中である。それも日本の敗北間近の19年の11月。


 就役から一週間で沈むはずだった信濃を助けることから始めた。多少の有力な武器は持たせてもらったが、決定的なものではない。しかし、やりようによっては日本の大勝利にすることも可能だった。でも、それをやってはいけない。要求されているのは五分の勝利であった。


 細井中佐の紫電改は、太陽エネルギーで動いているし攻撃もしている。


 日中は無限と言っていい力が発揮できるが、夜間は日中充電した力で動いている。おのずと行動に限界がある。

 レーダーで、テニアンからB29が300機あまり飛び立っているのは分かっていたので、相模湾の上空で、6機の紫電改は、他の陸海軍航空部隊120機あまりといっしょに待ち構えていた。


「敵機前方20海里一時の方向、高度6000。今です!」

 紫電改の編隊長田能村中尉が、編隊長に意見具申すると同時に6機の紫電改に急上昇を命じた。

「100機墜とせたらいいとこだな……」

 

 味方の編隊が上がってくるまでに30機あまりを墜とした。味方の編隊は普通のゼロ戦や紫電改、鐘馗などであった。彼らも善戦し、東京上空にたどり着けたB29は半分の140機あまりであった。

 しかし、おりからの強風にあおられ、深川区(今の江東区)から東にかけて、かなりの被害が出た。迎撃隊は給弾と給油のためいったんそれぞれの基地に降り立ち、補給を終えると再び飛び立った。信濃の6機の紫電改も、普通に弾と燃料を補給して飛び立ち、低空で帰路についていたB29を80機あまり撃墜。途中脱落する機体もあり、無事テニアンに戻れたのは50機に満たなかった。


 翌朝、信濃の紫電改は落穂ひろいに出撃した。


 相模湾を中心に撃墜されたB29の乗員たちが、2000人余り漂って救助の潜水艦が現れるのを待っていた。信濃の紫電改は潜水艦が浮上したところを見つけては攻撃し、結局救助の潜水艦10隻全てを撃沈、捕虜の数をさらに1000名近く増やした。


 海軍は、駆逐艦や特設警備艇(徴発した漁船)を多数派遣し、その7割を捕虜にした。


「また捕まったのか!」


 細井中佐は嬉しそうに言った。ウェンライト中佐が新しい潜水艦の艦長になって、また捕虜になったのである。


「オレは、今度の空襲には反対したんだ」

「やっと、俺のいうことが分かってくれたか!?」

「半分はな。今の日本に手を出したら大やけどをする。戻ってきたB29でまともに飛べるのは10機ほどしかなかった。そっちの収穫は?」

「捕虜が2400人ほどだ。また油と交換だ。ま、それまで間がある。また、ゆっくり話しようじゃないか」


 ウェンライト中佐は、嬉いのやら情けないのやらで複雑な表情になった……。 



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