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時かける少女 BETA  作者: 大橋むつお
22/60

22・大和と信濃と・7

時かける少女BETA・22

《大和と信濃と・7》          



「田能村中尉以下6名、横鎮分遣隊ただいま到着いたしました」


 艤装中の信濃に6機の黒い紫電改が着艦し、阿部艦長と細井中佐に着任報告をした。


 この6人は、細井といっしょに陸攻でやってきた者たちだが、その後横須賀に戻り、紫電改を受領していたのである。ちなみに、この6人は細井に擬態したミナが連れてきたアンドロイドたちでああった。今回の任務は微妙な難しさがあるので、サポーターが必要なのである。

「錨泊中の空母に着艦するのにも驚いたが、なんで、この紫電改は黒いのかね?」

「近くに寄って見てください」

 細井に促され、阿部艦長は紫電改の傍に寄ってみた。

「……これは、どうしたことだ。傍によると生成りのジュラルミンのままだ!?」

「こいつは、太陽光を吸収してエンジンや機関砲の動力に使っております。太陽光エネルギーの吸収率は90%になります。つまり光をほとんど反射しませんので、よほど近くに寄らなければ、黒にしか見えません」

 そう言うと、細井中佐は拳銃を取り出し、紫電改の機体を撃った。

「何をするんだ!」

「ようく撃ったところをごらんください」

 拳銃の弾は機体の一メートル手前で静止していた……と思うと、ノッソリと5センチほど戻されポロリと落ちてしまった。

「光エネルギーを利用した軟性シールドです。大和の三式弾の直撃でも、こいつは墜ちません。爆発の衝撃も吸収されて自分の動力に変換してしまいます」


――電探に感あり。南東から、敵機140機あまり接近しつつあり!――


 ブリッジの防空見張り員がマイクで叫んだ。

「松山の143空が撃ち漏らしたやつだな。中佐、空中退避させんでもいいのか?」

「ちょうどいい、実用試験をやりましょう。田能村、さっそくだが、かかってくれ」

「承知しました」


 6機は陸攻とともに飛び立った。信じられないほどの滑走距離の短さだった。


 電探は、細井中佐の中継機と連動しているので、硫黄島から発進した時点で分かっていた。源田実が隊長を務める343航空隊がまず迎撃したが、紫電改の配備が間に合わず、12機の撃墜に終わっていた。


 横鎮隊の6機は土佐湾の上空で会敵した。


「なんだ、たったの6機か、日本も追い詰められたもんだ」

 編隊長は、6機の紫電改を見くびっていた。


 黒い紫電改の活躍はめざましかった。光エネルギーを攻撃力に変換、見かけは20ミリの発砲と変わりなかったが、実態は光エネルギーなので、弾道は直進する。いわゆる小便弾になることがなく、照準器の中に入ったものに発射ボタンを押せば必中である。呉の上空に達した敵機は48機まで減っていた。敵の司令機はとっくに撤退を指示していたが、6機の紫電改に追いまくられて、前方に出ざるを得なかった。


「くそ、あいつら、どれだけ弾を搭載してるんだ!」


 編隊長は歯ぎしりした。光エネルギーの弾なので、太陽エネルギーがある限り撃ちつづけることができる。敵機は、ようやく20機が逃れ、120機が撃墜され、爆撃機と戦闘機合わせて500人以上が捕虜になった。

 米軍は機数を増やし、戦闘機の割合も増やし、その後二度の攻撃をしかけてきたが、その大半を撃ち落された。


「どうする中佐。もう捕虜の数が2000を超えてしまったぞ。広島の収容所は、どこも一杯だ」


 捕虜たちには携帯電話を渡してある。呉の軍事施設の充実ぶりや、大和や信濃の艤装の進捗も逐次報告されている。米軍としては放置できない状況である。しかし、攻撃に行けば8割は墜とされてしまう。ジレンマであった。

 捕虜たちも、家族と直に電話が出来るので里心はつのる一方で、国に残された家族たちも政府に「日本に早期解放を求める」ように圧力をかけ始めた。


 二月の終わりに、アメリカは捕虜の交換を提案してきた。細井中佐の思惑通りになってきた……。



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